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この季節にもってこい、身も心も温まる北欧の蒸留酒「シュナップス」 いま人気再燃

マイケル・ブースの世界を食べる
北村玲奈撮影

日本には焼酎という、私も大好きな蒸留酒がある。今日はしかし、もう一つの選択肢をご提供したい。グラス一杯のシュナップス。クリアで切れ味鋭く、人知れず酔っぱらえてカロリーも低め、冷凍庫(冷蔵庫にあらず)から出したて冷え冷えで飲まれるお酒である。スカンディナビア地方のシュナップスは、熱いエンジンオイルのごとき粘度、のどの奥にむち打つような刺激で、冬場、暖をとるのに最高だ。焼酎にとってはバイキングのいとこ、といったところか。クリスマスの季節、グリューワインより強めのものを求めている人にはもってこいだ。

シュナップスは厳密に言えば、スカンディナビア地方で昔から昼食どきにひっかける一杯のことだった。たいていジャガイモ由来の蒸留酒(アルコール度数32%以上、50%を超えるものも)で、スパイスやハーブで風味づけされている。

焼酎のように、シュナップスも新しい作り手が一風変わった調合を生み出し、ここ何年かで人気が再燃している。ヘザーやシーバックソーン、桑の実のほか、コペンハーゲン蒸留所ではインドネシア産「ナガコショウ」のシュナップスなるものさえ製造している。そこに未知なる味探求型のバーテンダー「ミクソロジスト」たちも一緒になって、エルダーフラワーやライム、ジンジャービアと合わせて(モスコミュールならぬ?)ノルディックミュールなんて呼ぶこともある。クリスマスに向けて、シトラス、スターアニス、シナモンといったこの季節伝統のフレーバーを浸出させた特別なシュナップスを開発している蒸留所も多い。

■和食にもよく合う

コクやうまみを引き立てるシュナップスは、和食にもよく合うものが多いと感じる。豚肉や牛肉とは申し分ないし、ランチに飲んでも軽いから食後眠ってしまわずにすむ……もちろん量次第ではあるが。スカンディナビアではシェリーグラスより小さい、「(裁縫の)指ぬき(シンブル)」ほどのごく小さなグラスで飲んでいる。それより大きいと完全に命取りだ。

シュナップスは、「アクアビット」と混同してはいけないものの、スカンディナビア地域の人にとってさえこの紛らわしさは根強い。アクアビットというのは単にシュナップスの一種で、ディルやキャラウェイといったハーブが風味のベースになっている。デンマークとノルウェーでは最も一般的なシュナップスだ。

シュナップスでつくるカクテルの先駆け的存在なのが、コペンハーゲンのヴェスターブロという街にある、19世紀の調剤薬局を改装した3階建ての壮麗なバー「リドコーブ」だ。「グリーン&ホワイト」という一杯は、ディルのアクアビットとクレーム・ド・カカオ(チョコレートベースのリキュール)、ホワイトチョコレートのクリームを合わせたりしている。

ここで、スウェーデンのシュナップス文化を思い出しておきたい。ご存じのとおり、スウェーデン人とアルコールの関係はやや複雑だ。デンマークでは買いたいときに買える一方、スウェーデンとノルウェーは国のアルコール専売によって買おうにも制約がある。そんなスウェーデンの人たちの光る一面こそが、シュナップスの作法なのだ。注ぎ方にグラスの掲げ方、そのときのアイコンタクトから酒宴の歌「シュナップスヴィーサ」(8月のザリガニパーティーで歌われる)まで、これらは皆スウェーデン文化の本質的な一要素。エレベーター内の沈黙やほぼ知らない誰かとのハグがそうであるように。

最後に一つ注意点。スカンディナビア地域の人は、自宅でおのおの独自のシュナップスをつくっていると言い張るだろう。中性スピリッツに葉や草やハーブ、ナッツさえも調合したりして。はたしてでき上がった飲み物は、たいてい飲めるか飲めないかの瀬戸際だ。スカンディナビア人が自分で蒸留したと味見をすすめてきたなら、恐れながら、ゆっくりと後ずさりしよう。(訳・菴原みなと)