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2021年は温暖化対策の正念場 皮切りの「気候変動サミット」ポイントまとめ

World Now
米連邦議会議事堂前で気候変動に対するストライキに参加する若者たち=2019年3月、ワシントン、ランハム裕子撮影

バイデン米大統領は1月の就任初日に、トランプ前政権が離脱した地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」に復帰することを決めた。気候変動対策に熱心に取り組む姿勢を打ち出し、4月に首脳会議(サミット)を開く方針を示していた。

米ホワイトハウスは3月26日、気候変動サミットに招待する40カ国・地域の首脳のリストを公開。世界最大の温室効果ガス排出国、中国の習近平国家主席をはじめ、ロシアのプーチン大統領、日本の菅義偉首相らが名を連ねている。サミットの主なテーマとして、主要国が排出量の削減努力をするための刺激策、気候変動対策による雇用の創出、排出量削減のための変革的な技術開発の促進、気候変動がもたらす世界的な安全保障上の課題、などを挙げている。

「気候変動サミットは、バイデン政権にとって米国内と国外の両方に対するアピールの場となる」。国立環境研究所社会システム領域長の亀山康子さん(53)はそう指摘する。

バイデン氏は米大統領選に向けた民主党の候補者選びで、「候補者指名を争ったサンダース氏らの方が気候変動対策に熱心」と党内で見られていることもあり、「真剣に取り組む姿勢を示す必要がある」という。一方で、トランプ前大統領に代表されるように共和党支持者には「経済にマイナスになる」などと反対する人たちも少なくない。そのため、コロナ禍からの景気回復と温暖化対策を両立させるグリーンリカバリー(緑の復興)を掲げ、「気候変動対策は、雇用創出など景気対策になる」と納得させる必要がある。

1月27日、気候変動対策について演説するバイデン米大統領=ロイター

また、国際社会に対しては、「パリ協定」に復帰してトランプ前大統領からの「転換」を鮮明にし、気候変動をめぐる国際交渉を主導する姿勢を示すねらいがある。さらに「中国やロシアを説得し、気候変動対策を促した」ということができれば、国外だけでなく米国内にもアピールできるというわけだ。

実際、バイデン政権は気候変動サミットまでに、2030年の排出削減目標を公表する方針で、今回のサミットを気候変動対策の目標達成に向けた自国の貢献を説明する機会とするよう、参加する各首脳に求めている。米メディアでは、2030年の削減目標について「05年比50%削減」を検討していると報じられており、主要排出国に対しても削減目標の上積みを迫るとみられている。

欧州連合(EU)と英国は昨年、30年の目標について、それぞれ1990年比で55%削減、68%削減に引き上げている。菅首相が昨年10月に「2050年までに実質ゼロ」を宣言した日本も、13年度比で40~45%程度の削減とする方向だ。日本の現在の目標は26%削減で、今年11月に英国である国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に向けて引き上げる考えだったが、気候変動サミットで打ち出すよう前倒しした。

木づちを打って「パリ協定」の採択を宣言するCOP21議長のファビウス仏外相(右から2人目)=2015年12月、パリ、下司佳代子撮影

2015年12月のCOP21で採択されたパリ協定は、温室効果ガス削減目標などの対策を各国が5年ごとに点検・見直しすることになっている。そのため昨年予定されていたCOP26で、各国は目標の更新を求められていたが、新型コロナウイルスの感染拡大でCOP26が今年に延期となった経緯がある。

英国は今年、主要7カ国首脳会議(G7)の議長国も務める。主要20カ国・地域(G20)の議長国はイタリアだ。「EUと英国は、パリ協定に復帰し気候変動サミットを主導する米国を歓迎し、G7、G20、COP26に向け世界各国が気候変動対策に積極的に取り組む一つ目のステップとして気候変動サミットに期待している」と亀山さんは説明する。

国別の温室効果ガス排出量は中国が最も多く、米国、インド、ロシア、日本と続く。中国と米国で世界全体の4割を占め、気候変動対策のカギをにぎるのは間違いない。バイデン政権で気候変動を担当するジョン・ケリー特使は中国を訪問し、中国で気候変動を担当する解振華・事務特使と会談。米中は安全保障や人権問題などで対立が深まっているが、中国も「2060年までに温室効果ガス排出の実質ゼロをめざす」と宣言しており、気候変動の分野で協力できるかが注目されている。

上空から見たグリーンランド北西部のカナック付近。夏の日差しに氷がとけて、氷河の末端から水が流れ出していた=2012年7月、中山由美撮影

そもそも気候変動対策をめぐる国際交渉は、米中の2大排出国に翻弄されてきた。

1997年に京都で開かれたCOP3で、日本や米国、EUなど先進国だけに排出削減を義務づける「京都議定書」が採択された。しかし、米国は共和党のブッシュ政権が2001年に発足すると、中国などの途上国に削減義務がないことなどを理由に京都議定書から離脱した。

07年には中国が米国を抜いて世界一の排出国になったこともあり、09年にデンマークで開かれたCOP15では、当時のオバマ米大統領(民主党)が中国の温家宝首相らとひざ詰めで交渉したが、中国などの途上国と先進国の対立は解けず合意には至らなかった。それでも15年には、すべての国が削減目標を提出するパリ協定が採択された。だが、共和党のトランプ氏が17年に大統領に就任すると、パリ協定からの離脱を表明。米国は対中国を理由に気候変動対策の「アクセル役」と「ブレーキ役」を行ったり来たりしている。

日本政府の地球環境問題担当大使などを務め、温暖化防止の国際交渉を長年担当した西村六善さん(80)は、バイデン政権が発足した今年1月、気候変動を担当するケリー特使について「非常に重要な役割で、中国など世界各国を回って気候変動対策を促すだろう。米中は対立する分野が多いが、気候変動対策では協力できるはずだ」と予想していた。さらに、英国のEU離脱によって「気候変動対策に積極的な『4番バッター』が2人になる。気候変動サミットからCOP26に向け、欧州と米国が協力して中国などを説得していくという国際交渉になる」と解説する。

そうした構図の中、日本は存在意義を示すことができるのか。今年、気候変動サミットから本格化する国際交渉で問われることになる。