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顔を隠す作品作り続けるアーティスト、見る人に感じて欲しい「もやもや」

LifeStyle
セバスチャン・シュラムさん

コロナ禍で、ドイツでも公共の場では高性能マスクの着用が義務づけられている。「マスクはしているよ。でも顔のイメージ、顔による感情表現が断たれたことにいらだちを感じている。休日はコーヒーを飲みながら道行く人の顔を見るのが好きだったんだ。人の笑顔、怒った顔でもいいから見たいよ」。シュラムさんはオンラインでの取材に切実な気持ちを明かした。

コロナ前は、マスクをした外国人観光客がいると気持ちがそわそわした。コロナ禍でマスクを着け始めた当初は、店に入るとぎょっとした顔で見られた。「欧州の人はアジアの人ほど顔を隠す文化に慣れていない。オンライン会議で顔を見せないことも僕にはありえないな。戦争の過ちを繰り返すまいと、ドイツでは『個』の意識がとても強くなった。(同じものを身に着ける)ユニホームに対する嫌悪感もあるかもしれない」と言う。

マスクをして地下鉄に乗る市民=2020年4月27日、ベルリン、野島淳撮影

依頼を受けた作品とは別に、自由時間に自由な発想で、様々なもので人の顔を隠す作品を手がけてきた。最初に作ったのは、若い見習いの人の口に炭をくわえさせ、「さよならバーベキュー」と題したものだったという。画用紙や付箋(ふせん)紙を顔に貼ったり、ビニールを頭に巻き付けたりしたものもある。

シュラムさんの作品の一つが、2021年2月7日発行の朝日新聞別刷り「GLOBE」の表紙を飾った(以下の写真)。お祝い事があるとかぶる紙の帽子で顔を隠した女性の作品で、コロナ前に撮影したものだ。

セバスチャン・シュラムさんの作品

コロナ禍の20年のクリスマスは、生活困窮者への寄付を募る催しのために、女性が白い医療用マスクを顔中に着けた作品も作った。「守られているようだという人もいれば、孤独や孤立を感じるという人もいるし、馬鹿みたいという人もいた。なんかもやもやするなあと、目をとめて考えてもらえたらそれでいいんだ」

仕事場があるのはフランクフルトに近いオッフェンバッハ市。レストランでの食事やパーティーもできなくなり、道で会う人とキスをしたりハグをしたりすることはおろか、ビジネスでとても大事な握手もしなくなった。クリスマスにも親類に会うことはできなかった。

オンラインでインタビューをした日は、ちょうどメルケル首相が都市封鎖期間の延長を発表した翌日だった。ストレスが募る暮らしが続いているが、シュラムさんはこう話した。「世界を見渡すと強権的な男性より、共感をもって丁寧に語りかける女性リーダーがうまくやっているように見える。そういうコミュニケーションが必要とされている時なんだね。ドイツ人として誇りに思うよ」(聞き手・鈴木暁子)