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アフリカ、ハイチ、スペインが溶け合う ニューオーリンズで楽しむ至福の味

マイケル・ブースの世界を食べる
北村玲奈撮影

米国内にあって、特別に評価できる食文化が存在する。ニューオーリンズ。至福の味わいはカキから始まった。

去年の行いの中で、おそらく最も危険だったことについて思い返してみる。ルイジアナ州ニューオーリンズで開かれる盛大なカーニバル「マルディグラ」の期間中の午前2時ごろ、街の中心部を通りホテルまで一人で歩いて帰った。少しばかり酔っ払っていたことも付け加えておくべきだろう。

ニューオーリンズを旅したのは、(かつてフランス領だった)その特別な食文化を味わうためだった。西アフリカ、フランス系ハイチ、スペインの食文化が混ざり合う独特のクレオール料理と、よりフランス色の強いケイジャン料理だ。

一番シンプルな見分け方は、トマトを使うのがクレオール、使わないのがケイジャン。ケイジャンでよく使われるのは肉で、クレオールは魚介類、そしてルーでとろみをつけたソースが特徴だ。共通しているのは、味つけのアクセントとしてカイエンヌペッパーをふんだんに使うこと。

クレオールの看板料理、ガンボは私が知る限り、肉でも魚でも手近なものでできるシチューだ。やはり伝統料理のエトゥフェ(これもシチュー)やジャンバラヤ(こちらは米料理)と混同しないこと。とにかく、どれもすばらしい。

ニューオーリンズの至福の味わいはカキのランチから始まった。アクメ・オイスターハウスではパン粉とハーブ、チーズを載せてグリルしたカキを味わえる。チーズと合わせるなんてゾッとすると思ったが、不思議と成立している。おいしかった!

私は揚げものに目がないが(だから天ぷらも食べ過ぎる)、ニューオーリンズの人々もどうやら溶けてなくならない限りは何でも揚げるようだ。それを何より物語っているのがポーボーイ。揚げたエビや魚、ここでもカキなどがいっぱいはさんである巨大なバゲットだ。フレンチクオーター中心部の店でカキのポーボーイを食べたが、この時点で歩くのが苦しくなったことを白状しよう。

「脂の火曜日」の名物

マルディグラは直訳すると「脂の火曜日」、キリスト教で「告解の火曜日」を意味する祝日で、イースターを前に肉食を断つ期間「四旬節」の前日にあたる(英国ではこの日にパンケーキを食べる。不思議ですよね)。脂の火曜日というのは、まさにこの街のお祭り騒ぎ週間にふさわしい名前だ。このときばかりはコーヒーさえもハイカロリー仕様で、粉砂糖が降り積もるフランス生まれのドーナツ、ベニエが添えられる。

ガッツリおなかにくる真の名物としては、マファレッタがはずせない。イタリア発祥とされるサンドイッチで、ハムとチーズ、オリーブを何層にも重ねてある。脂分たっぷり、どっしり重厚でリッチとこれ一つで立派な食事だ。

さて、酔って夜中に出歩いていたことがなぜそんなに危険だったか。その翌朝、朝食にグリッツ(とうもろこし粉のおかゆ。イタリアの「ポレンタ」のようでもあるが起源はネイティブアメリカンにある)を食べていると、昨日の夜はどこへ行方をくらましたんだと友人が聞いてくる。ふらふらになりながら一人で帰ったと言うと、あぜんとしていた。我ながら、アメリカ国内でもとりわけ殺人発生件数が多いことで知られる街にいるとわかっていなかったとは……。

最近ではこうした旅を思い返すたび懐かしさがこみ上げ、切なくなる。私たちはいつになったら、これらの場所をまた訪れることができるだろうか。

今年の初め、ニューオーリンズで特にコロナウイルスの被害が大きかったのは、すでにアメリカ全土で感染が広がっていたにもかかわらずマルディグラを決行したことも一因だった。世界中から140万人もの参加者が集まり、一時はコロナ感染が国内のどの街より急激に広がったほどだ。

2021年のマルディグラはというと、なんとそれでも何らかのかたちで開催するとニューオーリンズ市長は明らかにした。楽観的というか無謀というか、何事も気がかりなこの状況にあっては、どう転ぶか様子をみてみるしかないだろう。(訳・菴原みなと)