■今週の名言
The moment we decide to fulfil something, we can do anything.
(何かを実行しようと決意した瞬間に、何だってできるのだ)
■名言を味わう
本連載で彼女の名言が最初に登場した今年2月の回は、大勢の人を釘付けにした国連気候変動サミットのHow dare you?(よくもまあ<そんなことを>)のスピーチからの一言を紹介しました。
今日はそれよりも半年前となる、19年4月にイギリス議会で下院議員たちを前に行ったスピーチの引用になります。
「やろうと決めたらどんなことでも成し遂げられる」と言っています。「やってやろうじゃないか!」と、その気になることの大切さを説いた言葉でしょう。日本のことわざでは近いところだと、「なせばなる」かな?
ちなみにこの「なせばなる」、英語にするとどうなるのかなとオンライン辞書を調べてみると、Where there is a will, there is a way.(直訳:意志あるところに道がある)と並んで、If you have a mind to do something, you can do it.(何かをやるつもりがもしあるのなら、それはできる)も出てきました。後者は、グレタさんの言葉に近いものがある気がします。
仕事、人生、いろんなことに迷う瞬間は多々あります。最近「できなかったら嫌だしなあ……」なんて躊躇が続いているようなら、彼女のこの一言をまず唱えてみてはどうでしょう?
■名言の単語ピックアップ
moment
一瞬、時期
「瞬間、ちょっとの間」という基本の意味を持つ名詞です。日本語でも「一瞬待って」「一瞬誰かと思った」のように言いますが、それに近い感覚です。
発音ですが、アクセントはoを強く言います。「モーメント」ではなく「モームント」のような発音になります。
アクセントのないところのつづりは、はっきり読まなくなります。familyも「ファミリー」ではなくて「ファマリー」、animalも「アニマル」ではな「ェアーニモウ」のようになります。
アクセントのないところのつづりに含まれる母音は、基本的に「アイウエオ」のようにはっきりとは発音しません。ですから、「メント」「ファミーリー」「アニーマル」のようにならないよう注意してください。
英語でもカタカナ発音のままだと、相手に理解されない、または別の単語に間違えられる可能性が高くなります。誤解を最小限に抑えるためにも、英語らしい発音を普段から心がけていきましょう。
momentでよく使うのはこの一言でしょう。
Wait for a moment.
(ちょっと待って)
forを省いたWait a momentの形もあります。命令形なので、そのまま使うのは親しい人に限定したほうが無難です。ビジネスの世界では冒頭にPleaseを付けるか、Could you wait for a moment?(少しお待ちいただけますか?)と、丁寧なお伺いを立てる体で使いましょう。
momentはsecondやminuteと置き換えも可能です。さらに「秒」という意味のsecondを略してWait (for) a sec.と言う人もいますので、「セックってなんだ?」とならないためにも、ぜひ覚えておいてください。
for a momentは「ちょっと(少し)の間、ひとたび」という意味の頻出表現です。
May I bother you for a moment?
(ちょっと<邪魔しても>いい?)
I couldn’t stop working for even a moment.
(私はただの一瞬でさえ仕事の手を休められなかった)
それから「ちょい待ち」のWait for a moment.の変形としては、Just a moment. とOne moment.があります。同じ意味ですが、変形2つは動詞で始まる命令形ではないので、カジュアルな響きはありません。ビジネスでもそのまま使えますが、最後にpleaseを付けてもOKです。
「あのとき、当時」という意味のat that momentもよく使います。過去のある時点を振り返って話す感じになります。at that timeとしてもほぼ同義です。
At that moment, I was still in New York.
(私は当時まだニューヨークに<住んで>いた)
At that moment, we knew the deal was done.
(あのとき、その取引は成立したなとわかった)
thatをtheに変えてat the momentとすると「現在、今のところ、目下、当座」という意味になります。at this momentにも「現在のところ、現時点では」という意味がありますが、長続きしないニュアンスがあります。現在の話をするので、現在形で使うことが多くなります。
She’s out at the moment.
(彼女は今、外出中です)
Are you available at the moment?
(今手が空いている?)
Things are fine at the moment.
(目下は万事順調だ)
3つめはThings are fine for the moment.とatをforに変えて言うこともできます。for the momentは「今のところは、差し当たりは、当分の間」という意味でat the momentとほぼ同義になりますが、「今後は変わる可能性が高いけれど、とりあえず今は」というニュアンスがあります。
We should stay with the original plan for the moment.
(今のところは元のプランのままでいきましょう)
また、名言もこの形ですが、the moment SV...という形を取って接続詞として使われる場合があります。「〜するとすぐに、〜した瞬間」という意味で、as soon as...と同じような意味、使い方をします。
The moment I left the office, the rain started.
(オフィスを出たとたん雨が降ってきた)
■名言を解剖する
The moment we decide to fulfil something, we can do anything.
(何かを実行しようと決意した瞬間に、何だってできるのだ)
既に説明したようにthe momentは接続詞として使っています。「〜したその瞬間に」という感じになります。
2度出てくるweは両方とも漠然と一般の人々を指す主語。あえて訳するなら「我々人間」ですが、日本語ではなくても意味が通じる上、ないほうがより自然な文になるので訳出していません。
decideは「決める」という意味の動詞。名詞のdecision(決定)、形容詞のdecisive(決定的な、断固とした)、副詞のdecisively(決定的に、きっぱりと)もセットで覚えておきましょう。
fulfilはいろいろな意味がありますが、ここでは計画や約束を「実行する、果たす」という意味。fulfilはイギリス英語のつづりで、アメリカ英語ではfulfillとなります。また発音は「フルフィル」ではなくて「フウフィル」のような感じ。カタカナ表記とは異なるため難しくなるので、発音のチェック&音読練習をしてみてください。
we can do anythingのanythingは、肯定文で使われた場合は「何でも」という意味ですから「私たちは何でもできる」となります。
「『何でも』だったらeverythingじゃないの?」と思う方もいるかもしれませんね。確かに肯定文の場合は、We can do everything.でもWe can do anything.でも似たような意味になります。anythingのほうが「何だってできるの」の「何だって」が強調されたニュアンスがあります。
ただし否定文の場合は、We can’t do anything.(何も<何1つ>できない)と、We can’t do everything.(全部できるわけではない)は、意味がまったく変わってきます。後者はいわゆる部分否定になります。この違いには注意が必要です。使い分ける自信がなければ、まずは両方の文例と訳を見比べてみましょう。
■今週の1枚
千葉県木更津市にある江川海岸で撮影しました。潮干狩りと海中電柱(「千と千尋の神隠し」に出てくるシーンをほうふつとさせると言われているそう)、そして夕日がきれいなスポットとして有名です。
日本のウユニ塩湖(南米ボリビアにある絶景)という形容もされるとか。確かに景色がきれいなところで、私もよく撮影に足を運びます。特に空気が澄んでいる冬はいい写真が撮れます。この1枚も寒空のなか、凍えながら三脚を立てて撮ったものです。
さて次週(8月31日更新予定)の「やる気が出る名言で学ぶビジネス英語」は、ボクシング元世界ヘビー級チャンピオンのモハメド・アリの言葉をフィーチャー。史上最強の男と呼ばれた彼が、imaginationについて言及した一言です。9つの単語が使われている一文には「no」が2度も出てくるのですが、不思議とネガティブな感じはなく、むしろ応援してもらっている気になる名言です!
どうぞお楽しみに。See you next week!
(構成・山本航)
■「やる気が出る名言で学ぶビジネス英語」は毎週月曜朝に配信します。