■今週の名言
We are in the beginning of a mass extinction, and all you can talk about is money, and fairy tales of eternal economic growth. How dare you!
(私たちは大量絶滅の初期の段階にいるのだ。それなのに、あなたがた大人が話すことと言ったらお金と、永遠の経済成長という作り話ばかり。よくもまあそんなことができるものだ!)
■名言を味わう
周囲を見渡して誰も傷つけないよう、“忖度”する大人の発言とは真逆と言えばいいでしょうか。思ったことを率直に言葉にした、ティーンエイジャーのスピーチの一節です。
地球温暖化に関しては諸説ありますが、多くの科学者が二酸化炭素ガスの排出によって地球の気温が上昇していると認めています。人類が危機的状況に瀕しているにもかかわらず、お金の話と絶え間なく続く経済成長といった絵空事を言い続けている政府や大企業。
ここで紹介した一節のあとでトゥーンベリさんは、環境に関する絶望的なデータを示しつつ、なぜ本腰で対策を講じないのか?との問いを投げかけます。そして、これ以上裏切りを続けると若い世代は決して許さないとスピーチを締めくくっています。
このままでは世界が絶滅に瀕するとストレートに語りかける内容はもちろんですが、怒りの表情を浮かべながらのキツイ口調も、大きなインパクトを世界に与える一因になったかもしれません。
おそらくトゥーンベリさんは、裕福で教育熱心な家庭に育ったティーンエイジャーだと思うのですが、英語がとても上手ですよね。ネイティブスピーカーではないにもかかわらず、あの若さで国連のサミットという大舞台で、聞き手に訴えかける演説を外国語でやってのけた事実にも、びっくりしました。
確かにヨーロッパ言語が母語の人にとって英語は、比較的習得しやすい言語と言えるでしょう。ただ、そんなアドバンテージを差し引いても、やっぱりBravo!と称賛するにふさわしい内容だったと思います。
パキスタン出身の人権運動家マララ・ユスフザイさんもそうですが、英語ノンネイティブの若者が、世界に向けて英語で積極的に発信している姿を見ると頼もしいですし、刺激も受けます。
また、彼らを見ていると、英語という言語の立ち位置が世界でずいぶん変わってきたなと実感します。以前に比べて、幅広い国の人々が世界に向けて英語で発表している。やはり英語のプレゼンスはぐっと高まっているんですね。
世界のより多くの人に声が届くよう、私たち日本人も英語での発信力をどんどん高めていきましょう!
■名言の単語ピックアップ
dare
あえて〜する、思い切って〜する
世界的に有名になったHow dare you!の一言からdareを取り上げます。
How dare you! は日本語にすると「よくもまあ、ずうずうしくできるものだ!」というような意味で、かなり強くてきつい言葉になります。人の言動に対して、怒りやあきれた気分を伴って猛烈に批判するニュアンスです。
ですから、現実のビジネスの世界でこの一言を発することは、ほぼないでしょう(「半沢直樹」的なお仕事ドラマの中でなら、ひどい仕打ちにあったキャラが捨て台詞のように発することも考えられるでしょうが……)。
こういった強い非難の言葉やスラングは「意味は知っているけれど、自分では使わない」というスタンスを取ることが非常に重要です。
人を威圧するような言い回しや汚く罵るスラング表現は、英語にもたくさんあります。エモーショナルなシーンの多い映画やTVドラマなどを見ていると、そういった表現に出くわすこともしばしばです。
特に覚えたてのころは、自分でもつい口にしてみたくなるもの。けれど相手を不快にする可能性のある言葉は極力慎むべきです。
ただし例外的に、スラングや強い非難の言葉を使っても大丈夫な場面もなくはありません。例えば、付き合いも長く十分親しい人物と夜飲みに行ってぶっちゃけ話をするといったシチュエーション。そんな場では、きつい表現やスラングを発することで「こんな言葉を使ってもOKなほど、私たちは親密な関係なんだ」と示唆できたりするのです。
でもこれは、非常に高度な技と言えるので、積極的に自分から仕掛けることはお勧めできません。これも「親密な関係を強調したくて言うこともある」と、まずは知識として持っておけばいいでしょう。
How dare you!というフレーズ上のdareは、品詞としては助動詞となります。また、How...で始まっているので「?」で終わる表記も見かけますが、強い非難の気持ちを表す言葉なので「!」を使ったほうがしっくりくるでしょう。
実はこの助動詞のdareは、あまり一般的ではありません。ビジネスで使う場合は、むしろ動詞のほうが一般に広く使われます。なかでもdareの直後にtoを取り、dare to +動詞(to不定詞)となる形は頻出します。
No one dared to talk to him.
(誰も思い切って彼に話しかける者はいなかった)
*dare to動詞で「思い切ってする」「勇気を持ってする」といった意味になる。
ただし、否定文や疑問文では不定詞のtoが省略される場合があります。
He doesn’t dare (to) tell us the truth.
(彼には私たちに真実を告げる勇気がない)
ビジネスシーンでの例文を見ていきましょう。
She will dare to do anything if it will help her accomplish her mission.
(ミッション遂行に役立つのなら彼女はどんなことでもするつもりである)
*dare to do anythingで「どんな(大それた)ことであってもする)」といったニュアンスになる。」
We wouldn’t dare (to) produce a new product so soon after our deficits of the last three years.
(過去3年連続で赤字続きの我が社では、新しい商品をすぐ開発することはないだろう)」
*wouldn’t dareで「とてもできそうにない」といったニュアンスに(ここでのwouldは仮定法)。何についてできそうにないかが明確なときはWe wouldn’t dare.とだけ言うこともある。
Don’t you dare criticize me in front of my team!
(チームの前で私を酷評するのはやめてくれ!)
*Don’t you dare...!で「〜はやめてくれ!」「〜なんてとんでもない!」と、相手の行動をやめさせる、禁止・命令の表現。Don’t you dare!とだけ言うことも。
日本人にとってdareは、あまりなじみのない単語。まずは上の例文の形を覚えるところから始めてみてください。
■名言を解剖する
We are in the beginning of a mass extinction, and all you can talk about is money, and fairy tales of eternal economic growth. How dare you!
(私たちは大量絶滅の初期の段階にいるのだ。それなのに、あなたがた大人が話すことと言ったらお金と、永遠の経済成長という作り話ばかり。よくもまあそんなことができるものだ!)
今回は連載始まって以来最長の名言なので、まずは語彙をリストアップします。
・in the beginning of... 〜の初め頃に、〜の頭に
(in the beginning of Februaryなら「2月初旬に」。「〜の中頃に」ならin the middle of...、「〜の終わり頃に」ならin the end of...)
・mass 大量の、多数の、大規模な
・extinction 絶滅(動植物の種族の)、消滅(慣習、伝統技術など)
・fairy tale おとぎ話、童話、(信じがたい)作り話
・eternal 永遠の、不朽の
・economic growth 経済成長
次に文法のポイントを解説します。
・all you can talk about is money...
「all SV」は、「SがVするすべて」という意味になります。All you can talk aboutなので「あなたが話すことができるすべて」となります。
大きな文の主語はall、そして大きな文の述語動詞はisです。だから、「あなたが話すことができるすべてはお金である」となります。
「こんなふうに文法的に説明されてもピンとこない」。こうお嘆きの方には、ビートルズの名曲の1つ「All You Need is Love」を思い出していただきたい。実は同じ構文です。
「あなたが必要なすべては愛である→愛こそすべて」と歌ったのがビートルズ。いっぽうグレタさんは、「あなたがたが話をするすべては、お金だ→あなたたち大人にとってはお金こそすべて」と言っているわけですね。ここでのyouは複数、しかも大人たちという意味合いで使用されています。
そして、moneyのあとにもう1つ、大人が話してばかりの事柄としてfairy tales of eternal economic growthが続いているのです。
こんな大人たちに憤って、最後に強い批判的な一言How dare you!が出てきているのです。
■今週の1枚
仕事で国内を巡ることが多いのですが、世界有数の工業国の1つでもある日本は、滞在先のホテルの窓からの景色でも、工場の煙突や煙が見えることが少なくありません。
これは四国を訪れた際、瀬戸内海沿岸に並んだ、煙突から煙を吐き出す工場を遠くに望んだ風景です。グレタさんの目にはどう映るのかななどと思いつつ撮影しました。
さて次週(2月10日更新予定)の「やる気が出る名言で学ぶビジネス英語」も、2019年に飛び出した名言を取り上げます。ラグビーワールドカップの日本代表、リーチ・マイケル主将が大会期間中に発した一言ですが、元気が出ること請け合いです。
どうぞお楽しみに。See you next week!
(構成・山本航)
■「やる気が出る名言で学ぶビジネス英語」は毎週月曜朝に配信します。