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私たちの未来、経済か環境かの二者択一じゃない 行動を起こす大学生たち

World Now 更新日: 公開日:
気候危機を訴えるFFFJapanの時任晴央さん=本人提供

コロナで傷ついた世界では、経済活動が滞ったことで様々な問題が噴出した一方で、空気や水が一時的にきれいになるなど環境の改善も見られた。うまく対処できさえすれば、地球温暖化などの長期的な課題を解決できる一つの可能性が見えてきたとも言える。コロナ危機が起こる以前から、気候変動への対処を訴えてきた学生たちに話を聞いた。(目黒隆行)

■どれほどの危機感を持っていますか

「これが、お前たち環境活動家の望んでいた結末だろう」

仙台市の大学2年生、時任晴央さん(22)は4月、友人からSNSにこんなメッセージが届いたと言われた。空気が澄んで景観が改善したと世界各地で報じられていた。一方で、緊急事態宣言で経済がストップし、先の見えない不安に包まれていた時期だ。「自分たちの目指しているゴールは、こんな破滅的なものじゃない。どうしたらうまく伝えられるんだろう」

時任さんは、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(17)の訴えに共鳴し、気候危機を訴える若い世代の「Fridays For Future(FFF)」(未来のための金曜日)で活動している。グレタさんが主導する金曜日デモのうねりが世界中に広がるなか、日本では2019年2月に東京で活動を開始。大阪や京都、名古屋や福岡など各地に広がり、コロナでデモができなくなった今も、オンラインの勉強会やイベントを開いて気候変動対策を訴え続けている。

第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)の会場で若者組織「フライデーズ・フォー・フューチャー」の抗議活動に参加するグレタ・トゥンベリさん(右から4人目)=2019年12月6日、スペイン・マドリード

時任さんはFFF仙台の代表のほか、全国組織のFFFJapanでも政策班のリーダーを務めている。環境への強い思いの原点は「生き物が好き」ということ。森林減少や生物多様性の問題に関心を抱いて勉強を続けてきた。

「経済か環境か」の二者択一ではなく「経済にもっとグリーンな視点を取り込んでいきませんか」と訴える。キーワードはグリーン・リカバリー。「緑の復興」とも呼ばれている。

FFFでの議論を重ね、6月には「若者の視点を尊重する」「脱炭素・環境負荷の少ない解決策を選ぶ」「価値観の転換・社会の再構築」といった5項目の意見書を作成。メンバー2人が、ほかの環境団体の若者らとともに環境省を訪れ、小泉進次郎・環境相に直接会ってグリーン・リカバリーの道を選ぶよう求めた。

新型コロナウイルス収束後の社会について意見を交わす若者たちと小泉進次郎環境相=2020年6月25日

コロナ禍の中にあっても精力的に活動を続ける時任さんだが、一時的な環境改善が見られたとはいえ、楽観はしていない。「一言で言うと、緊迫性の問題だと思います。さらなる悲劇に見舞われると多くの人が感じたからこそ、コロナでは(緊急事態宣言などの)大胆な政策に踏み切れました。それでは、果たしてみなさんは環境問題について、どれほどの危機感を持っているのでしょうか。そういった緊迫さが、まだ足りないと思っています」

■今後10年が私たちの未来を左右

時任さんと同様に、FFFで活動する東京都の高校2年生、伊東真菜美さん(16)は、今後10年を「私たちの未来を左右する時期」と見る。「成長優先で経済を回し、化石燃料をどんどん使ってきました。このタイミングでCO2排出を大幅に減らさないと間に合わない。巨大台風が当たり前のように来る時代になってしまいます」と危機感を抱く。

環境保護を訴えるプラカードを持つ伊東真菜美さん(左)=本人提供

「コロナの感染防止のためには、いま自粛すれば2週間後には効果が見えるじゃないですか。だけど、気候変動問題は、いま自分たちの行動を変えたからといっても、成果が見えるのは20年、30年、50年というスパン。長期的な視点を持って判断できる市民や政治家が、どれだけいるかにかかってきます」

コロナ後の未来をどう描くか。肝心なのは市民の、特に自分たちのような若い世代の意識だと2人は口をそろえる。

オンライン会議システムで取材に答える時任さん(下)と伊東さん(左)

伊東さんは「なかなか政策に若者の意見が反映されないということはあると思います。ただそれは、若者に意見がないのではなくて、反映される場や環境がないということ。それに、高校生や大学生が政治的な発言をすることについて、好ましくないとする風潮が残っているのではないでしょうか」と話す。

時任さんは言う。「声を上げても変わらない、という無力感に襲われるときはあります。それでも、本当に社会のこと、将来のことを真剣に思うからこそ、動いているのです。経験がないとか、知識がないといった先入観なく、若者の声を受け止めてもらえるよう、訴え続けていきたい」