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今日の学びが明日を豊かにする マルコムXからのメッセージ

やる気が出る名言で学ぶビジネス英語 更新日: 公開日:
安河内哲也撮影

「やる気が出る名言で学ぶビジネス英語」#39 Hi everyone! 今週取り上げるのは、あのマルコムXがeducation(教育)の本質について言及した言葉です。ある集会でのスピーチからの引用ですが、ロングバージョンも紹介するので最後まで読んでください。では張り切って見ていきましょう!(安河内哲也)

■今週の名言

Education is our passport to the future, for tomorrow belongs only to the people who prepare for it today.

(教育は未来へのパスポートだ。明日という日は、今日準備をする人々にのみ属するのだから)

■名言を味わう

教育の大切さを謳った名言です。

直訳すると「教育は我々の未来へのパスポートだ、なぜなら、明日は明日(未来)に向けて今日準備する人々にのみ属しているのだから」となります。

学生、社会人、リタイア組と、すべての層にあてはまる言葉ではないでしょうか。私なんて一読するだけで、「そうだ、今この瞬間も、そしてこれからもずっと向学心を持って頑張っていこう!」という気持ちにさせられます。

Black Lives Matter旋風が巻き起こる今、差別され抑圧された黒人の憤りを大胆に表明したマルコムXが再注目を浴びている感があります。私はスパイク・リー監督、デンゼル・ワシントン主演の「マルコムX」を見たぐらいで、恥ずかしながら彼のことは、それほどよく知りません。

けれども今、racism(人種差別主義)について考える上でも、マルコムXのことや当時の歴史をもっと学んでいきたいと思います。

スピーチの名手としても知られていたというマルコムXは、ほかにもたくさんの名言を残しているので、英語学習の一貫としてチェックしてみてください。YouTubeでは彼のスピーチやインタビュー映像を見ることも可能ですので、リスニングとスピーキングのトレーニングも兼ねて、覗いてみましょう。

ちなみに、彼のファーストネーム、マルコムのスペルはMalcomではなくてMalcolmになります。英語の固有名詞は難しいですね。

■名言の単語ピックアップ

prepare

準備する、用意する、作る

動詞で「準備をする」という意味のprepare。みなさん、知っている単語だと思います。けれども、正しい基本の使い方がわかりますか?

手始めに1つクイズを出します。以下の日本語の一文を、prepareという単語を使って英語にしてみてください。深く考え込まず、頭のなかでさっと考えて、できるたけ早く答えを口に出して言ってみてください。

問題文:彼は今日、明日のテストの準備をした(「テストの準備をした」は、「テストに備えて勉強をした」という意味として考えて)

さあ、すぐ言えましたか? 正解はこうなります。

Today he prepared for tomorrow’s test.

英語で「〜の(ための)準備する」と言いたい場合には、prepareの直後に前置詞のforを持ってきます。We’ll prepare for the presentation next week.と言えば、「我々は来週のプレゼンの準備を(これから)します」という意味になります。

正解できましたか? 間違えてしまった人の多くは、こう言ってしまったのでは?

(×)Today he prepared tomorrow’s test.

×印をつけたすぐ上の一文は、英語としては間違ってはいないのですが、別の意味になってしまうのです。直訳ふうに和訳すると、「彼は今日、明日のテストの準備をした」で正解prepared forの一文とまったく一緒になります。

ですが、意味としては「明日のテストの準備」が「テスト対策のための勉強」ではなく、「テストの問題作り」になるのです。

つまり、heはおそらく先生で、明日のテストの問題作りを前日の今日やったわけです。それがToday he prepared tomorrow’s test.の正しい状況になります。

いっぽうのToday he prepared for tomorrow’s test.は、試験を明日に控えた生徒が前日に、にわか勉強している。そんな状況です。

以上のように、prepare for...とprepare ...は、forがあるかないかで大きく意味が異なります。prepare for...は、「...」のところに入るある物事に対して(向けて)準備をする。prepare...は、「...」そのものを準備する、ということです。

ですから、prepare the handoutsと言えば「配布物を準備する」、prepare a draftと言えば「原案を作成する」となります。

仕事のEメールでもこのprepare for...とprepare...を混同して使っているケースがよくあるので要注意です。辞書で用例にもっと数多く触れていくと、使い分けがさらにスムーズにわかってくると思います。

次にprepareという単語の冒頭、preに注目してみます。このpre-は「前」を表す接頭辞と言われるものです。

ほかにもpredict(予言する)、premeditate(前もっと熟考する)、preoccupy(〜を夢中にする、先取りする)、prescribe(指示する、処方する)など、pre-で始まる単語には「前もって」というニュアンスがあります。ボキャブラのときの手助けになるので、「pre=前」というイメージを持っておいてください。

仕事やイベント、旅行の準備と幅広い用途に使えるprepareですが、「食事を調理する、作る」という意味にも使えます。

例えば、I’ll prepare some sandwiches for lunch.(ランチにサンドイッチを作るよ)やHe prepared a meal for us last night.(彼は昨夜、我々のために食事を作ってくれた)などと言います。

この料理を作るprepareの使い方は、私たち日本人にはちょっと難しかったりします。

日本語だとどんな料理でも、「料理する」の意で「作る」と言えますね。例えば、冷凍食品をチンするだけ、即席麺を茹でるだけといった超シンプルな料理でも、普通に「作る」が使えます。

いっぽう英語ではどうでしょう? 「料理を作る」という動詞としてはcook以外だと、prepareよりも先にmakeがまず思い浮かびます。実はこのprepareとmakeは使い分けがあって、少々ややこしい……。

私はアメリカ人の子供に、このmakeとprepareの使い方を訂正された経験があるんです。小学校1、2年くらいの子に向かって、冷凍食品のラザニアを指差して、It’s easy to make.と言ったときのことです。

その子は、No, it isn’t easy to make, but it’s easy to prepare.(違うよ、makeするのが簡単なんじゃなくて、prepareするのが簡単、だよ)と返してきたんです。

この一件が契機となって「makeは一から料理を作るような場合に、prepareは出来合いのものや、冷蔵庫の残り物を使ってちゃちゃっと簡単に作って出す場合」といった使い分けが何となくあるということを、初めて知ったわけです。

どの動詞を使っても通じるので、そこまで神経質になる必要はありません。けれども、「細かい使い分けが存在するんだ」と気付く場面は、外国語を学ぶ際には幾度となく経験することです。

どうせなら「うぉ、面倒だな〜」ではなく、「へえ、面白いな!」というノリで楽しんでいきましょう!

■名言を解剖する

Education is our passport to the future, for tomorrow belongs only to the people who prepare for it today.

(教育は未来へのパスポートだ。明日という日は、今日準備をする人々にのみ属するのだから)

冒頭のeducation is the passport to the future(教育は未来へのパスポートだ)は単純な文なので問題ないでしょう。

ちょっと難しいのが、カンマの直後にあるforです。ここでのforは、What can I do for you?(あなたのために私が何かできることはありますか?)のような「〜のために」という前置詞ではありません。

品詞としては接続詞になります。forが接続詞として使われるときは、前文の付加的説明や、理由を述べる場合になります。あとから追加で説明したり、理由を言ったりする役割を果たすということです。

この用法のforは通常、直前にカンマかセミコロンが付きます。訳としては、「(というのも)〜だからだ」という感じになります。教育は未来のパスポートと最初に言い切って、「それは何かというとね〜だからだよ」と後ろから説明をしています。

belong to...は「〜に属する」でしたね。何に属するかは、後続the people who+動詞以下で説明されています。動詞の部分はprepare for it today(今日それに対して<向かって>準備している)なので、「今日それに向かって準備する人に属する」となります。

前置詞のitはtomorrowを指していますが、ここでのtomorrowはその前に出てきているthe futureの言い換えと考えればいいでしょう。

さて最初にお話ししたように、名言はスピーチからの引用です。1964年6月のアフリカ系アメリカ人統一機構の設立集会で披露されたスピーチからなのだとか。

前振りを網羅した、長いバージョンを最後に載せておきます。

Education is an important element in the struggle for human rights. It is the means to help our children and our people rediscover their identity and thereby increase their self-respect. Education is our passport to the future, for tomorrow belongs only to the people who prepare for it today.

(教育は人権をかけた闘いにおいて重要な要素の1つだ。教育は我が子供たちそして民族が、自身のアイデンティティを再発見し、そのことで自尊心を高める手助けとなる。教育は我々の未来へのパスポートだ。なぜなら明日という日は、未来に対して、今日備えている人々にだけ属するのだから)

■今週の1枚

北海道帯広市にある旧国鉄・広尾線の幸福駅に置かれた古い列車を撮った1枚です。廃線になって30年以上がたった今も、観光スポットとして人気で、よく整備されていました。古いディーゼル列車は郷愁を誘いますが、大自然をバックに撮影していると、今にも明日に向かって走り出しそう、そんな錯覚を抱きました。

さて次週(6月22日更新予定)の「やる気が出る名言で学ぶビジネス英語」は、オランダの若き海洋冒険家、ラウラ・デッカーの言葉をフィーチャーします。ヨットでの単独世界一周の最年少記録(何と16歳で樹立!)を持つ彼女が、船に乗る瞬間の気持ちを語った一言。きっとみなさん、感銘を受けると思います!

どうぞお楽しみに。See you next week!

(構成・山本航)

■「やる気が出る名言で学ぶビジネス英語」は毎週月曜朝に配信します。