■今週の名言
My best friend is the one who brings out the best in me.
(我が親友とは、最高の私を引き出してくれる友だ)
【本連載の第一回記事】ビジネスの成功は飛行機から学べ 自動車王フォードの至言
■名言を味わう
直訳すると「私の親友は、私のなかから最上を引き出す人である」となります。つまり、フォードにとっての親友とは、フォードという人間が持ち合わせる資質や潜在能力のなかから、最高の部分を引き出してくれるような存在、ということです。
自分でも気付いていない長所を浮かび上がらせてくれる友人がいたら、うん、確かにすばらしいですよね。また大切な友達のよい面を見出すことができる、そんな存在に自分自身もなりたいものです。
仕事でもプライベートでもウマが合う人と合わない人は、どうしたって出てきます。私にとっては、一緒の時間を共有するときに楽かどうかが大事なポイントだったりします。またビジネスでは、気持ちよく仕事ができるかどうかが重要かなと思います。
楽しく、楽に遊んだり仕事ができたりする。そんな基準に加え、お互いの良さを引き出しあって、高めていけるような関係性も親しい友人たちと築いていけたら、人間として成長できるのかも……。人生の大先輩であるフォードの言葉から、そんなふうに感化を受けた次第です。
■名言の単語ピックアップ
one
人、物(代名詞)
「なぜ今さらoneなんて単語を取り上げるの?」と思った人は、One moment, please! ちょっと待って! いろんな意味があって、なかなか一筋縄ではいかないのがoneなんです。
もちろん、真っ先に思い浮かぶのは1、2、3、4〜の「1つ」「1つの」のという意味のoneでしょう。けれども、今回は名言で使われている、代名詞としてのoneにフォーカスして解説をしていきます。
例えばコーヒーショップで、1杯注文するとしましょう。I would like to have a cup of coffee.とあなたが告げると、店員はWould you like a large one or a small one?(ラージ、スモールどちらにしますか?)と尋ねてくるかもしれません。
または量販店のトラベルコーナーでスーツケースを探しているとします。I’m looking for a suitcase.と近くの店員にあなたが告げたら、A large one or a small one?と尋ねられるかもしれません。
あなたがスーツケースを無言で一心不乱に探しているのを見かけた店員が声をかけてくるというパターンであれば、Are you looking for a large suitcase or small one?と質問されることも想定できます。
そしてどの場合も、Oh, a large one (would be great).(あの、大きなほう<がいいです>)のように返答するのが一般的になります。
いずれの場合も、話題にしている物について最初はその物の名前(名詞)をしっかり挙げますが、2回目以降はoneで代用するということですね。同じ名詞が連続して出てくる際にくどくならないように、反復を避けてこのoneを使うわけです。
このとき「one自体に『1つ(の)』という意味があるのに、a small oneと言うのは不思議だな〜。aとoneが重複なのでは?」と感じる人も多いかもしれません。ですが、この場合のoneは純粋にコーヒー1杯やスーツケース1個の代名詞としての「物」なので、「one dollar=a dollar」のようなaという意味は持たないのです。
代名詞のoneを物として使うときは、 largeやmedium、smallなど複数の選択肢があるなかで、どのサイズ(選択肢)を指しているかを伝える場合が多くなります。
コーヒーやスーツケースなど、何の話をしているかがわかっている前提で大きなやつ、小さなやつと言うのと同じです。そう、代名詞のoneは、日本語でいうところの「やつ」という表現によく似ています。
複数形でも使うことができます。パソコンの話をしているのであれば、large computers and small computersといちいちcomputersと口に出さずに、We need both large and small ones at our office.(うちのオフィスには、大きいのと小さい<パソコン>のと両方がいります)とすればいいのです(この例文のように、oneやonesは最後にまとめて1度だけ言うこともよくあります)。
さて、それでは代名詞のoneとonesは、itやthisやthat、そしてthemとはどう違うのでしょうか? 端的に言うと、oneとonesは特定の物を指さないでどれか1つ、または複数を指す場合、it、this、thatとthemは既に話に出ているそのもの1つ、または複数をしっかりと特定して指す場合に使います。
例えば、I want a large one.と言えば大きなサイズが欲しいと言っているだけで、大きなサイズのなかで「この1つ」とは限定していません。つまり大きなサイズであれば、どの1杯、1個でもいいということになります。
いっぽうitやthis、thatは、前に出てきたものですからI want it (this / that).と言えば、話し手のなかでは「それ、これ、あれ」と特定のある物が浮かんでいるのです。
Would you like a small (one) or large one?と尋ねられたときは、物体を1つだけ特定して指しているのではなく、例えば「小さなやつか、大きなやつのなかのどれか1つ」という意味で使っているのです。ですがit、this、thatは既に話題に上っていて、その物体をすっと指差して、特定している感覚があるのです。
さらに代名詞のoneやonesは、今回の名言がそうであるように、人に対して使うこともあります。名言ではthe one who brings out the best in meとなっていますから、the oneがthe personの意味で使われています。
また、the ones who bring out...ともしなっているとすれば、the onesはthe people の意味で使われていることになります。
それから、one of...(〜の1つ)も使い勝手のよい表現なので押さえておきましょう。
まずは発音の仕方に注意です。「ワン・オブ」ではなく、連結して「ワナァブ」のようになります。
形としてはone of+名詞で「〇〇(名詞)の1つ」となります。最近は表示の問題で例えば、「the biggest theme park in the world(世界最大のテーマパーク )」のように、1つを断定する言い方が難しくなってきていますよね。
これをone of the biggest theme parks in the worldとone of(と名詞に複数形のs)を挿入することで、「世界最大の1つ→世界最大級の」のようにマイルドに表現することが可能になるのです
このようにone of the +最上級は、1つと限定、断定を避けるためにうってつけの表現です。ビジネスでもよく使いますよ。「one of the biggest selections in Japan(日本最大級の品揃え)」「one of the smallest towns in the country(国内で最小級の町)」などと、スッと言えるよう繰り返し音読練習をしてください。
また、one of...は、I’m one of them.(私も彼らの1人です→同じ考えを共有している)のように、コンテクストによっては、自分の立場を伝えることもできます。
A lot of companies are encouraging employees to work at home these days. We’re one of them.
(最近はたくさんの企業が在宅勤務を奨励している。我が社もその1社です)
代名詞を中心に取り上げましたが、複数の品詞で幅広い意味を持つ単語でもあるone。少しずつ守備範囲を広げていきましょう。
■名言を解剖する
My best friend is the one who brings out the best in me.
(我が親友とは、最高の私を引き出してくれる友だ)
best friendは「親友」のことでしたね。the best of friendsという言い方もあります(例:We’re the best of friends.<我々は大親友だ>)。
また仲のよさをさらに強調したいなら、best friend forever(永遠の大親友)も使えます(頭文字を取ってBFF<ビー・エフ・エフ>と言うことも)。
the oneがthe personと、ここでは人であることはすでに説明しました。
直後のwhoは関係代名詞で、後ろの動詞はbringsとsが付いています。これは関係代名詞の前にある名詞の形に動詞を合わせる必要があるためです。前の名詞はmy best friendと三人称単数ですから、動詞bringにも、いわゆる三単元のsが付いているんですね。
この三単元のsは、例え付け忘れて言ったとしても、意味が通じなくなり理解されないことにはまずなりません。ですから、そこまで神経質になることはないでしょう。ただし、文法の基礎としてしっかり頭のなかに入れておきたいものです。
けれども、eメールなどの書き文字の場合は、のちのちまで間違いが残ってしまうことでもあるので、特にビジネスの場合は、スピーキング時より慎重になったほうがいいでしょう。英語のオートコレクト機能をオンにしておけば、三単元のsの有無に関する間違えは自動的に拾ってもらえるので、うまく活用してくださいね。
bring outは物理的に「(外に)持ち出す、取り出す、連れ出す」という意味がまずあります。そこから派生して才能や特徴、真価、秘密などを「引き出す、伸ばす、発揮させる」といった意味にもなります。ここでは「引き出す」がドンピシャな訳でしょう。
引き出すものが何かは、直後を見ればわかります。the best in meとあるので、「私の(なかの)ベスト」となります。ここでのbestは「最上、最善」という意味の名詞で通常theを伴います。bring out the best in+人で「人のいちばんよいところを引き出す」という意味です。
このthe best in+人(場所、物)は、とても使い勝手の良い表現なのでどんどん使ってみてください。
例えば、“Nippon-ichi” means “the best in Japan.”と言えば「“日本一”は、日本語で“日本でいちばん”という意味です」、They’re the best in the business.と言えば「彼らはその業界一だ」となります。
ほかにもthe best in...でよく使う「...」によく入るものをリストアップしておきます。
the best in the industry(業界一)
the best in the world(世界一)
the best in the city(市内一)
the best in one’s field(自分の専門<得意>分野でトップ)
ビジネスで「〇〇でイチバン!」と語りたいときに、この表現がさっと口をついて出てくるのを目標に頑張っていきましょう!
■今週の1枚
実はこの2月に1週間ほど入院したのですが、その入院先の病院の庭で撮影したものです。ちょっとした手術をして、病院でおとなしくしていたこの時期は、予想以上にツライ時間でした。
頭はしゃんとしているけど、体が痛くて仕事をする気にはなれず。やることがなく暇を持て余し散歩に出てみると、冬だから庭は殺風景。けれども唯一、元気に咲き誇っていたのがこちらの花(パンジーでしょうか?)だったのです。
「best friendsになぞらえて、花二輪にフォーカスしてみよう」と思って撮った1枚です。この花とカメラのおかげで、しばし痛みを忘れることができました。
さて次週(6月1日更新予定)の「やる気が出る名言で学ぶビジネス英語」は、ダイアナ元妃の言葉をフィーチャーします。亡くなってもう20年以上が経ちますが、彼女が遺した一言は、大変な事態に直面する今でも、いや、今だからこそ、紹介する価値のある内容だと感じています。
どうぞお楽しみに。See you next week!
(構成・山本航)
■「やる気が出る名言で学ぶビジネス英語」は毎週月曜朝に配信します。