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レゲエの神様ボブ・マーリーの名言。音楽のよさはこんなところにある

やる気が出る名言で学ぶビジネス英語 更新日: 公開日:
安河内哲也撮影

■今週の名言

One good thing about music, when it hits you, you feel no pain.

(音楽のひとつ良いところは、それがぶつかってきても痛みをまったく感じないことだ)

■名言を味わう

レゲエ音楽のlegendが動詞hitを使って、音楽の長所を語っています。

直訳すると「音楽についてひとつ良いところは、それがあなたにぶつかってきても、あなたは一切痛みを感じないところだ」となります。

人にぶつかったり、自転車や車など物にぶつかったらもちろん痛みを感じます。でも、音楽の音がぶつかってきても、痛みは感じない。それが音楽の長所だと言っているわけです。

この名言は、実はマーリーのナンバー「Trenchtown Rock」(1971)の冒頭の歌詞です。Trenchtownは、ジャマイカのマリーが育ったエリアで、当時は貧困層が暮らすスラム街だったようです。彼がまだ小さかった1951年に一帯は、ハリケーンで大打撃を受けたそう。

そこから復興する暮らしが決して楽ではなかったことは、想像に難くありません。劣悪な環境で、音楽がいかに大事な現実からのescape(逃避)だったかを表現しているんですね。

「hitをダジャレのように使った」と言いましたが、もしかしたら彼は真剣そのものに、この詞を考えたのかもしれません。

ちなみに曲はこのあと、♪So hit me with music, hit me with music...♪と続きます。

■名言の単語ピックアップ

hit

当たる;ぶつかる;たたく

何度となく目にしたことのある単語かと思います。「ヒットを打つ」「昨日見た映画は久々に大ヒットだった」など、日本語でも日常的に使いますよね。

では、ここでクイズです。動詞hitの活用はどうなるでしょうか? 正解はhit-hit-hitです。過去形でも過去分詞でもhitのままとなりますよ。

もともとhitは、「〜に当たる」という意味です。こういう中学1、2年生で習う単語の大半は、当時覚えた基本的な意味のほかにも、幅広い意味と用途があるもの。ですから、全方位的に使いこなすのが難しい単語、と言えるかもしれません。

まずhitの第一義的な意味としては「当たる」のほかに、「叩く」「殴る」といったものがあります。Don’t hit me.と言えば「私のことを叩かないで(殴らないで)」、He hit me on the head.で「彼は私の頭を叩いた」となります(最初に説明したように、hitはhit-hit-hitと活用しますから、2つ目の例文は過去形になります)。

またhitには、人間が何かを殴るというだけでなくて、何かと何かがぶつかる様、つまり物と物同士の衝突や接触に関しても用いられます。

The car hit the guardrail.(その車はガードレールにぶつかった)

さらに、バットやラケットなどでボールを打つこともhitです。野球で「シングルヒット(単打)を打つ」ならhit a single、「ホームランを打つ」ならhit a home runとなります。

ビジネスの世界でよく使われるhitとしては、まず以下のものが考えられます。

The Dow Jones Industrial Average hit a new low.

(ダウ平均は最低値を記録した)

「〜を記録する」「〜に達する」といった意味でhitが使われています。経済ニュースの見出しなどでもよく目にします。

反対にhit a new highなら「最高値を記録する」になります。ダウのような数値が上下するものに対して使うわけですが、気温などにも使われます。

It was unbelievably hot yesterday. I heard that the temperature hit the highest level in 10 years.

(昨日は信じられないほど暑かったね。この10年で最高水準を記録したって)

また「〜に達する」という意味で、年齢に言及することもできます。

I realized I just couldn’t work all night after I hit 40.

(40になって<過ぎて>、徹夜で働くのはもう無理だって気付いたよ)

また、自然災害などがある地域を「襲う」という意味でもhitは使われます。

An earthquake hit the city last night.

(昨夜その都市を地震が襲った)

さらにhitには、考えが「思い浮かぶ」という意味もあります。A great idea just hit me.と言えば、「私は妙案がぱっと浮かんだ」となります。

この「〜をふと思いつく」という意味では、hit onもあります。前置詞のonと組み合わせて使う形です。例えば、hit on a new ideaと言えば、「新しい考えを思いつく」となります。

I hit on a good idea while I was walking.

(歩いているときにいい考えを思いついた)

We hit on the idea of celebrating the launch of our new product with a big concert.

(我々の新しい製品のローンチを盛大なコンサートで祝うことを思いついた)

上記の例のようにhit onは人間が主語になって、「人間+hit on+物(ideaなど)」という形になります。

いっぽう「思いつく」には、別の言い方occur toもあります。こちらは受験勉強のときに覚えたという人も多いのでは? ただしoccur toの「思いつく」は、hit onとは逆の使い方をします。つまり、A new idea occurred to me suddenly.(急に新しいアイディアを思いついた)のように物が主語となり、「物+occur to+人」という形になるのです。

日本語ではどちらも「思いつく」となるので、同じように使えると思ってしまいがちなhit onとoccur toですが、実際に使う際には明確な違いが生じるのです。日本人ビジネスパーソンの英文Eメールを添削していると、(×)I occurred an idea.や(×)An idea hit on me.のように2つを混同し間違って使っているケースをよく目にします。

このことからもわかるように、語彙増強をするときは例文と一緒に、一文を丸ごと覚えて暗唱できるようにすることが重要になってきます。そうれば、単語やイディオムの部分的意味だけでなく、実際に口にする、文章にする際に、どう言えばいいかがつかめるようになるからです。

ちなみにhit onには、俗語で「(人)にしつこく言いよる、つきまとう」という、あまりよろしくない意味もあります。

He kept hitting on me despite of my cold reaction. In the end, I had to tell him, “Hitting on me will get you nowhere.”

(私の冷たい反応にもかかわらず彼は言いより続けた。だから最後には「私を口説いてもどうしようもありませんよ」と彼に言わなきゃならなかった)

では最後に、音楽の話で動詞hitを使う場合の意味を紹介しましょう。音楽の場合のhitは「音を出す、鳴らす」という意味になります。

「正しい音を出す(鳴らす)」は、hit the right noteと言います。反対に「音を外す」はhit the wrong noteです(noteはnotesと表記されることも)。

ここから転じてhit the right noteは「適切な発言をする、場にふさわしい行動を取る」、hit the wrong noteは「見当違いな発言をする、場違いな振る舞いをする」といった意味になります。

Our CEO managed to hit just the right note in his speech. Everybody was impressed.

(我々のCEOは、それは素晴らしいスピーチをした。みんなが感銘を受けた)

■名言を解剖する

One good thing about music, when it hits you, you feel no pain.

(音楽のひとつ良いところは、それがぶつかってきても痛みをまったく感じないことだ)

今回の名言、実は文法的には正しくないというかincomplete(不完全な)一文です。

one good thing about musicで「音楽について1つのいいこと」ですね。このあと、本来であれば述語動詞の「は」に当たるis が欲しい。さらに後続に文をつなげるためのthat節のthatも欲しいところです。

つまり完全な文にするなら、以下のようになります。

One good thing about music is that when it hits you, you feel no pain.

ただこの名言は曲の歌詞なので、リズム重視でis thatを省いているということでしょう。このように歌詞では、歌のリズムをよくするために完全な文を構成するための要素を省くことが往々にしてあります。

is thatがあると考えた場合、冒頭からis thatまでが大きな名詞節になるわけです。そして、そのthat節の中にwhen it hits you(音楽があなたと出会うとき)がありますね。これはwhenからyouまでの部分が、カンマとカンマで挿入されていると考えればいいでしょう。

最後はyou feel no pain(痛みはまったく感じない)とあります。「痛みを感じる」はfeel painですから、とっさに言えるようにしておいて。ちなみに、No pain, no gain.(労なくして益なし)とAll pain and no gain.(労多くして功少なし)は英語でもしばしば目にする格言なので、こちらも覚えておきましょう。

名言内に2度出てくるyouは、「あなた」でも、総称的に一般の人をさして「人」としてもどちらでもOKでしょう。ただ日本語ではなくても通じるので、和訳ではyouは一切訳出していません。

■今週の1枚

フィリピンのセブ島に滞在中に足を運んだ、ギャラリーのような施設の庭で撮った1枚です。ハープ奏者が奏でる音色は、それはもうhit the right noteだったので、心地よい撮影タイムとなりました。

さて次週(4月20日更新予定)の「やる気が出る名言で学ぶビジネス英語」は、あのウォルト・ディズニーの言葉をフィーチャー。彼が考える、世界で一番美しい花の定義は、この大変な時期にこそ紹介したい一言です。

どうぞお楽しみに。See you next week!

(構成・山本航)

■「やる気が出る名言で学ぶビジネス英語」は毎週月曜朝に配信します。