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サンゴがなくなったら沖縄はどうなる? 科学者が発する警鐘

美ら島の国境なき科学者たち
オーストラリア グレートバリアリーフのサンゴ礁(提供:Tane Sinclair-Taylor)

サンゴ礁がゴーストタウンに?

美しいサンゴ礁に囲まれた沖縄。色とりどりの熱帯魚や可愛らしいウミガメに出会うために、国内外から多くの観光客がこの場所を訪れています。ニュージーランド出身で海洋生物を専攻した筆者も、この比類なき海の生態系には圧倒されています。

沖縄の漁業や主要産業である観光業はサンゴ礁とは切っても切れない関係にあり、文化もまたそうです。例えば食文化。沖縄料理店に行けば、必ずといっていいほど、高級魚として知られるハタの料理がメニューに載っています。こうしたサンゴ礁で採れる魚も、昔から地元で食されてきたことでしょう。

しかし、この数十年の間に、沖縄周辺のサンゴ礁は変化しています。沿岸部の開発による堆積物がサンゴ礁のある海に流れ込んでいるのです。こうしたことが気候変動と相まって、これまでにないレベルのストレスをサンゴの生態系に与えています。健康だったサンゴはゆっくりと白くゴーストのように変わっていってしまうのです。

OISTで働くティム・ラヴァシ教授は、サンゴ礁の生態系を専門とする海洋科学者です。大学で生物学を学んだ後、オーストラリアで博士研究員として熱帯魚がバクテリアにどのように反応するかを調べました。また、今後予想される熱波や堆積物の増加、海洋酸性化に熱帯魚がどのように対処するのかを研究し始めました。彼は現在、太平洋全体の魚群集を調べ、オーストラリアのグレートバリアリーフ、人里離れたメラネシア、そして沖縄で研究を行っています。

ティムは研究の一環として、地域のコミュニティと協力することで、変化する海洋条件に対して地元の人々からの理解と協力を得られるように取り組んでいます。写真は彼と研究チームがパプアニューギニアの地元の人々に研究を紹介しているところ。(提供:OIST Tim Ravasi)

3月の初め、ティムは、彼の率いる海洋気候変動ユニットのメンバーと一緒にニューカレドニアへ2週間の実地調査に出発しました。

南太平洋調査隊として出国するOIST海洋気候変動ユニットのメンバーたち(左)と、パプアニューギニアで活動するメンバー(右)(提供:OIST Tim Ravasi)

「私のチームは、沖縄だけでなく、より広い太平洋全体においても研究を行っています。海に潜って、さまざまな魚の種類と数を確認し、毎年同じ場所に戻ってモニタリングすると、それらがどのように変化しているかを確認できます。また、OISTのマリン・サイエンス・ステーションにも水槽を設置して魚を飼育しています」

水槽では主にクマノミとハタを飼育しています。ティムは、これらの魚が将来の海洋環境にどのように反応するかを確認するために、未来を想定して温度やCO2レベルなどの特定の条件を変化させています。

「温度を上げると、クマノミの成長が遅くなり、繁殖が難しくなることがわかりました。基本的に、彼らは生き残ることはできますが、苦しむことになります。しかし興味深いのは、その次の世代はこれらの暖かい温度条件に適応する傾向があるということです」

グレートバリアリーフで白化したサンゴとイソギンチャクに隠れるクマノミ

ティムとチームは現在、これらの魚がどのように情報を次世代に伝えているのかを研究していますが、これ自体は魚が危険にさらされていることを意味するものではないと言います。「次なる質問は、サンゴ礁が死滅した場合に魚に何が起こるかです。サンゴは彼らに隠れ場所と卵を産む場所を提供します。それが消えれば、彼らはすぐに追随してしまうでしょう」

ティムはさらに、私たち人間によってサンゴに与える影響を研究するのに最適な場所は沖縄だと考えています。それは、最近見受けられる沿岸部での開発ブーム、熱波の増加、サンゴ礁へのアクセスのしやすさなどがあるからです。

「現在発生している熱波の頻度に注意を払う必要があります。 2016年にオーストラリア北部で熱波が発生しましたが、これは史上最長の温度異常で、グレートバリアリーフのサンゴの75%が白化しました。数ヶ月後、さらに別の小さな熱波があり、白化したサンゴには、最初の熱波から回復する時間がありませんでした。その結果、その多くは死んでしまったのです」

左の白化したサンゴは、右の健康なサンゴと比較して白く、ゴーストのように見えます。

沖縄のサンゴも、白化の影響を免れません。2016年、石垣島と西表島の間に広がる日本最大のサンゴ礁である石西礁湖のサンゴの約90%が白化の被害を受けました。しかし、沖縄本島において、ティムが最も心配しているのは気候変動ではなく観光による開発です。

「過去50年間にホテルの建設ブームがありました」とティムは説明します。「OISTからほど近い海にはまだサンゴ礁がありますが、以前ほど健康的ではありません。私たちにできる最善策は、沿岸開発を止めることです。より持続可能な方法でインフラ開発できれば、サンゴ礁は回復するでしょう」

ティムは、調査に加えて島全体の学校を訪問し、沖縄の将来に影響を与える問題を生徒たちに認識してもらう活動を行っています。さらに、ダイビングショップへの普及活動も考えています。

「いつもショックを受けるのが、沖縄本島の人気のダイビングスポットに行くと、あまりにも多くの人がダイビングやシュノーケリングをしていることです。彼らがサンゴ礁に触れたり、堆積物を蹴ったりすると、サンゴを損傷する可能性があります。沖縄のダイビング産業は急速に成長しています。私たちはダイビングショップと話をして、この状態が続くようであれば、将来的に観光客を連れて行くスポットがなくなってしまうことを理解してもらいたいと考えています」

インタビューの最後に、私はティムに、サンゴ礁について世界に知ってもらいたいことは何かと尋ねました。彼は少し考え、こう答えてくれました。

「サンゴが危険にさらされていることを世界に知らせたい」と。

健康的なサンゴ礁と白化したサンゴ礁(提供:Tim Ravasi、Bridie Allen)

「サンゴ礁は赤道の周りに生息しており、温度変化がほとんどない環境に適応しています。海の温度が上昇するにつれて、サンゴ礁は人類が失ってしまう最初の生態系の1つとなってしまうでしょう。サンゴ礁という生態系に頼りきっているとも言える沖縄の人々の生活は、それがなくなったときどうなるのでしょうか?」

ティムに話を聞く筆者のルーシー

(OIST広報メディアセクション ルーシー・エリザベス・ディッキー)