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新型コロナウイルスが広がるヨーロッパ そんななかでの「楽しみ方」と「助け合い」

ニッポンあれやこれや ~“日独ハーフ”サンドラの視点~ 

新型コロナウイルスについて、アジアでの感染が落ち着きを見せてきているなか、ヨーロッパでは感染が広がり続けています。ドイツでは致死率こそ0.3%にとどまっているものの感染者は2万人を越えています。感染者が急激に増えたのは2月末のFasching(ドイツのカーニバル)で大勢の人が集まったことが一因だとされています。もともとは仮装をすることで「冬」や「悪いもの」を追い払う意味があったこの祭りによって感染が広がるという皮肉な結果になってしまいました。詳しくは後述しますが、ドイツでは現在3人以上のグループでの外出は禁止されています。イタリアでは6千人以上が死亡し、感染者は現在6万人を超えています。

そんな緊迫した状況のなかでも「楽しみ」をみつける人々の姿が世界に希望を与えています。

イタリア流の「サービス精神」 困難な状況の中でも身近なところで見つける楽しみ

とくにイタリア発の「クスッと笑えるほのぼのとする動画」がSNSでは多く出回っています。これは濃厚接触は避けるため、いつものようなハグではなく、互いの身体からなるべく距離を取り「足で挨拶する」男性たちです。互いから離れようとしながら、片足で相手のつま先をタッチしようとするので、よろけそうになっていますが、バランスを崩しそうになりながらも、実に楽しそうです。

その後、イタリア全土で外出禁止令が出てからは、自宅にあるトイレットペーパーとパスタでフェラーリを作った写真がSNSで拡散されており、なんだかほっこりします。確かに長期間家の中にこもらなければいけないと退屈しますが、こういうところでクリエイティブになれれば、人生も楽しそうです。

そして、こちらは同じ「一人遊び」でもちょっとシュールです。お酒は飲みたいけれど、人とは会えない、だから鏡を使って何人もの「自分」と乾杯をして社交を楽しむ男性です。

次は家族総出で撮ったと思われる動画です。「もう我慢できないから、俺はコーヒーを飲みに行くよ」とコートを着てお出かけの準備を始めるお父さん。見ている誰もがドキッとさせられます。

最後で動画を撮ったと思われる娘さんのいたずらっ子のような笑顔が何ともかわいらしいです。こういう時代だからこそ、人生にはこういう遊び心が必要なのだと考えさせられます。

オペラ歌手が自身の家のベランダから熱唱する姿は日本でも話題になりました。これぞほんとうの意味でのサービス精神なのかもしれません。ちなみに筆者のお気に入りはシチリアで地元のフォークソング“Ciuri,ciuri“(和訳:花、花)を歌う集合住宅の人々です。ベランダからタンバリンを鳴らす人、アコーディオンで伴奏をする人。アメリカで銃弾の買い定めも起きているなか、歌うことで希望を持つ彼らに対してSNSでは応援のコメントが多く見られます。

ドイツでの合言葉は #BleibtZuhause(「家にいよう」)

そんな世界で大好評のイタリアのベランダの住民音楽祭ですが、先日、「もし場所を変えて『ドイツ』のベランダで歌ったらどうなるだろうか?」とシミュレーションをした動画がSNSで公開されました。「隔離生活 ドイツの場合」という名のこの動画では、ベランダからNenaの“99 Luftballons“(「ロックバルーンは99」)の出だしを歌ったところで、集合住宅の色んな部屋から「黙れ!」「警察、呼ぶぞ」などの怒号が飛び交います。「本物ではなく、作った動画だとはいえ、本当に(ドイツは)その通り!」とのコメントが多く見られました。

ところで現在イタリアでの合言葉は“Andrà tutto bene“(和訳:「きっとすべてうまく行く」)ですが、ドイツの合言葉は #BleibtZuhause(直訳すると「家にいろ」ですが、意味は「家にいよう」)です。メルケル首相が3月18日の国民に向けたスピーチの中で、人との接触を最小限に抑えるよう呼びかけました。現在ドイツでは外出制限令が出ており、外出が全く不可能なわけではありませんが、基本的には家族やパートナー、同居している人との外出のみが可能です。友人など3人以上での外出は認められていません。逆に、健康維持のために一人で散歩に出かけたり、ジョギングをしたり、サイクリングをすることは認められています。ただし、その際は人とすれ違う際、少なくとも1.5mの距離をとることが求められています。誤解されがちなのですが、ドイツの場合は外出が「禁止」されているわけではなく「制限」されているため、レジャー目的での外出は認められていないものの、レストランで食事をテイクアウトで持ち帰ることは可能ですし、スーパーマーケットでの買い物も認められています。

ドイツでは一部の若者が「コロナパーティー」と称して大勢で集まるなど悪ふざけや不注意も目立ったため、感染の拡大が懸念されています。また政府が外出制限を設けたことで、「今後これを機に、国が市民の自由や権利を奪い、国による締め付けが厳しくなるのではないか」という誤解をしている人もいるため、ドイツ政府は「デマを信じないでください」と呼びかけています。

今までドイツ人にとって死に至る可能性のある重い感染症というと「遠い国の話」であったために、リアルに現在のドイツの危機を受け止めることができないでいる人も目立ちます。そんな状況を受け、エッセンの大学病院に勤める医療関係者の「家にいよう」の動画が話題になっています。動画では医療関係者が“Wir bleiben für euch da! Bleibt ihr bitte für uns daheim!“(和訳: 私達(医療関係者)は貴方のために、これからもここにいます!だから貴方は私達のために、家にいてください!)と呼びかけています。

それでも忘れない「助け合いの精神」

ドイツには多くのトルコ系住民が住んでおり、ドイツ語が堪能な人ばかりではありません。そんな人たちのためにドイツの高級誌「シュピーゲル」がオンラインで最新のコロナウイルス情報をトルコ語で発信し始めました。

また一人暮らしの高齢者など、様々な事情から家族や友人に頼ることができない人やのために、買い物のサポートをするなど、昔ながらの#Nachbarschaftschallenge(ご近所さん助け合い)をする動きもあります。たとえばこちらはミュンヘンの警察がインターネットで公開している「助け合いの用紙」です。住民はこの用紙をプリントアウトし、「私はこういう内容のサポートができます」と自分の連絡先とともに書き込み、集合住宅などの伝言板に貼ります。サポート内容は「犬の散歩の代行」「薬局やスーパーマーケットでの買い物の代行」などです。またサポートが必要とする人も同様に用紙に書き込みをして貼り出すことができます。

ミュンヘン警察による「助け合いの用紙」。「互いをサポートする際に、衛生に気をつけ他人の健康を害さないように」と注意書きも。

またCoronaportというサイトでもドイツの地域別で人をサポートしたり、逆にサポートを探すことができます。ただドイツでも高齢者はインターネットができる人ばかりではありませんから、そういう人にとっては、上記のミュンヘン警察が掲示しているような「昔ながらの伝言板に紙を貼るスタイル」が現実的なのかもしれません。

終わりが見えない新型コロナウイルスの猛威。収束はまだ先になりそうですが、それぞれの「国民性」のようなものも大事にしながら「助け合い」や「楽しむ」ことを忘れないでいたいものです。