億単位の物件が一括払いで売れていく 様変わりしたニセコの風景
スキー場に向かう「ひらふ坂」の周りに、コンクリート打ちっ放しの瀟洒なホテルやコンドミニアムが立ち並ぶ。店の看板はほぼすべて英語、街を歩いても居酒屋に入っても、聞こえてくるのは英語ばかりで、ときおり中国語。ニセコの「公用語」は英語なのだ。(星野眞三雄、写真も)
1月に訪れると、満室のホテルが多く、空いている部屋は1泊100万円を超えるところもあった。やっと見つけたホテルは、チェックインからチェックアウトまですべて英語。フロント係もレストランの店員もほとんどがオーストラリアやニュージーランド人だった。
ゲレンデのレストランは、カニラーメンが2800円、担々麺が1900円。高いが、外国人が行列をつくる。街のコンビニにはドンペリが2万6180円で売られていた。
ホテルや飲食店の入り口に、分厚い英語の冊子が置いてある。不動産情報が満載で、土地や別荘、コンドミニアムの写真に「¥560,000,000」(5億6000万円)などとゼロがいくつも並ぶ価格が書いてある。
タクシーの運転手は「10年前と比べるとまったく違う街になった」と苦笑いする。1980年代のブームでペンション建設が相次いだが、バブル崩壊でスキー客は激減、ペンションも廃業が続いた。2000年代に入り、オーストラリアやニュージーランドのスキー客が口コミで増え、オーストラリアや香港など外資によるホテルやコンドミニアムの建設ラッシュが起きた。
超高級ホテルの開業も相次ぐ。パークハイアットが今年1月にオープン。来シーズンにはリッツ・カールトンが続く。
ニセコエリアの倶知安町の地価上昇率は19年で前年比42%と全国でダントツの1位だ。
不動産業者のクレイグ・ミークル(48)がニュージーランドからニセコに来たのは24年前のことだ。12年前から不動産会社で働くようになり、4年前に独立した。
・80~90平方メートルの2LDK……1億2000万~1億8000万円
・120~150平方メートルの3LDK……2億~3億円
都心の人気エリアに匹敵する高額物件が売れる。相手は、香港やシンガポール、タイ、台湾などで、最近は中国本土の客も増えてきた。「一括払いで買う。ローンを組む人はいない」
そんな外国人の外国人による外国人のための日本のリゾート地。どんなにバブっても、地元に落ちるお金は微々たるものだ。倶知安町は地価上昇に伴い固定資産税は増えたが、かわりに地方交付税が減ったため、昨年11月に2%の宿泊税を導入した。