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異次元の金融緩和で危うさ増した「国債バブル」 市場のゆがみ、株も為替も

World Now
金利がマイナスになった10年物国債(2016年12月)

日本は1100兆円もの借金を抱える。国内総生産(GDP)の2倍にのぼる途方もない額だ。そのうえ税収を大きく上回る100兆円の予算を組み、毎年30兆円以上の新たな国債を発行して借金を重ねている。国債の元本と利息の返済は年間20兆円を超え、税収だけでは足りないので、借金を返すために借金をしないといけない状況だ。

とても返せない額のお金を借りているのに、また新たな借金をする場合、返せるあてはますます小さくなるので、ふつうは高い金利を払わなければ借りられない。返してもらえない恐れがあるから、貸したがる人は少なくなるはずだ。

ところが、まったく逆の現象が国債市場で起きている。日本国債を欲しがる人が多く、国債の価格が上がって金利が低くなり、10年物国債までマイナス金利になっているのだ。

マイナス金利とは、額面より高い価格で買われているということだ。たとえば100円の国債を110円で買うと、満期には100円しか返ってこないので損をする。満期まで持っていると損になるので、ふつうは途中で売るが、買った価格よりも高く売れれば利益が出る。買ったときよりも高く売れると思うから、額面より高くても(マイナス金利でも)買う人がいるという面もある。

旧大蔵省出身で慶応大大学院准教授の小幡績(52)は、こんな日本国債市場を「ハイブリッド・バブル」と名づけた。市場には、「国債が紙くずになる」という財政破綻リスクに目をつぶる投資家もいれば、リスクを合理的に判断する投資家もいる。楽観派にとって国債価格は安すぎ、合理派には高すぎる。それが結果的に均衡をつくり、暴落すると言われ続けた日本国債が20年以上、高値で安定してきた(低金利が続いてきた)という。

ところが、日本銀行が2013年に始めた「異次元の金融緩和」で大量の国債を買ったことから、「ハイブリッド・バブルと日銀買い入れバブルが融合して、さらにハイブリッド化したバブルは、典型的なバブルとなり、崩壊するリスクが高まった」と分析する。

小幡績・慶応大大学院准教授

日銀という圧倒的な巨大プレーヤーが巨額の国債を買うことによって、「値段が高くても日銀が買ってくれる」と国債を求める人が多くなる。その結果、金融市場の値づけ、資金配分、リスク配分がゆがめられていく。小幡は「金融市場を機能不全に陥れ、資本の最適配分が経済全体でなされないことになり、日本経済の安楽死につながる」と指摘する。

クレディ・スイス証券チーフエコノミストの白川浩道(59)も、行き過ぎた金融緩和が国債市場をゆがめているとみる。「国債残高1000兆円弱のうち500兆円近くを持つ日銀は、国債を売らず、永遠に借り換えを続けるので、市場に出てこない。市場は、政府の借金が半分消えたと同じことだととらえている。だから金利が下がり、国債の価格形成をゆがめている。国債価格がゆがんでいるということは、為替も株価も不動産価格もゆがんでいることを意味する」

白川浩道・クレディ・スイス証券チーフエコノミスト

日本の低成長、低インフレ、低金利の「3低セット」の行く末を、白川は懸念する。「いずれ欧州、米国、中国も日本と同じようになるはずだ。マイナス金利が続けば、民間銀行の預金にもマイナス金利がつくようになり、現金だけがゼロ金利となる。中央銀行がデジタル通貨を発行して現金にマイナス金利をつけなければ、預金を現金に換える人が銀行に殺到し、金融システムが崩壊するかもしれない」