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米国目指す移民、迫真の現場取材 ボーン・上田賞にGLOBE村山祐介記者

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ダンプカーのキャビンの屋根に腰掛けて、遠くを見つめる母子=2019年2月、メキシコ・グアダラハラ郊外、村山祐介

国際理解に貢献したジャーナリストに贈られる2019年度のボーン・上田記念国際記者賞に、朝日新聞の日曜別刷り「GLOBE」とウェブメディア「GLOBE+」で米国を目指す移民たちをルポしてきた村山祐介記者(48)が選ばれました。
村山記者は、GLOBE編集部員として、2017年から19年まで、足かけ2年間をかけて米州大陸の7カ国を取材。子どもを連れて国を逃れるしかない移民の実情に迫る一方で、中米パナマと南米コロンビアを分断する危険な密林「ダリエン・ギャップ」が、政情不安の続くカメルーンや、キューバ、インドなど約50カ国に及ぶ世界中の国々からの移民を引き寄せる新たなルートになっていることも明らかにしました。こうした点が、「記者魂を実感させるような体を張った粘り強い取材」「欧州諸国が難民締め出しを始めたあと、このルートがグローバルな移民、難民の新たなルートとなっていることを突き止めたことは、注目に値する」などと評価されました。
村山祐介記者

村山記者は特集「壁がつくる世界」(2017年10月号)で米国とメキシコの国境3200キロをたどったのをきっかけに、2作目の「『野獣』という名の列車をたどって」(18年3月号)では移民たちが乗る貨物列車のルートをさかのぼり、マラスと呼ばれるギャングに脅されて国を逃れる家族たちの命がけの旅路を描きました。3作目の「エクソダス~壁を越える移民集団」(19年5月号)では、集団化して力を持った移民集団「キャラバン」に同行。密林「ダリエン・ギャップ」を経由して米国を目指す新ルートの実態に迫りました。GLOBE+限定の数々のオリジナル記事でも、治安悪化や貧困という「負の連鎖」に絡め取られる移民の「出身国」の実情や、苦しいなかでも「できることからやっていこう」と生きる人々の生きざまを丹念に描いてきました。

「野獣」と呼ばれる貨物列車に乗る移民たち=メキシコ中部コルドバ近郊、村山祐介撮影

■動画でドキュメンタリー賞受賞も

村山記者は取材中、自ら動画も撮影。「報道ステーション」(テレビ朝日系)やインターネットテレビのAbemaTVでドキュメンタリー番組として放送されました。AbemaTVと共同で制作した「『野獣』という名の列車をたどって」では、一般社団法人全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)による「第34回ATP賞テレビグランプリ」の「ドキュメンタリー部門」で奨励賞を受賞し、新聞記者の撮影による番組の受賞は異例だと注目されました。今回の受賞でも「多様なメディア、媒体を駆使して、幅広い読者、視聴者に情報提供した報道の姿勢も特筆に値する」と評価されています。

ヒッチハイクに成功したトレーラーの荷台に乗り込む移民たち=メキシコ・アバソロ郊外

【村山記者の取材記】人はなぜ壁を越えるのか 取材2年、見えた現実