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移住者と地元住民の摩擦、ここでも 大豆畑をめぐるメキシコの争い

世界報道写真展から――その瞬間、私は
Nadia Shira Cohen

メキシコの南東部カンペチェ州で、大豆の栽培が大規模に行われている。政府が補助金を提供し、大豆の生産を推奨すると、プロテスタントの一派「メノナイト」が移り住み、生計を立てるようになった。

写真にうつる10歳の少年もその一人。メノナイトの象徴ともいえるカウボーイハットにオーバーオール姿で、父親のトラックの荷台に乗り、畑を行き来する。足元には、収穫したての大豆が積まれている。

撮影したアメリカ人の写真家ナディア・シラ・コーヘン(42)は「7歳の子がトラクターを操作するのも見たし、子どもたちは皆、両親を手伝っていた。生き残るため、幼いうちから農業技術を学ぶの」と話す。

この地は、養蜂業の歴史も長い。マヤ文明時代の祖先をルーツにするマヤ族は、約3000年前からハチミツを作ってきた。針のないミツバチを用いた有機栽培のハチミツはブランド価値も高く、9割はヨーロッパに輸出されてきた。しかし、遺伝子組み換え(GM)大豆の栽培が広まると、養蜂家の生活を脅かし始めた。ハチミツからGM大豆の花粉が検出され、EUが輸入を禁止したことも。風評被害で価格も下がっているという。

大豆の耕作地の拡大に伴い、この地域は過去10年、メキシコで最も大がかりな森林伐採が行われた。除草剤による健康被害も懸念されていることから、養蜂家や環境団体の抗議活動が過熱。裁判所が耕作地の拡大許可を取り消す判決を下す事態にまで発展した。コーヘンは「生物多様性、伝統文化を脅かされる地元住民の怒りと、大家族で生き抜くため、費用対効果を考えて農業を続けるメノナイトたち。視覚的に訴えることで環境について考えてほしかった」と話す。

■マヤのハチミツ、貴重な甘味

古代から貴重な甘味として、交易品の一つとなっていた。薬としても用いられ、儀式にも欠かせなかった。ハチミツと薬草を混ぜて、臨月を迎えた妊婦に塗って痛みをやわらげたり、樹皮や木の皮とハチミツを入れて煎じて飲んだり、ハチミツとハーブを合わせてアロマの代わりにしたり。眼病や腹痛にも用いられてきたといい、日常生活に密着した存在だ。

伝統的な製法は非経済的なため、収穫量が多く効率的な西洋ミツバチを用いての栽培が盛んになった時期もあったが、地元の人々の根強い活動によって再開された。(本間沙織)