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ポン・ジュノ監督「パラサイト」とキム・ギヨン監督「下女」に描かれた韓国社会の「構造」

現地発 韓国エンタメ事情
「パラサイト 半地下の家族」©2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

「『パラサイト』、めちゃくちゃおもしろい。韓国映画、ほんまにすごいな」

先日、試写会で「パラサイト 半地下の家族」を見たという先輩記者からメッセージが来た。最近、「韓国映画おもしろい!」と興奮して話す日本の男性が増えてきたように感じる。韓流ブームは「冬のソナタ」を皮切りにドラマファンの中高年女性中心に始まり、K-POPファンの若い世代に拡大したが、映画はブームというほどには日本で支持されてこなかった。「パラサイト」への熱い視線は、これまでの韓流ブームとは別の「映画好き」の層に着実に広まっているようだ。

5月のカンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞したポン・ジュノ監督の「パラサイト」が、いよいよ日本でも公開される。12月27日に東京、大阪の一部劇場で先行公開後、来年1月10日、全国で公開される。

韓国ではカンヌ受賞後の熱気冷めやらぬうちに公開され、1000万人を超える観客を動員した。「パラサイト」の世界各地での興行成績や受賞に関するニュースは年末の今に至るまで続き、来年1月に発表される第92回アカデミー賞の国際長編映画賞受賞の期待も高まっている。

「パラサイト 半地下の家族」©2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

ところで、私は最初に「パラサイト」を見た時、キム・ギヨン監督の「下女」(1960)がすぐに浮かんだ。貧富の格差が描かれている、とか、家政婦(下女)が出てくる、というだけでない。その見せ方だ。視覚的にはっきりと階段や土地の高低でその格差が描かれている。

今年は韓国映画100周年の年だった。韓国内の各映画祭で100周年企画があったが、過去の監督や作品を振り返る中で最もよく登場するのは、キム・ギヨン監督、そして「下女」だったように思う。それほど、韓国映画の中でも特別な存在感の作品だ。ポン・ジュノ監督も故キム・ギヨン監督を尊敬しているとたびたび言及し、「パラサイト」に関するインタビュー(韓国日報)でも「たぶんキム・ギヨン監督に影響を受けていると思う。監督が生きていらしたら、『パラサイト』をお見せしたかった」と話していた。

「下女」では、中産層の家庭に下女が入り、住み込みで働く。下女は夫を誘惑して関係を持ち、妊娠する。周りに知られて職を失うことを恐れる夫婦は、下女の言いなりに。下女が2階に暮らし、妻は1階で下女のように働くという立場の逆転が起こる。映画の中で起こる多くの事件は階段が舞台だ。

一方の「パラサイト」は、さらに進化したとも言える。「ネタバレ厳禁」のため、詳細は書けないが、「パラサイト」の階段は家の中に留まらない。小高い高級住宅地に住むパク社長(イ・ソンギュン)一家とは対照的に、パク社長の娘の家庭教師になるギウ(チェ・ウシク)の家族が住むのは土地も低く、大雨で浸水するような半地下だ。

半地下といえば、私自身、最初に留学した2002年に住んだ下宿の部屋が半地下だった。大学の紹介で、選択肢はなかった。入ってまず思ったのは「大雨の時大丈夫かな?」だった。床に座れば、目線の上に窓から道路がのぞき、道行く人の足元だけが見えた。気持ちが滅入るので、ほとんど寝るためだけに帰り、しばらく我慢して引っ越した。知人の中には半地下に住んでいて、実際大雨で浸かった経験者もいる。

映画の中でたびたび言及される「半地下の匂い」は、窓から入ってくる日光の乏しさゆえだろう。ギウが、パク社長の家の庭に寝っ転がって読書するシーンがある。燦燦と輝く太陽のもと。半地下に住むギウにとっては最高の贅沢だったかもしれない。

「下女」と「パラサイト」、この2作品は韓国映画の代表作として歴史に残るだろう。単に共通点が見られるだけではない。階段という装置で見せた「身分上昇」の欲求は、韓国映画に色濃く映る韓国社会でもある。ソウルの不動産高騰、加熱する教育熱など、今の韓国が抱える問題の根底には、強い上昇志向と、それを阻もうとする既得権の構造が見える。ポン・ジュノ監督はそれをブラックコメディーとして、超一級のエンターテインメントに仕立て上げた。