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「モリー先生との火曜日」著者が恩師から学んだ人生観

やる気が出る名言で学ぶビジネス英語 更新日: 公開日:
安河内哲也撮影

■今週の名言

You’re not a wave, you’re a part of the ocean.

(あなたは1つの波ではなくて、大海の一部なんだ)

【動画】ミッチ・アルボムの名言を安河内先生が解説

■名言を味わう

「1つの波ではなくて、大海の一部だ」……。「1つの波」と「大海の一部」は同じことを言っているようで、物の捉え方がマクロとミクロでかなり違った印象になりますね。クローズアップでなら大きくて立派な波も、引きで見れば大海原のほんのちっぽけな一部に過ぎなくなるのです。

私たち人間の世界に置き換えてみても、1人の人間は、家族の、地域の、会社の、社会の、国の、世界の一部なんだと、この名言は意識させてくれるのではないでしょうか。

「自分はちっぽけで取るに足らない存在だ」と卑下する必要は決してないと思うのですが、「〜の一部に過ぎない」と認識することで謙虚な気持ちになれるのは確かですし、日々の悩みなども軽減できるのかもしれません。

自分にあまりにもフォーカスしすぎると、仕事やプライベートで課題が山積みのように思ってしまいがち。でも地球、はたまた宇宙レベルで見れば全然大したことじゃない! 少なくとも私はこう考えることで、くよくよ悩やまずに済む気がしてくるのです。

ビジネスに目を向けてみましょう。英語では会社をcompanyと言いますが、companyには仲間という意味もあります。そう、人が集まってcompanyは形成されるんですよね。

能力があってたくさんのことを単独で実行できる人ほど、「会社を動かしているのはオレ!」みたいに勘違いしてしまいがち。でも、実際にはいろんな能力を持った人たちが、お互いできないことを補完し助け合う形でこそ、会社はうまく機能していけるのです。

■名言の単語ピックアップ

wave
波、起伏、うねり(名詞) 波打つ、揺れる、手を振る(動詞)

waveは、もちろん波のことです。big waveなら「大波」、small waveなら「小波」となります。

このwaveは「感情の波」や「形成の高まり」のような比喩的な使い方をされることも多々あります。「ニューウェーブ」と日本語にもなっているnew waveは、「新しい波→新傾向→ヌーベルバーグ」のこと。音楽や映画など、芸術の新しいジャンルを指す言葉としてよく使われます。

新しいスタイルやトレンドは、日本語でも「流行の波」と言ったりしますから、似たような感覚と言ってもいいでしょう。

また、heat wave(酷暑、猛暑)とcrime wave(犯罪の急増)、wave length(波長、個人の物の考え方)は、waveとよくセットで使われるので覚えておきましょう。

それでは、ビジネスの世界での使用例を見ていきましょう。

There might be another wave of layoffs coming next year.

(来年また解雇の波が押し寄せるかもしれない)

*layoffは「解雇」のこと。another(別の、ほかの)とあるので、a wave of layoffsが既にあったと推測できる。

さらに、make waves(波風を立てる、ことを荒立てる)はとてもよく使うイディオムです。Don’t make waves.で「波風を立てるな」という意味ですが、「出る杭は打たれる」と、ことわざふうに意訳されることもあります。

ビジネスシーンでの用例ならこんな感じでしょうか。

Mr. Smith doesn’t usually like to make waves, but this time he felt he had to say something to his boss.

(スミスさんは普段ことを荒立てるのを好まないが、今回ばかりはボスに何か言わなければと思った)

*「波風を立てる」という意味のイディオムではmake wavesとwaveは必ず複数形となる。

ここまでは、名言と同じく名詞としてのwaveをおさらいしましたが、次に動詞としての意味を見てみましょう。

まずは、「手を振る」と言う意味です。「握手する」はshake handsとすぐ言えると思うのですが、waveを使った「手を振る」は、意外ととっさには出てこないのでは?

以下のように使いますので、瞬時に口をついて出てくるよう何度も音読練習をしてみてください。

She was waving her hand (at me).

(彼女は<私に>手を振っていた)

She waved goodbye to me.

(彼女は私にさよならと手を振った)

She waved hello.

(彼女は手を振って挨拶した)

She waved to greet me.

(彼女は私に手を振って挨拶した)

*wave one’s handで「人が手を振る」。単純にさよならと言うのであればsay goodbyeでOKだが、手を振る動作込みでさよならと表現する場合は、wave goodbye。wave helloは「手を振って挨拶する」。

ほかに「揺れる」という意味もあります。

例:The branches waved in the breeze.

(その枝がそよ風に揺れた)

■名言を解剖する

You’re not a wave, you’re a part of the ocean.

(あなたは1つの波ではなくて、大海の一部なんだ)

be動詞の文章が2つ続く、シンプルな一文です。最初にnotと否定形を持ってきて次を平叙文にすることで、「〜でなくて〜だ」と明確に説明するパターンです。

「〜の一部」と英語で言いたいときは、a part of...を使います。 a part of living(生活の一部)、a part of Japanese culture(日本文化の一部)などと言ったりします。

文法説明があっという間に終わってしまったので、今回は名言のロングバージョンをご紹介します。

アルボムの名言、実は彼のベストセラー「モリー先生との火曜日」の一説に出てくる、波の小話の最後の一節なんです。登場する2つの波はセリフがあってしゃべるんですよ。

短くて簡単な文ですので、和訳付きで掲載します。小話を丸ごと読んでもらえれば、名言をより一層楽しめると思うので、Please check it out!

“The story is about a little wave, bobbing along in the ocean, having a grand old time. He's enjoying the wind and the fresh air-until he notices the other waves in front of him, crashing against the shore. "My God, this is terrible," the wave says. "Look what's going to happen to me!" Then along comes another wave. It sees the first wave, looking grim, and it says to him, "Why do you look so sad?" The first wave says, "You don't understand! We're all going to crash! All of us waves are going to be nothing! Isn't it terrible?" The second wave says, "No, you don't understand. You're not a wave, you're part of the ocean.”

(上に下にと波打ち、昔ながらのすてきな時間を過ごしている、ある小波のお話である。彼は風と新鮮な空気を満喫していた、前を行く波たちが海岸に衝突するのに気付くまでは。「何てこった、ひどいもんだな」と小波は言う。「僕に何が起こるのか見てくれ!」。そこへもう1つ別の波がやって来る。別の波は最初の波が険しい表情をしているのを見て「どうしてそんなに悲しそうなの?」と尋ねる。最初の波は「君にはわからないのさ。僕ら波はみんな岸にぶつかって消えてしまうんだ。ひどいもんだろ?」と言う。2番目の波は、「わかってないのは君のほうさ。君は波なんかじゃなくて海の一部なんだよ」と言うのだった)

■今週の1枚

北海道の十勝川の河口に位置する豊頃町にある大津海岸で撮りました。ここのビーチは冬になるとジュエリーアイスと呼ばれる、美しい氷の塊が打ち上げられることで有名なんだそう。訪れた季節は秋、曇りの日ではありましたが、ちらほらといた釣り人たちの自由気ままなたたずまいもあって、ゆったりした気持ちで撮影することができました。

さて次週(1230日更新予定)の「やる気が出る名言で学ぶビジネス英語」は、アメリカの造園家の言葉をフィーチャーします。2019年の最後を飾るのはflower、それもwildflower(野生の花)に言及した一言です。さてどんな意味が込められているのでしょう?

どうぞお楽しみに。See you next week!

(構成・山本航)

■「やる気が出る名言で学ぶビジネス英語」は毎週月曜朝に配信します。