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暗闇の中で本当の自分を発見する ダイアログ・イン・ザ・ダークの新施設が東京にオープン

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2019円11月22日、東京都新宿区の三井ガーデンホテル神宮外苑の杜に、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(暗闇との対話)」の新体験施設「内なる美、ととのう暗闇。」がオープンする。

五感を使って暗闇を体験するエンターテイメント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(暗闇との対話)」の新体験施設「内なる美、ととのう暗闇。」が11月22日、東京都新宿区の三井ガーデンホテル神宮外苑の杜オープンした。

ダイアログ・イン・ザ・ダークは、ドイツ人のアンドレアス・ハイネッケ氏が考案。少年時代、母親からユダヤ人の身内が戦争中に殺された話を聞き、「人は社会の中でどうやって互いの優劣を決定するのか? 何が人を善から悪に変えるのか?」と考えるようになったことが原点にある。

その後、視覚障害者と一緒に仕事をし、自分と違って暗室でも普段通りに動けるのを見て、「障害者は劣っている」という自分の中の偏見に気づいたという。ハイネッケ氏は、「二者の立場が入れ替わったとき、今までとは異なる視点から物事を見ることができるようになるのでは」と考え、ダイアログ・イン・ザ・ダークを始めるに至った。

記者発表での一コマ

“自分との対話の時間を持つ”がコンセプト

この試みは大きな関心を呼び、現在では世界41か国以上で開催されている。今回、新たにオープンすることになった施設は、ダイアログ・イン・ザ・ダーク初となる「大人のための体験施設」。ホテル内に暗闇の空間を作り、「ゆったりとした時間の中で自分と対話する」のがテーマ。そのため対象年齢も18歳以上に制限した。暗闇の中で参加者をアテンドするのは、従来のダイアログ・イン・ザ・ダーク同様、特別にトレーニングを受けた視覚障害者だという。

オープン当日に開催された記者発表会には、ダイアログ・イン・ザ・ダーク発案者のアンドレアス・ハイネッケ氏、一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ代表理事の志村季世恵さん、そして「内なる美、ととのう暗闇。」のコンテンツ作りに協力した、曹洞宗長光寺住職の柿沼忍昭さん、身体感覚教育研究者の松田恵美子さんが出席した。

志村さんは、今回の施設について、「美しい自然が残った明治神宮内の敷地が舞台なので、まず考えたのは水や光、土を感じられるコンテンツにしたいということでした」と説明。また、従来のコンテンツにある参加者同士の対話よりも、一人ひとりが“内なる自分”と対話できるものを目指して、柿沼さんと松田さんに協力を依頼したという。

“人間はそのままでいい”を学べる場になった

柿沼さんは、「今回のコンテンツは非常に感覚的なもの。“禅らしい”というより“禅そのもの”といえるメソッドを使いながら、水やサウンドを駆使してエンターテインメント空間に仕上げている」。また、「この空間は、参加者が“人間はそのままでいい”ということを学べる場だと思っている」とも話した。

松田さんは、「わたしたちは街中を歩くとき、移り行く自然の美しさを目で味わうことができるが、この施設での体験後は、空気の匂いや雨の音に対してもさらに敏感になるかと思う」と、暗闇体験の「効果」について語った。

本来の自分に出逢える?

ハイネッケ氏は、20年前の1999年に日本にダイアログ・イン・ザ・ダークが上陸した際に来日したときのことを振り返りながら話した。「黒(闇)について、日本人から学んだことは多い。ヨージヤマモトも黒を多用するが、黒い布や生地は物事を吸収するという。哲学的な言葉で言うと、黒は光を吸収できるということ。暗闇の中で不要な情報や時間の感覚をデトックスできれば、本当の自分と出逢う可能性があるだろう」と話した。

また、新施設では「水」が大切な要素を果たしていると明かし、「水は生命のメタファーであり、かつ、浄化というプロセスも意味する。その水を感じられる空間に身を置くことで自身の変化を楽しんでほしい」と話した。さらに、「闇もまた生命を象徴するものである」とし、「闇は、人生におけるダークサイドを意味するだけでなく、知らなかったことや想定しなかったことが眠っている場も意味する。そこを掘り起こすことでどんなものが生まれるかということにも目を向けてほしい」と施設の魅力について語った。

志村さんによると、施設には、茶道や能など日本独自の要素も取り入れているそうだ。だが、詳細については明かされてない。闇だけでなく、様々な要素が取り込まれた新施設。何が起きるかは自ら足を運び、自分の五感で確認してみるしかなさそうだ。

(取材・撮影・文/松本玲子)