日本でも今やすっかり定着したカフェや、幅広い世代に親しまれているチョコレート。しかしその楽しさを届けてくれる原材料がどこでどのように生産されているか、考えたことはあるだろうか。もしかするとそのカカオを摘み取ったのは、チョコを手にする子どもたち同様幼い手だったかもしれない──。
世界では今も約1億5千万の子どもが労働に従事しており、その約7割は農業分野という。特に途上国では、少しでも世帯収入を上げたいと、子どもや女性を含めた家族総出で働くケースが少なくないからだ。
2050年には100億に達するともいわれる世界の人口を養うため、私たちにはより多くの食料が必要だ。しかしFAO(国連食糧農業機関)は、現在の食料生産方法は環境にマイナスの影響を与えることが多いとして、健康的で栄養価の高い食料を提供し、環境も保全する「アグロエコロジー」への転換を訴えている。焼き畑など地域に根付く伝統農法も、機械化や化学肥料の使用も、それ自体を非難することはできないが、自然に負荷をかける可能性があることもまた事実だ。
過重な労働が農村に生きる人たちの教育や自立の機会を奪っていないか。収穫量を増やそうと環境に過度な負荷をかけていないか。SDGs(持続可能な開発目標)への意識の高まりもあり、自分たちが口にするものがどこでどのように育てられ、加工され、運ばれてくるのか知ろうとする動きは、消費者の間に近年広がってきた。
食品を供給する側でも対応は進んでいる。生産者とメーカーをつなぐ農産物事業会社が、デジタル技術を活用して産地や周辺環境、そこでの取り組みを「見える化」している例もある。店頭に並ぶ食品パッケージを注意深く見ると、フェアトレード(※1)やレインフォレスト・アライアンス(※2)の認証ラベルを目にすることも増えてきた。
自分たちだけでなく「社会や環境にとってもよいもの」を。そうした商品を選んで購入する人が増えれば、産地に笑顔が増え、農業を持続可能にすることもできるだろう。私たちが何を飲み、食べ、使うのか。その選択一つひとつが、未来を育てる種となっていく。
提供:三菱商事