新しいエコシステムとしてのSDGs
未来を見据えた長期的な資産づくりをサポートする「コモンズ投信株式会社」取締役会長の傍ら、社会起業家の育成・支援にも精力的に取り組む渋澤氏。朝日新聞クラウドファンディングサイト「A-port」では、SDGsの目標達成に貢献する人や団体の推薦人も務めている。
そんな渋澤氏との対話が念願だったという立命館大学校友(卒業生)の上田隼也さんは、現在も続く学生主催のSDGs体験型イベント「Sustainable Week」の発案者だ。熊本県益城町出身。生まれ育った風景が地震で崩れていくのをテレビで目にした時から、社会が持続可能であるとはどういうことか、真剣に考えるようになった。「SDGsの理念である社会をトランスフォーム(変革)する力とはどのようなもので、そこではなぜ企業や個人の力が重要なのですか」
上田さんのそんな質問に、渋澤氏はふたつのポイントを挙げた。「誰ひとり取り残さない世界」という途方もない目標を実現するには、現状からの大きな飛躍が必要なこと。そして、SDGsとは新しいエコシステム(生態系)をつくろうとする取り組みであること。「生態系というのは、一つひとつの効果や作用はよくわからない部分もありますが、全体としてバランスのとれたシステムのことです。多くの人や団体が多様なアクションを起こすことで、この生態系は豊かになり、私たちが飛躍できる可能性も高まります」
「やりたい」ことはいつか「できる」に
小川玲香さんは映像学部3年生。かつて留学した国で、ある映画について国籍の違う仲間たちと会話をしたとき、「泣けた」という部分が全員同じだった。そんな経験から、多くの人と感動や楽しさを共有することで社会課題を解決できるのではと考えている。しかし数値で効果が測れるものではないアートやエンタメの力が本当に課題解決につながるのか、不安になることもあるという。
渋澤氏は「できる・できない」という軸と、「やりたい・やりたくない」というふたつの軸を思い浮かべてほしいと語った。「私たちの夢や目標は、往々にして『やりたいけどできない』という場所に留まっています。お金・時間・経験・人脈がないからできない。でも経験を積めばいつか人脈ができ、お金や時間ももっと使えるようになるかもしれない。大切なのは、せっかく状況が『できる』になったとき、夢を『やりたくない』に変化させないことです。SDGsも『できる・できない』でいえば、多分できないことのほうが多い。しかし私たちがそれを『やりたい』なら、いつか『できる』に変わるかもしれない。映像で人を感動させることが小川さんにとってやりたいことなら、それは続けるべきだと思います」
Z世代こそ、2030年の主役
立命館慶祥高校3年生の佐藤大修さんは、海外研修で訪れたタイで目にした光景が忘れられない。人身売買被害を受けた子どもたちの支援施設でボランティアに参加し、子どもたちの過酷な現実に衝撃を受けた。学校祭で仲間とともに「SDGs×Rits 高校生の考える未来」と題するイベントを実施したのは、それがきっかけだ。「いま17歳の僕は、2030年の世界を担う『当事者』だという意識でSDGsに取り組んでいます。学校祭では、一人ひとりが実現したい目標について発表しました。僕自身の夢は、途上国の子どもたちに教育を届けるプロジェクトです。でもまだ高校生の僕たちは、いま何から始めればいいでしょうか」
そんな問いかけに渋澤氏が答える。「プロ野球の栗山英樹監督の著書に、『見えない未来を信じろ』という言葉がありました。私の言葉でいえば、それは未来への投資です。今日よりも良い明日があると信じるからこそ、人は行動を起こす。環境の破滅や人口減による社会の衰退など、見えている悪い未来が現実になってしまわないよう、みなさんには見えない未来を信じる力が必要です」
将来への希望と不安の両方を持ちながら、自らの意志に従い一歩ずつ前へ進もうとする若者たち。対話の終わり、渋澤氏はこんなエールを彼らに送った。「Z世代と呼ばれるみなさんは日本では少数派ですが、世界に目を向ければ非常に人口の多い世代です。もしも上の世代の常識がみなさんを縛りつけようとするなら、国境を越えて横へ横へと手を伸ばせばいい。2030年はみなさんの時代、大いに期待しています」
立命館SDGs推進本部が発足
立命館学園では2019年4月に「SDGs推進本部」を発足。世界に共通する課題に向き合い、世界とつながりチャレンジする学園を目指し、多様な個人や組織をつなぎ、新たな「知」の創造とそれを担う「人材」を育成している。学生・生徒・児童・教職員から主体的に展開されるチャレンジを学園がSDGsと位置付け支援するという形が特徴。今後も推進本部がハブとなり、全学を巻き込みSDGsを推進していく予定だ。 www.ritsumei.ac.jp/sdgs/
立命館大学びわこ・くさつキャンパスを“小さな地球”と見立て、SDGsにおける17のゴールに学生団体が主体的に取り組む。「宗教の違いを超えて食べることができるSDGsカレーの開発」などユニークな企画も多く、幅広い層が参加しやすい。なお今年は11月下旬から12月初旬にかけて「Sustainable Week 2019」の実施が予定されている。
本特集は朝日新聞GLOBE9月号の広告特集「大学生と考えるSDGsのいま」からの転載です。
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