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京アニ火災、世界に広がる支援の輪 「真の巨匠」「日本の宝」 

World Now 更新日: 公開日:
京アニ支援のために設置され、あっという間に目標額を超えたクラウドファンディングのサイト画面

■世界中から5万人超が

「7月18日、京都アニメーションが放火され、複数の負傷者がでたほか、命を落とした人もいる。この信じられない行為の詳細は分かっていないが、京アニチームを助けたい」

米国ヒューストンのアニメ関連会社「センタイ・フィルムワークス」が「緊急」と呼びかけてクラウドファンディングを立ち上げると、世界中から3万人近くの人が支持を表明。わずか約10時間で、目標額の75万ドル(約8080万円)を大幅に上回る87万ドル以上の額が集まっている。その後も5ドルから100ドルの範囲で、分刻みの寄付が続いており、22日朝(寄付開始から3日間)の段階では5万6000人以上から188万ドルを超える額となっている。

京アニは、「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」や「けいおん!」などの人気アニメ作品を次々と生み出してきた。高校生を主人公とした青春物語が印象的だが、手がけたジャンルは幅広い。描き込みの多い丁寧な作画や演出の巧みさ、独特の映像美が持ち味で、世界的にもレベルが高い日本のアニメ業界にあっても、その仕事ぶりは高く評価されてきた。

作品の英語版は世界中で配信されており、各国に熱狂的なファンがいる。センタイ・フィルムワークスは「K-ON!」を始め、多くの日本アニメの北米販売を取り扱うライセンスを持っている。

「京アニは何年にもわたり、その作品を通して私たちを刺激し、影響を与え、楽しませてきた。彼らは真の巨匠であり、日本の宝の一つだ」

同社のジョン・レッドフォード社長は寄付の呼びかけの中で、京アニについて、そう描写し、「どのような形でも彼らを助けたい」と訴えた。

火災が起きたのは18日午前10時半ごろ、74人がいた3階建ての京アニの第1スタジオが炎に包まれ、市消防局によるとこれまでに34人(男性13人、女性21人)の死亡が確認される大惨事となった。このほかに34人が重軽傷を負って病院に搬送された。警察は、1階の入り口付近でガソリンのような液体をまき、着火用のライターで放火した疑いで、さいたま市在住の職業不詳、青葉真司容疑者(41)を調べているが、やけど負って重体となっており、動機ははっきりしていない。

煙を上げて燃える京都アニメーションの建物=2019年7月18日午前11時39分、朝日新聞社撮影

寄付をした人たちからは、メッセージも書き込まれている。

「京都アニメーションは、いまやアニメ業界の『法律』になったと言うべきクオリティーで、感情に訴えかける素晴らしい作品を制作してきた。彼らの回復を望みます」
「あなたたちは私の人生を形づくってくれた。今度は私があなたたちの復興に協力する番だ」
「为京都动画祈福(京都アニメーションために祈ります)」

英語、スペイン語、中国語、日本語など様々な言語で京アニへの支援がつづられている。

「K-ON!」など京アニ作品の北米版の制作をしている「バングズーム! エンターテインメント」(米カリフォルニア州)も、同社の公式ツイッターのトップに固定する形でお悔やみのコメントを掲載。「最愛の京都アニメーションのスタジオで起きた想像を絶する火災の恐怖をニュースで知り、我々の心は非常に重い」として、同社が扱った京アニ作品のタイトル名をリストアップした。

京アニ作品の英語版の制作をしている米企業「バングズーム! エンターテインメント」の公式ツイッターのトップに固定されたお悔やみコメント

英語版の作品は英国や豪州でも発売されているほか、欧州や香港、韓国や台湾、タイなどでも、ライセンスを取得した地元の企業を通して広く流通している。日本国内同様に海外でも愛称で親しまれており、国境を超えてアニメファンに愛される「世界の京アニ」だった。

ツイッターでは、「#PrayForKyoani」、「#prayforkyoani love」などのハシュタグが立てられている。ここでも世界中から書き込みが、秒刻みで集まっている。時間がたつにつれて犠牲者の数が増えていった報道内容を定期的に報告する人や、京アニの作品画像を貼り付ける人、安否不明になっている制作スタッフの名前のリストを投稿する人、亡くなった人へ祈りの言葉を書き込む人など、それぞれが京アニへの思いを刻んでいる。

「33人もの人たちの死亡が確認された。ショックで言葉が出ない。33人の無実な魂に祈ります。安らかに眠ってください」

「ひどいニュース。悲しくて仕方がない。お悔やみ申し上げます」

「(京アニから)私は家族の大切さや友情、愛を習い、私の人生はよくなった。京アニ、ありがとう」

ツイッターでも京アニへのクラウドファンディングの情報が共有され、ファン同士で寄付を呼びかけあっていた。

センタイ・フィルムワークスは、寄付が目標額を大きく上回ったことを受け、「みなさんのとてつもない愛と援助、寛大さに感謝します」と改めてコメントを掲載し、「支援は世界に広がった」と強調した。集まった寄付金は、京アニの被害者や家族たちに直接届けられるという。同社では、その手段を検討しているとして、「間違いなく被害者たちに届けられるようになるまでは、集まった寄付金にはさわらない」と約束した。

※7月22日正午、データをアップデートしました。