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「人は資産」 日本型ビジネスの価値が、アメリカの雇用を変え始めた

World Now
ブライアン・シャーマン氏

■世界でも珍しい、米国の雇用関係

米国の企業と従業員の雇用関係は、世界でも珍しい随意雇用(employment-at-will doctrine)と呼ばれる法的な原則に基づくことが多い。企業は採用時に示すオファーレターで、差別などの違法性がない限り、事前の通告や理由の開示なく雇用関係を終了できることを明示する。同時に従業員も自己都合でいつでも退社する権利が記されている。

ただ、解雇が従業員の人生に大きな影響を与えることは企業も分かっている。人事管理の観点に加え、法的、倫理的な角度からも慎重に社内議論を繰り返し、必要不可欠な時だけ解雇の選択をする。解雇すれば会社は訴訟という大きなリスクを負うことになるので、簡単な選択ではない。

新たな技術が次々と生まれ、ビジネス環境の変化が激しい現在のグローバル社会では、企業はたびたび対応を求められる。競争力を維持するためにリストラの必要性も出てくる。随意雇用は、こうした時に米国企業の強みになってきた。

その米国ではいま、従業員をHuman Capital(人的資産)と呼ぶ企業が出てきた。こうした「企業=人」という評価は日本発祥だ。日本人創業者の多くが、企業の核は人であり、あらゆる人は可能性を秘めており、その成長を後押しすることが企業のためになることを認識していた。この理念を引き継いでいる経営者は今でも多い。素晴らしいことだ。

■チームワークの重要性、米国で再認識

日本に来て多くの企業と仕事をさせてもらいながら、こうした企業理念を勉強してきた。人はなぜ仕事をするのか。それは会社の利益や拡大のためだけではなく、仕事をする人それぞれが成長するためでもある。企業は仕事を通じ、全ての人に潜在する可能性の引き出しを助長する存在でもある。人間の成長、人間の尊重を大切にする企業理念は、今でも多くの日本の企業に強く残っていると感じる。米国企業がしばらく失っていたことだが、それがいま、米国で戻ってきているのかもしれない。

事業を通して社会貢献するという考え方も日本のいいところ。個人と企業、社会の三角関係の循環だ。さらに「全員一丸となって努力しよう」というチームワークも米国が日本に学ぶべき点の一つだと思う。

ブライアン・シャーマン氏はファーストリテイリングの柳井正会長兼社長の下で、ユニクロの海外展開に関する人事業務を担当したこともある

個人主義と言われる米国でいま、チームワークの重要性が認識されるようになっている。単独よりも、共通の目的を共有するチームで働く人の方が、仕事から得る満足感も高く、企業にとどまる期間も長くなるという研究結果がある。日本が得意とするチームワークは、今のグローバル社会でも十分通用する。

逆に日本が米国から学ぶべきこともある。日本企業は、終身雇用で従業員を守ってきた。企業の存続が約束されなくなった時代、グローバル社会は企業を守ってくれない。企業も従業員を守り続けるのが難しくなった。会社の存続に重要な人材の獲得合戦が強まる中、同じ給与制度で社員全体を管理するよりも、能力に応じて報酬を約束する制度の方が、より公平だという考え方もある。

財産となる人材を私は「人財」と呼ぶ。一方、終身雇用で守られてきた従業員の中には、ただいるだけの「人在」もいる。「人財」を増やし「人在」をなくすことにつながる評価への変化が求められている。

■テクノロジーには注意も必要

日本ではHRテクノロジーの導入に慎重な企業が多いが、理解できる。テクノロジーが作業の効率化、生産性の向上に寄与するのは間違いないが、一方で、個人データの取得などを通して企業による従業員の監視につながる恐れがある。従業員の知らないところでデータ分析が行われ、それがそのまま評価につながるようなことがあってはならない。

ブライアン・シャーマン氏が付箋に書き出した、人事が抱える課題。企業、従業員、社会との相関関係や、変化する業績管理のあり方などを指摘した

テクノロジーは私たちの仕事や判断をより促進させるためのものであって、我々が何をするのかを決めるべきものではない。AI(人工知能)分析は、インプットされる情報によって結果が変わる。分析に使われる情報にバイアスがあれば、結果も当然、バイアスを受ける。しかし、どんなデータが使われているのか、従業員は知らされない。米国では、尋ねて初めて説明を得られることが多い。

企業は、どんな情報を集めて何に使うのかを明確に従業員に示す必要がある。システムを提供するIT企業が強調するように、HRテクノロジーが本当に従業員のためになる技術なのかどうか。これを慎重に見極める必要がある。

■特集「評価なんてぶっとばせ!」連続インタビュー