2月下旬にアメリカ領グアムの1部リーグ「NAPAローヴァーズ」へ入団し、3月2日に久々に試合に出場しました。やっとこの場に帰って来られました。これまで日本をはじめアジアの20の国や地域でプレーをしてきた僕にとって、新たなチャレンジが始まりました。その一方で、ここグアムを最後に現役引退する決意をしました。
僕は2017年に東ティモールリーグでプレーをしていましたが、シーズン途中の同年5月に突然、契約解除となり、その後は所属先を探していました。最近は台湾リーグへの移籍を模索していましたが、契約寸前に白紙となってしまいました。
待ちに待ったグアムでの初舞台は2日の「グアム銀行ストライカーズ」戦。僕にとって約2年ぶりの公式戦でした。昨季優勝し、今季もリーグ首位を走っている我がチームと、2位につけるライバルチームとの対決でした。結果は2-2の引き分け。我がチームが前半先制点を挙げ、終始リードしていたのですが、残り約3分、最後の最後になって相手に追いつかれてしまいました。チームとしてはもったいない内容でした。
僕はボランチでスタメン出場し、90分フル出場することができました。シュートは3本放ち、ポストにはね返された惜しいものもありましたが、結局、ゴールネットを揺らすことはできませんでした。初ゴールは次回以降にお預けとなりました。
ここのサッカーは、思った以上に当たりが強かったです。久しぶりに、試合で膝と肘が擦りむけました。でも、ピッチに帰って来られたという証でもあり、充実感があります。こちらのサッカーは、日本のように頭で考えて組織で動くという感じはなく、ロングボールで相手の背後を狙い個の技術で局面を打開するシンプルなサッカーでした。
ところで先ほども記した通り、グアムで現役引退する決意をしました。グアムリーグのシーズンは4月末までなので、「平成の終わり」とも重なります。サッカーに対するモチベーションが下がったり、技術や体力が落ちたりしたと感じたわけではなく、いまだにプレーする自信もありますが、でも、どこかで線を引かないといけないとは常々思っていました。
グアムでは“キング・カズ”こと三浦知良選手(52)が毎年オフシーズンに自主トレをしています。カズさんのトレーニングパートナーもしている僕の知人が、グアムのチームとの橋渡し役をしてくれました。グアムはアメリカ領ですが、グアム代表チームはAFC(アジアサッカー連盟)に加盟していてアジア予選にも出場しています。
現地では、チームからの推薦で、グアム代表チームの練習にも特別に参加させてもらっています。代表監督のカール・ドットさんはオーストラリア人で、スコットランドや香港でのプレー経験もあり、わかりやすい指導方法で選手たちから慕われています。
先日は、地元の人たちが中心となった草サッカーにも参加しました。現地の日本人に「ボールを蹴ることが出来る環境があったらとにかく呼んでくれ」と頼んでいたので、声をかけてもらいました。おじいちゃんやおばあちゃんも参加する楽しい雰囲気でした。
こちらのサッカー環境は、さすがにアメリカ領なので僕がこれまで経験してきた発展途上国とは違い、最新のトレーニング機器が導入されるなど、施設が整備されています。試合の様子は、インターネットで世界にライブ配信されていますが、この国ではサッカーへの関心があまり高いとは言えず、東南アジアのように子どもたちが道端や空き地などでストリートサッカーをする姿は見かけません。これは少し残念です。
一方、僕が普段、地元の札幌で開いている子ども向けサッカースクール「チャレンジャス」ですが、僕が留守の間はスタッフが支えてくれています。子どもたちに、僕がグアムでプレーすることを伝えたら、「頑張ってください」とか「コーチみたいになれるように練習します」といった手紙をくれ、これが何よりも励みになっています。彼らには僕が現役としてピッチを走り回っている姿を目に焼き付けてほしいです。
ここでは、街の中心から少し離れた高級住宅街にあるコンドミニアムで暮らしています。約15年前に観光で訪れて以来ですが、今は乾季で過ごしやすく、食事など何のストレスもなくのんびり生活しています。自分では、現役最後の地として相応しいと思っています。
グアム滞在中にさらに英語も磨かなければと思っています。というのも、AFCの指導者ライセンス講習では英語でのやり取りが必要になってくるからです。プライベートでは、観光したり、山に登ったり、ダイビングのライセンスを取ってきれいな海に潜ったりと、ここでの生活を満喫したいです。
これまで、21か国でプレーするなど、記録は残してきました。ここではサポーターの皆さんの記憶に残るプレーをするのが目標です。僕にとって残りの試合は数えるほどとなり、寂しさも感じています。30年以上続けてきたサッカーの集大成として、自分の経験や技術を思う存分披露できたらと思っています。(構成 GLOBE編集部・中野渉)