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月1回、全社員が「午前はメール禁止」 楽天フランスの挑戦で見えた、高い壁

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インタビューに答える「Rakuten France」のオリヴィエ・マティオ氏=10月2日、パリ、玉川透撮影
インタビューに答える「Rakuten France」のオリヴィエ・マティオ氏=10月2日、パリ、玉川透撮影

【前の記事を読む】メール禁止はつらいよ バカンス大国フランスの「つながらない権利」険しい道のり

■メールを読む時間という損失

Rakuten Franceが毎月1回、金曜午前に社員250人全員のメール使用を禁じる試みを始めたのは2016年。フランスで昨年1月、労働者が就労時間外に会社からの電話やメールを拒める「つながらない権利」が法制化される前年のことだ。

 「メールという現代社会に欠かせないツールが便利なだけでなく、ネガティブな効果があることを社員に身をもって理解して欲しかった」。導入時CEOだったオリヴィエ・マティオ氏(47)は、狙いをそう説明する。

 オリヴィエ氏はメールが持つ「長所」として、①複数の相手に同時に送れるマルチポスティング②送信した時間と読まれる時間が一致しなくてもいい非同期性③添付ファイルなどを保存できる記録性――の3点を挙げる。その一方で、情報シェアに最適なツールであるからこそ、社員の多くがメールを送ることにあまりに無頓着になり、他人から「オフ」になるはずの時間を奪っている。オリヴィエ氏はそう考えた。

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インタビューに答える「Rakuten France」のオリヴィエ・マティオ氏=10月2日、パリ、玉川透撮影

「送り先が多ければ多いほど、多くの人の時間が『メールを読む』行為に費やされる。例えば、社内の30人に同じメールを送って、1人当たり15分を費やすとしたら、会社のエネルギーが30人×15分が使われることになる。メールを送ること自体が何かを成し遂げていると錯覚している社員もいますが、それは非効率であり、企業にとっても損失です」

 1回、金曜の午前だけとはいえ、IT業界の「商売道具」ともいえるメールのやりとりを制限されることに当初、社内には異論もあった。それでも、オリヴィエ氏は「情報」と「コミュニケーション」は大きく異なると反対派を説得した。

「メールを送ることは一見コミュニケーションをとっているように見えるが、読み手に感情が伝わりにくいという弱点がある。例えば、怒りの感情を大文字にして表現する人もいるけれど、誤って複数の人に送られれば、ある種のパワハラにもなりかねない。電話で伝える、できれば直接会って話す方が感情が伝わる」

■立ちはだかった壁とは

「月1回のメール断ち」導入から2年。効果のほどはどうかと尋ねると、オリヴィエ氏は率直に「限界」を認める。

「デスクを離れて相手と直接話をするきっかけとして受け入れる人もいれば、時間の無駄だと考えて、メールの下書きだけたくさんしておいて、禁則が外れた後で一気に送る人もいます。正直なところ、社内の反応は賛否が半々というところでしょうか」

さらに、ビジネスの場でメールと並んで、時間を効率的に使えていないとオリヴィエ氏が考えるのが「会議」だ。

会議が1日に何回も開かれたり、長時間に及んだりすることで、社員のプライベートな時間を圧迫していると、以前から問題になっていた。メールの試みに続いて、改革案を募ると、多種多様なアイデアが寄せられた。参加人数を制限したり、会議の時間に上限を設けたりすることで、社員ひとり一人の無駄な時間を削減してはどうか。会議に集中して取り組むために、パソコンの持ち込みを禁止しよう。立ったままの会議はどうか――。

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「Rakuten France」のオフィス受付=10月2日、パリ、玉川透撮影

かし、こちらも一朝一夕とはいかない。その原因は「人間の恐れ」にある、とオリヴィエ氏は指摘する。

「もし、この会議に自分が出なかったら重要な情報を把握する機会を逸するかもしれない。人間はどうしても、そういう『恐れ』を抱いてしまう。メールやSNSが手放せない心理も根底にあるのは、同じです」

かくいうオリヴィエ氏も、メールの「呪縛」から脱しきれていないという。

 「家族で食事する時でさえスマホが手放せず、子供から文句を言われています。どのぐらいスマホ断ちできるかって? うーん、5分かな」

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