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みやぞんが語る、気持ちをコントロールする技

LifeStyle 更新日: 公開日:
ロケの合間の休憩時間に、船上で気持ちよさそうに海風を受けるみやぞんさん=浅井企画提供

ANZEN漫才・みやぞんさんインタビュー(後編) 独自の休み理論を胸に、大ブレークへの道を切り開いてきたお笑い芸人、ANZEN漫才・みやぞんさん(33)。「休み」という言葉の反対語は何だと思うか尋ねると、意外な答えが返ってきました。得意のギター弾き語りにまつわる驚きの「裏話」と合わせて、みやぞん流「休み哲学」インタビュー後編です。(聞き手・GLOBE編集部玉川透)

 

■インタビュー前編 成功のイメージを作るために、休む みやぞんが番組で体得した「休みの哲学」

■今年に入って半日しか休んでません

――日本テレビ系番組「世界の果てまでイッテQ!」でブレークしてから、いまや超売れっ子ですね。ものすごく忙しいと思いますけど、実際、お休みはどのぐらいとれているのですか?

おかげさまで、今年に入ってから半日だけです。丸一日はまだありません。

――ええ!?体調は大丈夫ですか?

それが健康なんですよ。逆に仕事している方が元気になります。じつは昨日の深夜1時から静岡で釣りのロケがあって、その足で東京に戻ってこのインタビューを受けています。アハハハハ。

――過度のストレスから仕事への意欲を失う「バーンアウト(燃え尽き症候群)」になる人が各国で増えていると言われています。日本でも過労死が深刻な社会問題になっていますが、みやぞんさんは無縁そうですね。

ぼくは大丈夫です。睡眠時間もトータルすれば、けっこうもらっています。移動中にちょいちょい短い時間で寝るのが得意になりましたし、「行ってQ」の海外ロケでも長時間フライトも多いんですが、ほとんどの時間は眠っています。 

鬼室黎撮影

あと、やっぱり楽しいから続けられているんだと思います。ぼくの好きな野球で言えば、炎天下で試合している球児を見たら、なんであんな暑い中でがんばれるんだろって思いますよね。でも、本人たちは野球が好きでやっているから、がんばれる。一生懸命に楽しもうとすれば、燃え尽きることはないと思います。

逆にぼくにとっては、「退社の時間が早く来ないかな」とじりじり待っているのが、いちばんきつい。一生懸命なにかに打ち込んでいて、「よし、やるぞ!やるぞ!」と声を出して勢いでやっているうちに時間が経ってしまう。自分でも「オレ、頑張ったな」と思う。楽しいことだと、そんな風に何時間だってやれちゃいますよね。そこに、いかにして持っていくかだと思います。

――でも、職場環境によっては働く時間を自分でコントロールできない人もいます。どうしたら、みやぞんさんのようにポジティブに考えられるのでしょうか。

そうですよね。そういう方たちは、あの人つらそうに仕事しているなって思われて、周りまでつらくなってしまうでしょうね。そんな時、どうすればいいか。とりあえず、自分だけでも変わっちゃえばいいんじゃないでしょうか。笑顔でニコニコ自分だけ!

鬼室黎撮影

そんな人だったら、周りで見ている人も放っておかないと思います。表情だったり、話す言葉だったり、そういうところから変えていくしかないじゃないでしょうか。例えば、会社で同僚が暗い顔をしていたら、「なんか君って暗くて、楽しいね!飲みに行ってみよう!」「ラインのグループを作ろう!グループ名は『暗い』で行こうか!」。そんなバカバカしいことを言っているうちに、明るくなってくるでしょう。

人間って、つまらない方向に行ってしまったら、どんどん不安に突き進んでしまう。ぼくは、それがすごく嫌なんです。自分でかじをとって、不安な気持ちを大丈夫な方向へと持っていく。そこが勝負だと思っています。自分はいったい何のために仕事をしているんだろう。それがたとえ、週末に楽しく過ごすためだっていい。その辺の根本的な考え方が切り替わらなかったら、いくら職場が変わっても、何も変わらないと思います。

Aマイナー、ぼくが開発したんじゃないの?

――仕事といえば、みやぞんさんはギターの弾き語りが得意ですが、いちど曲を聴いただけで楽譜も見ずに自在に弾けると聞きました。本当ですか?

はい。でも、ぼくの知っている曲であれば、ですけどね。まったく知らない曲だと、さすがにちょっと時間がかかります。例えば、サザンオールスターズの「いとしのエリー」を弾いてと言われたら、こんな曲でしたっけ、ああ、あの曲ですね、という具合にすぐできます。

ぼく、ギターは独学で、耳で覚えたので、コードの概念がなかったんです。楽譜を見て、ああこのコードなんだという感じでギターを覚えたわけではないので。むかし、埼玉の立ち飲み屋で流しのまねごとをしていたんです。お客さんに「長渕剛の『乾杯』やってよ」と言われたら、「はい、『乾杯』いきますよ~」てな感じで。そこにたまたまミュージシャンの方がいて、どうして楽譜も見ないのに何でも弾けちゃうのかって聞かれて、「ああそうなんだ、みんなできるわけじゃないんだ」と、そのとき初めて気づきました。

真面目な話、最近までAマイナーのコードも自分で開発したと勝手に思い込んでいたんです。ギターの教本を見たらびっくり。じつは、すでに発明されていたんですよね。そりゃそうですよね、無いコードなんて無いわけですから。知らないもんで、なにも。ハハハハハ。

■白の反対は白、休みの反対は休み

――はあ……ある意味、天才ですね。そんなみやぞんさんに、最後の質問です。「休み」という言葉の反対語はずばり、何だと思いますか?

え、反対語?そもそも、それってどういう意味ですか?イヌの反対語って、ネコですか?

――いえいえ。例えば、「暑い」の反対語は「寒い」というような……

ああ、そういうことか……うーん。分かった!「休み」です。「休み」という言葉の反対語は、「休み」ですね!白の反対は白。それと同じようなものです。

――まるで、禅問答ですね。その心は?

休みの反対は休み。だって、いろんな休みがあるじゃないですか。つまり、休みも考え方しだいで、どんな休みになるか変わってくるでしょ?働いていても、心は休んでいるっていうことだってあります。だいいち、働いているときの方がぜんぜん悩まないじゃないですか。例えば、おばあちゃんが亡くなって、ずっと家にいたら、おばあちゃんのことばっかり考えてしまう。でも仕事をしていれば、気を紛らわすことができます。仕事って、そんなに悪いものじゃないんだと思いますよ。 

インタビュー後に得意のポーズをとるみやぞんさん(左)と筆者=10月9日、東京都内、鬼室黎撮影

■みやぞん 1985年、東京都足立区生まれ。本名は宮園大耕(みやぞの・だいこう)。幼なじみのあらぽんと2009年にお笑いコンビ「ANZEN漫才」を結成。歌ネタを得意とし、ギターの弾き語りを担当。