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メラニア一色は続くか 米大統領夫人の欧州の故郷

ニューヨークタイムズ 世界の話題
人口5千のスロベニアの町セブニツァ。米大統領夫人メラニア・トランプはここで子供時代を過ごした=2018年5月24日、Laura Boushnak/©2018 The New York Times

メラニア・ケーキ。メラニア・クリーム。メラニア・ワイン。メラニア・ティー。メラニア・スリッパ。メラニア・サラミ。そして、メラニアのチョコレート菓子。

ここスロベニアの小さな町セブニツァは、メラニア商品であふれている。米ファーストレディー、メラニア・トランプの故郷だ。

商品名には商標上の制限がある。だから、「メラニア」という名を露骨には出せない。でも、それが何を意味しているかはすぐに分かる。ワインなら「ファーストレディー」。スリッパなら「ホワイトハウス」(フワフワした白いウサギのしっぽの飾り付き)といった具合だ。

メラニアグッズの一つ「ホワイトハウス」スリッパ=2018年5月24日、Laura Boushnak/©2018 The New York Times。地元の老舗メーカーが製造している

そんな法的な問題はさておき、メラニアが地場産業に貢献しているのは間違いない。首都リュブリャナから車で1時間半。人口約5千の町は、緑が深い渓谷にたたずんでいた。

町でただ一つのホテルは、2018年に入って営業を再開した。年間の観光客数は、この3年間で15%増の2万人になった。夫のドナルド・トランプが2016年の米大統領選で最有力候補になってから増え始めていた。

「メラニアが有名人になって、町は様変わりした」と町長のSrecko Ocvirk(以下、現地の人名は原文表記)は言う。「今では、世界中から観光客がやってくる」

あの「ホワイトハウス」スリッパを製造しているコピタルナ社。「スロベニアという国があることを世界に広めてくれた」と輸出部門の責任者Marija Balincはメラニア効果をたたえる。「それまでは、スロバキアとよく間違えられていた」

それでも、目新しさは薄れていくものだ。1人35ドルでメラニアゆかりの場所を案内することもある観光ガイドのLidija Ogorevcは、どう付き合うべきかを考えるようになった。

町の12世紀の城にある地元ワインの展示コーナー。Ogorevcは「これが、メラニア・ワインです」と「ファーストレディー」のボトルを示しながらも、その前にゆっくり立ち止まることはなかった。すぐに別のボトルの前に移り、「こちらにあるのが最高級の銘柄です」とブラウフレンキッシュ種のブドウでできた赤ワインを紹介した。

目抜き通りに面したカフェでは、メラニア・ケーキが売られている=2018年5月24日、Laura Boushnak/©2018 The New York Times

一時のメラニア騒動から距離を置くようになった、というのが正確なところだろうか。「だって、この町には、もっと紹介したいことがたくさんあるのだから」とメラニア・ツアーの案内人という立場との矛盾を隠そうともしなかった。

Ogorevcが最も誇りに思うのは、小高い丘に立つこの城だ。とくに、おすすめは夏。渓谷を流れるサバ川と織り成す景観が、「本当に素晴らしい」と強調した。

その口調は、町はずれの中層アパートにくると冷めていた。ユーゴスラビア時代の共産党政権下でできた味気のない建物だ。

「ここが、メラニア・クナウスとして彼女が育ったところです」。大まかな方向を指したものの、「具体的にどこに住んでいたかの情報は、持ち合わせていません」と肩をすくめた。

メラニアが住んでいた町はずれのアパート=2018年5月24日、Laura Boushnak/©2018 The New York Times

町の観光案内所では、メラニアの若いころを描いた本「Melania Trump:The Slovenian Side of the Story(メラニア・トランプ:スロベニア時代の足跡)」を売っている。さらに、チョコレートでコーティングしたリンゴ菓子など幅広いメラニアグッズが並んでいる。

しかし、町の観光局長Mojca Pernovsekは、メラニアについて語ろうとはしなかった。「他にも話題はたくさんあるのに、なぜ」と問い返すのだった。

美しい渓谷。ハイキング。女人禁制のサラミ祭り。性別は問われないワイン祭り。魚釣りの大会もあれば、ビール祭りもある。もちろん、城についての話題は尽きない。「政治の話題だけはお断りしている」
確かに、16年にトランプが世界中で有名になる前までなら、そんな質問が出ることもなかっただろう。
もともとこの町は、中小の製造業の拠点として知られていた。先のコピタルナ社は、スロベニアの靴製造業の老舗でもある。国際的なホテル向けの家具メーカーもあれば、この国最大の女性用下着メーカーもある。

メラニアが子供だったころは、母親のAmalijaは服飾メーカーの工場で働いていた。父親のViktorは、自動車部品のセールスをしていたと言われる。もっとも、当時を知る町民はあまりいない。メラニア(訳注=1970年生まれ)より一つ年上の町長も、同じ小学校に通っていた時期があるはずなのに、よく覚えていない。

メラニアがこの町を離れたのは、30年ほど前だ。80年代の後半に、進学するためにリュブリャナに移った。それから数年して、米国で働き始めた。
メラニアが去ってから生まれたこの町の若い世代の中には、あこがれる人もいる。
「個人的には知らないが、こんな小さな町から米国のファーストレディーが出たことをとても誇りに思う」とMaja Kozole Popadicは話す。カフェを営み、メラニアにちなんだアップルパイを売っている。
しかし、メラニア本人は、ファーストレディーになってから、この町はおろかスロベニアにも帰ったことはない。だから、ほとんどの人にとっては、メラニアグッズが本人との唯一のつながりになっている。
「大統領バーガー」がメニューにあるレストランの「ロンド」。米大統領の髪形に似たチーズの揚げ物が、パンにのって出てくるのが売り物だ。

レストラン「ロンド」の売り物、大統領バーガー=2018年5月24日、Laura Boushnak/©2018 The New York Times

しかし、従業員みんなが米大統領夫妻に熱い思いを抱いているというわけでもなさそうだ。
「当選したときは興奮したけれど、今はもう語り尽くされたお話ってところかしら」。若いウェートレスのMia Podlesnikは、淡々としていた。「誰かと結婚したからということだけでは、どうってこともないし」(抄訳)

(Patrick Kingsley)©2018 The New York Times

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