まるで宇宙船のようなデザインの建物が、2017年後半ごろ、米ロサンゼルスにお目見えする。アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミー(AMPAS)が運営する「アカデミー博物館」だ。
ビバリーヒルズのAMPAS本部から東に約3キロ、ロサンゼルス郡美術館(LACMA)の西棟を長期リースして大幅に改築する。フランスのポンピドゥー・センターや関西空港ターミナルも手がけたイタリアの著名建築家レンゾ・ピアノが設計する。
AMPASによると、地上5階建て、延べ床面積は27000平方メートル以上。収容数1000人から150人程度までの大小の劇場を配し、ガラス張りの球体状のイベントスペースや、展示場、教育センターなども構える。来館者はアカデミー賞の歩みや映画の最新技術を学び、映画の衣装などを間近に見て、新旧の映画を鑑賞することができる。
総工費は公表していないが、AMPASは12年から今年1月までに、世界の1000人以上の映画人らから計2億2500万ドルの寄付を取り付けた。米メディアによると、スティーブン・スピルバーグ監督は1000万ドルを寄付したという。
授賞式を補完する収入源
AMPAS元会長で、博物館計画を後押ししているシドニー・ギャニスは「映画芸術の重要性を世界に示し、映画への関心を高めるための施設となる。ハリウッド映画だけではなく、世界の映画に目配りする」と強調する。
また、AMPASの教育・映画保存等担当責任者、ランディ・ハバーカンプは「世界の人々を感動させる(パリの)ルーブル美術館のように、アカデミー博物館を育てたい。この博物館は、AMPASがこれからどこへ向かうかを示す象徴にもなる」と語った。
AMPASの運営はこれまで、アカデミー賞授賞式に関連した収入を中心にまかなわれてきたため、博物館には収入源を広げる狙いもあるようだ。映画業界を長年取材してきたニューヨーク・タイムズ記者のマイケル・シープリーは「授賞式が従来のような関心を得られなくなったら、AMPASの組織は衰退せざるを得ない。博物館を建てることで組織の力を保ちたい、と考えているのだろう」と解説する。
博物館が授賞式を補完する収入源となるためには、多様な人々が楽しめる施設を目指さなければならない。米誌ハリウッド・リポーターによると、AMPASはアカデミー賞の過去の受賞者やノミネートされた人たちに、最近の映画に関する品々を寄贈するよう求めている。AMPASによると、名子役として知られるシャーリー・テンプルは、6歳で特別賞を受けた際に授与されたミニチュアのオスカー像を寄贈した。
(藤えりか)
(文中敬称略)