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日本を飛び出し、タイで働くという選択肢

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一皿約180円で売られていたタイの焼きビーフン「パッタイ」。屋台を利用すれば生活費も抑えられそうだ
一皿約180円で売られていたタイの焼きビーフン「パッタイ」。屋台を利用すれば生活費も抑えられそうだ

「日本人が多い国なら暮らしやすそうだなと思って、タイに注目して仕事を探しました」。高浦三喜子(34)は2014年、保険事務を代行するバンコクの日系企業に、面接を経て就職した。

発展する東南アジアの中心に位置するタイには、自動車産業などの日系企業が1990年代から拠点を次々に設けた。ジェトロバンコク事務所の2014年の調査によると、活動が確認できている日系企業は4567社。ここ6年間でも683社増えた。日本人社会の拡大に商機を求めるサービス業や中小企業の進出が目立ち、現地で採用される日本人の雇用が生まれている。

高浦の月給は5万バーツ(約15万5000円)だ。タイに来た14年末当時は円安のため約18万円と、出国前に埼玉県川越市の美容院に勤めていたときの月給約19万円とほとんど変わらない額だった。

タイ政府は自国民の雇用を守るため、外国人に対しては企業にとって「割高」な給与を支払うよう、国ごとに最低賃金を設けている。そのため、一部の職業をのぞき、日本人はこの5万バーツ以上の月給が保障されているかたちだ。

「お給料は少し減りましたが、物価が安いので生活は充実しています。日本では実家暮らしでしたが、この額でもこちらでは一人暮らしができます」と高浦は話す。

街中心部のコンドミニアムと呼ばれる高級マンションで、家具付きワンルーム30平方メートルに住む。共用のプールとジムも併設されていて、家賃は月8500バーツ(約2万6000円)。休日には女友達で連れだって、ビーチに遊びに行くのが楽しみだという。

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高浦三喜子は「物価が安いので生活は充実しています」と話す

希望する美容師の仕事が見つかり、7月にはバンコクから車で2時間の港街、シラチャーに引っ越す。日系企業などの工場団地が集まり、日本人街が急拡大しているという。

外務省の統計によると、15年の在タイ邦人は6万7424人。05年の3万6327人から、8割以上増えた。邦人が多く住む外国としてはカナダを抜き、米国、中国、オーストラリア、英国に次ぐ5位に上昇している。

高浦のようにタイで就職する日本人の情報源になっているのが、就職情報サイト「チャイカプ」(http://thaisharehouse.com/)だ。バンコクで働く榎本浩一(35)が15年に開設した。
 「私も来たばかりのころは住まい探しなどに苦労しました。自分の経験を生かして、タイでこれから働きたい人たちを応援したかったんです」と榎本。不動産情報や、タイの気候、生活費の目安、ビザの取り方など、現地で働くにあたって必要な情報を発信している。サイトの読者からは毎日のように相談のメールが届くという。

榎本は、自宅を使ったシェアハウスも運営している。タイで面接を受けたり住まい探しをしたりする日本人の足場にしたかった。「現地での生活を知ってもらうためにも、日本語ができるタイ人との相談の場もつくっています」。これまで30人弱を受け入れ、3分の1ほどがタイで仕事を見つけたという。

なぜタイで就職するのか。榎本が利用者からよく聞くのは「日本が不景気だから」「英語が使いたかったから」という理由だ。「相談を受けていると、新卒でタイを目指す人が増えているという印象があります」。

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バンコクのコンドミニアムから出勤する榎本浩一

ただ榎本は、新卒生には、社会人として初めは日本国内で働くことを勧めている。「日本の商習慣を知っている日本人だからこそタイで重宝され、この給料が出ているという面を忘れてはいけません」