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インスタントコーヒーやカップ麺……日本製品が大人気@色丹島

北方領土ってどんなとこ?
店員のハリサ・バルダチョワさん(65)は「品ぞろえはの豊富さが人気の秘密」=写真はいずれもウラジーミル・ラブリネンコ撮影
店員のハリサ・バルダチョワさん(65)は「品ぞろえはの豊富さが人気の秘密」=写真はいずれもウラジーミル・ラブリネンコ撮影

ブレンディやマキシム、キーコーヒーなど見慣れたインスタントコーヒーの名前がずらりと並んでいる。ラベルには日本語で、「日本の水で、たくみに香る。」「深いコクと豊かな香り」。まるで東京のスーパーにいるような錯覚をしてしまいそうだ。

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日本のインスタントコーヒーがびっしり。ウラジオストクから運ばれているが、日本のスーパーでもこんなに多くの種類はないのではとうなってしまった

ここは色丹島で最大のスーパー「グランドマーケット」。都内の小さなスーパー並みの広さの店内に、野菜からフルーツ、冷凍食品など1000種類以上の食品がところ狭しと並んでいる。ロシア産だけでなく、韓国や中国、日本などからの輸入品もたくさんある。パッションフルーツ、パパイヤといった南国フルーツが入荷することもあるそうだ。この店で18年働く店員のハリサ・バルダチョワさん(65)は「品ぞろえが豊富で、じっくり選んで買い物できるから、うちの店は人気があるの。通路も広いから、赤ちゃんのいるお母さんも、ベビーカーを押しながらゆっくり買い物ができるわ」と得意げだ。

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買い物客でにぎわう店内。広々として、ベビーカーでも問題なく買い物ができる

確かに日本メーカーのインスタントコーヒーの棚を見ても、ひいたコーヒーをフィルターで包んで手軽に本格コーヒーを味わえるドリップバッグコーヒーも含めて品ぞろえは抜群だ。実はロシア極東では日本のインスタントコーヒーのファンは多く、かなりの数のスーパーで普通に販売している。ロシア人の知人によると、例えば、同じ「ネスカフェ」のブランドでも、日本とロシアでは微妙に味が違うそうで、日本の味を好む人は少なくないという。いまでは日本のインスタントコーヒー人気はモスクワにまで広がっていて、サハリンなどではシャケやイクラなど海産物のお土産物屋にも並んでいるほどだ

ただ、値段は高い。UCCのインスタントコーヒー「職人の珈琲」は580ルーブル(約1000円)と日本の倍だ。色丹島から根室半島の納沙布岬まで70キロ余りの距離だが、直行の貨物船がなく、ウラジオストクやサハリンを経由して仕入れていることも一つの原因。こういう時はロシアに支配されていることを実感し、「日本との距離」を感じてしまう。

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UCCの「職人の珈琲」は580ルーブル(約1000円)と日本の倍だ

ほかにもカップ麺なら、日清カップヌードルは基本の味のほか、「シーフードヌードル」や外国向けの「ビーフ」や「チキン」などもある。マルチャンのホットヌードルも「醬油」と「はま塩」に加え、塩分30%オフをうたう「旨みしお味」という通な一品も。もちろん、韓国定番の真っ赤な「辛ラーメン」もあり、どれを選ぶか迷いそうだ。

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日本のお菓子は値段が220ルーブル(約400円)と高くても人気だ

ロシア極東と言うと、いまでも「生活が苦しい」といったイメージを思い浮かべる人は多いと思う。確かに1991年にかつてのソ連が崩壊した前後は、ロシアの経済が大きく混乱し、食べ物を買うために行列に並ぶ時期があった。特に北方領土はソ連が国策で生活を成り立たせていたこともあり、その影響は深刻だったという。ただ、プーチン大統領が誕生した2000年以降、ロシアの経済は急速に立ち直り、ロシア政府は北方領土を含む周辺地域の開発プランもつくっている。そのため、ここ数年で生活は大きく改善されてきた。

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おいしそうなピロシキ(ロシア風の総菜パン)も山盛りだ。価格は40~50(約70円から約90円)ルーブルとお手頃だ

色丹島は人口約2800人と、国境警備隊員しかいない歯舞群島をのぞいた3島の中で一番少ない。択捉島や国後島に比べて仕事が少なく、給料の水準も低いと言われているが、それでも食料事情はほかの島やロシア本土と変わらない。ちなみに色丹など、それぞれの島の名前はロシア語風にはなっているが、基本的には日本名のままで呼ばれている。

「最近の数年間で品数は大きく増えた。貨物船が頻繁に来るようになり、冷蔵コンテナなど設備もよくなった」と話すのは、食料品店を経営するイーゴリ・トマソンさん(52)。昔は冷蔵や冷凍といった物流設備がなかったため、ソーセージやバラ肉を運んだら、途中でカビが生えてしまったこともあったという。

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冷凍肉もたくさん

トマソンさんは色丹島生まれ。とても陽気な性格で、娘のイラナちゃんと一緒に取材に応じてくれた。その人柄から、食堂が併設された店内は、いつも客でにぎわっている。棚には、リンゴやミカン、ブドウなど色とりどりのフルーツが大きなかごに入れて置いてあり、すぐ横にあるジャガイモや青野菜なども山盛りだ。パンやお菓子のほか、ウォツカやビールなどのお酒も様々な種類が並ぶ。ロシアでは地域ごとの料理に違いはあまりなく、ジャガイモ料理やスープの材料など食品の種類はロシア本土とそれほど変わらない。価格は、小さめのジャガイモなら10個ぐらいで約70円、ニンジンは6~7本で約110円だ。ロシア料理で有名なスープ、ボルシチの材料であるビーツは1キログラム約90円。フルーツは少し高くて、リンゴが3~4個で300円前後だ。ロシア本土より少しは高いが、日本の価格を考えると、とても安く感じる。

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棚にはフルーツや野菜がいっぱい

食品は主に極東の物流拠点ウラジオストク港やサハリンの港から貨物船で運ばれてくるが、島にも農業や酪農をしている人がいる。野菜ならジャガイモやキャベツ、ニンジン、ニンニクなどが栽培され、家庭菜園でジャガイモなどをつくり、自給自足をしている人も珍しくない。牛や豚も飼育され、牛乳のほかロシア料理に欠かせないサワークリームやコテージチーズなどを作っている。面白いのはコショウで、北海道で栽培している品種の種を北海道から買ったのだという。色丹島は当然、気候が似ているので、うまく育てられるのは間違いないというわけだ。