欧米メディアは「軍事ディズニーランド」
2015年6月に公式オープンしたロシアの「愛国者公園」は、欧米メディアなどで「ミリタリー・ディズニーランド」とも呼ばれている。
園の目的は、文字どおり、子どもや若者たちの「愛国心や祖国への敬意を育む」ことで、「家族みんなで楽しめる」をアピールしている。
園の資料によると、敷地面積は東京ディズニーランドの100倍以上にあたる5500ヘクタール。ソ連時代から現在までのあらゆる兵器を展示した博物館エリアのほか、武器を持ってコンバットゲームや訓練を体験したり、様々なシミュレーターで戦場気分を味わう施設などがある。
ただ、あまりに敷地が広く、1日ではとてもすべての施設をまわれない上、ロシア語以外の案内はほとんどない。私も正直なところ、全容はよく分からなかった。
私が訪れたのは3月末の土曜。モスクワ中心部から1時間ほど電車に乗ってクビンカ駅で降り、さらにタクシーで15分ほどかかる。自家用車で訪れる人が多いのだろうが、公園の駐車場にとまっていた車の数も、地方の少し大きめのスーパーといった感じだった。
夏場や特別なイベントがある日はもっとにぎわっているらしいが、この日は3月末とは言えまだ寒く、週末なのに園内は閑散としていた。園内を移動する小型バスを待っていると、長渕剛を思わせるフォークソングが寒風に乗って聞こえてきた。戦場に倒れた友人をしのぶ歌のようだ。
園内で見かけた来訪客の多くは、家族連れだった。特に息子を連れた若い父親の姿が目立っていた。右翼的な強面ではなく、ほとんどは優しそうで、話せば上品で知的な男性たちだった。
「子どもに武器を見せに来た」
幼い子どもを連れていた管理職のセルゲイ・チョーチン(33)は「子どもに武器を見せてやろうと思って来た。子どもが軍人になるなら反対はしない。ふるさとは自ら守るべきだ」
14歳の息子と来ていたITコンサルタントのオレグ・スクルィーニク(42)は、ロシアが欧米と関係を悪化させていることについて聞くと、流暢な英語で「私は欧州各国に友人もいる。だが、ロシアはアンフェアに扱われていると感じる」「北朝鮮への対応を見ても、アグレッシブ(攻撃的)なのはむしろ米国ではないか」と話した。
モスクワ出張のついでにひとりで来たというマキシム・バブキン(40)は「こういう愛国心を育てる施設は絶対に必要だ」と言う。プーチン大統領も敬愛するピョートル大帝が好きだというバブキンは「歴史を見なさい。ロシアと戦った国は必ず負けるのだ」と話した。(敬称略)