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グローバル企業成功へのカギは 異文化を「数値化」する

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─文化の数値化とはどんなものですか。
国民文化や価値観の違いを数字で示そうという試みだ。指標は六つある。(1)権力格差(権力を持たない人がどれだけ国や組織の中でイニシアチブを取れるか)、(2)個人主義と集団主義(個人の利益と集団の利益がどう優先されるか)、(3)男性らしさと女性らしさがどれほど要求されるか、(4)不確実性回避(未知の状況にどれだけ不安を感じるか)、(5)実用主義(規範と実用性、どちらをより重んじるか)、(6)人生の楽しみ方(抑制的か充足的か)。

─誰でもそれぞれの国の文化については漠然としたイメージは持っていますが、あえて数値化することの意味はなんでしょうか。
日本文化を読み解いてみよう。日本は集団の利益を優先する文化だということは日本人も漠然と知っているだろう。だが、他の国と比べてどれほど違うのかとなると心もとないのではないだろうか。

我々が11万人に30の質問をするなどして導き出した調査結果によると、日本の「個人主義と集団主義」のスコアは46だ。調べた76の国と地域のうち35番目の数字だった。ざっくりいって、世界の半分は日本より個人主義志向が強く、残りの半分は日本よりも集団主義的だということがわかる。近隣のアジア諸国の人たちが、日本人はなかなか腹を割らないという印象を持つことがある。日本人が彼らよりも個人のプライバシーを優先しているからだ。数値化して初めて具体的に見えてくる世界がある。

─なぜ数値化が必要なのでしょうか。
日本企業もタイやインドネシアなどアジア各国で経済活動をしている。他の国の企業も同じだ。文化の違う国でビジネスを成功させるためには、異文化理解が欠かせない。会議の開始が10分遅れたことを時間通りと見なす国もあれば、ルール違反だと感じる国もある。こうした価値観の違いは、人事評価をする際にも考慮に入れる必要があるだろう。双方向のコミュニケーションを円滑にするために役に立つ指標だと考えている。

─グローバル化が進むと、人々の価値観はどう変わるのでしょう?
個人主義の度合いが強まり、先進国ではより生活を楽しむようになっているという流れはある。だがその潮流にも個人主義に大きく振れるときもあれば、そうでないときもあるし、不可逆的なものでもない。経済的に貧しくなれば、元の価値観に戻っていくこともあるだろう。

─国ごとの違いは小さくなっていますか。
はい。とはいえ、人間の振る舞いや行動には独自性が残る。スマートフォンのようなテクノロジーはいま、どこの国でも使われるようになっているが、よく見ると使い方が異なっている。フィンランドは社会的基盤として整備しているが、オランダではチャット用に頻繁に使われるといった具合だ。表面的な生活はテクノロジーで変わっているが、コアにある人間の価値観は変わっていない。国民文化は実にゆっくりとした時間をかけて変容していくものだと思う。文化は時間とともにどのように、なぜ変わるのかに今、関心を持っている。

(社会部記者 田玉恵美)


Gert Jan Hofstede

1956年、オランダ生まれ。集団生物学者。人間の社会的行動のダイナミクスに着目し、人間は予測不可能な存在ではないとの観点から、価値観察調査研究などを行う。共著に『多文化世界−違いを学び未来への道を探る』。