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トランプ当選、記者はすぐアメリカに飛んだ(1)

World Now 更新日: 公開日:

いま、成田空港の搭乗ゲートでこの原稿を書いています。これからアメリカに向かいます。ドナルド・トランプ氏の米大統領当選を受けて、GLOBE12月号でも、急きょこの結果を特集をすることになりました。その取材です。(GLOBE副編集長・大島隆)

トランプ生んだ「もう一つの宇宙」

選挙の結果は、驚きでした。

開票が進んでいた9日、私はCNNの速報をテレビで見ながら、デジタル編集部の仕事を手伝っていたのですが、お昼ごろに弁当を食べているとき、自分の手が震えていることに気づきました。これからアメリカに、そして世界に何が起きるのだろうか、と考えると、身震いがしたのです。

昨日、いろいろ考えました。頭に真っ先に浮かんだ言葉は、「二つの宇宙」。2週間ほど前、共和党の政治家で元下院議長のニュート・ギングリッチ氏がテレビで言った言葉です。

トランプ氏を一貫して支持していたギングリッチ氏は、FOXニュースの番組で、司会のメガン・ケリー氏と激しい口論になり、こう言ったのです。

ギングリッチ「これからの2週間は、二つの別の宇宙の戦いだ」

ケリー「ペンシルベニアでトランプが勝つと思っているんですか?本当に?すべての世論調査はクリントンが優勢と示してますよ」

ギングリッチ「だから、二つの別の宇宙があるんですよ!」

結果として、ギングリッチは正しかったのです。「もう一つの宇宙」はどんどん膨張し、その膨大なエネルギーを選挙の一票に集中させ、世界をひっくり返しました。ところが東海岸や西海岸の都市に住む人々や大手メディア、政治や選挙の専門家には、それが見えていませんでした。

「持てるもの」と「持たざる者」。既得権益を守る「エスタブリッシュメント」と、「取り残された」と感じる人々。保守とリベラルという左右の分断や人種間の分断もさることながら、貧富の格差拡大やグローバル化で新しい分断が生まれ、いまやアメリカという一つの国の中に、互いを全く理解できない、二つの世界が生まれています。

空港に向かう電車を待っているときに、アメリカ人の女性と話しました。

「私はオレゴンのポートランド出身だけど、きっと町の人たちは落ち込んでいると思う」。ポートランドは民主党が強い「ブルー」の町です。

「私たちの国はいま、本当に分断されている。けれど、求めているものは同じはず。ただ、そこにどうたどり着くかが違うだけ。きっとわかり合えると信じてる」。彼女は、自分に言い聞かせるように言いました。

彼女の言うとおりかもしれないし、相当難しいかもしれません。

私は去年まで10年近く、アメリカで暮らしてきました。マサチューセッツ州、ニューヨーク、ワシントンDCと、いずれもブルー・ステートと呼ばれるところです。だからこそ、選挙などの取材では地方の小さな町で人々の声をなるべく多く聞き、「もう一つの宇宙」を理解しようと努めたつもりでした。けれど、ここまでの結果は予想できなかったということは、まだまだ理解が浅かったということです。

明日からは、これまでの取材で出会った「もう一つの宇宙」に住む人々を再び訪れるつもりです。何がトランプ大統領を生んだのかを、もう一度探りたいと思います。