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悪いやつには必ず「共犯者」がいる

ニューヨークタイムズ・マガジンから
Photo: AP
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Behind Every Villain Stands Someone 'Complicit' ニューヨーク・タイムズ・マガジンから

1月初旬、サンフランシスコのツイッター本社の社屋にある言葉が映し出された。「@ジャックは#共犯者だ」。同社の共同創業者でCEOのジャック・ドーシーが、権力に加担して悪いことをしていると、ある活動家グループが訴えたのだ。

彼らはドーシーをこう非難した。ドナルド・トランプ大統領に発信者と受け手の間に介在者のいないプラットフォームを与え、北朝鮮の金正恩を「核のボタン」の大きさで挑発するのを可能にした、と。

また、ニューヨーク・タイムズの暴露記事は明らかにした。ハリウッドの大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインがいかに周囲を巻き込んで、一連の性的虐待を可能にしたかを。同紙が「ハーベイは、(彼の行為を悪事だと)理解している人としていない人とその間にいる人々で、共犯体制をつくり上げた」とした通り、「中間」の存在こそが、ある人物が罰を受けないで済むような空気を生んでいる。それはまさに、昨今攻撃され続けている「悪人のみならず、悪人のために道をあけた人たち」のことだ。

「共犯」の定義の大雑把さは、誰かの評判を汚そうとする試みにも使われかねない。昨年末には、女優のメリル・ストリープとワインスタインが並んだ写真に「彼女は知っていた」と書かれたポスターが、ロサンゼルス中に貼られた。右翼のストリートアーティストたちによるものだった。共犯は全身を冒す病のようなもので、個人を悪者にするだけでなく、その人物が関わった制作全体をとがめるのだ。

行動してもしなくても、口を開いても閉ざしても、付き合いがあってもなくても悪への加担はできる。不適切な状況を逆手にとって、自分の著書やブランドを売り込むことだって。しかし時には脅されたり洗脳されたりして共犯を強制されているように感じることもあるだろう。人が見て見ぬふりをする理由には、自分の仕事や評価に対する不安、自分を取り巻く社会構造に対する責任逃れがあるのだろう。

米国では最近も、医師が鎮痛剤「オピオイド」の中毒性を知りながら処方し、薬剤師も加担した結果、中毒死が多発した。ミシガン州フリント市で起きた水道水の鉛汚染は、経費節減のために水源を切り替えたミシガン州と、腐食した水道管から鉛が溶け出すのを放置したフリント市の共犯の結果だと訴えられた。

米国のオンライン辞書「ディクショナリードットコム」は2017年、「共犯」を「今年の言葉」に選んだ。4月、イバンカ・トランプがあるテレビ番組で「共犯が何を意味するか分からない」と発言したことで検索数が急上昇したのだ。

民主党支持者の一部はこの年の初めには、彼女が穏健派の声を代弁し、リベラルでコスモポリタン的な女性の価値観に父親をつなぎとめることを期待していた。しかし3月には、コメディー番組が彼女を題材にこんなパロディーCMを流した。

「共犯:止められるのに止めない女性のための香水」

メディア研究の第一人者ロジャー・シルバーストーンは、我々が何を発信するかだけでなく、どう受け止めるか、つまり受動的に何も考えずに受け止めるか、能動的かつ批判的に受け止めるかについても責任が伴うと説く。

知っていながら知らないふりをする。目撃したものを気にかけようとしない。人間関係や現状維持のために、しらばっくれる……。こうしたふるまいが、ハリウッドはもとよりあらゆる職場でのいじめやハラスメントが見逃され続ける風土を生んでいるというわけだ。

いま、こんなにも「共犯」という言葉を耳にするのは、それが寛容さの問題だからだ。虐待が明るみに出れば出るほど、私たちは、それを許してきた人たちに対して、我慢できなくなる。

ただ難しいのは、どの程度までを求めるのかを整理することだ。

ドーシーは共犯者だろうか、ストリープは? 共犯は、ほぼすべての行動や言葉、あるいは行動しないことや沈黙の中に見いだしうるからだ。一つ明らかなのは、私たちが、自分であろうと他人だろうと、間違ったことに加担する者を、これまで以上に追い詰めたがっていることだ。(カリーナ・チョカーノ、抄訳 菴原みなと)©2018 The New York Times

 

Carina Chocano

ロサンゼルス在住のライター。 「Elle」「Vogue」「Rolling Stone」「Wired」などに寄稿するほか、「Los Angeles Times」などでは映画・テレビ批評家としても活動。

 

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