最新の世論調査の情勢
各種の世論調査をまとめる政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、各種世論調査の結果は最終盤でもほぼ拮抗しています。
異例ずくめの2024年選挙戦、ハリス氏vs.トランプ氏
2024年のアメリカ大統領選挙は、カマラ・ハリス副大統領と、ドナルド・トランプ前大統領による一騎打ちの構図です。2人の選挙戦は異例ともいえる経過をたどってきました。
トランプ氏:九死に一生を得た暗殺未遂事件
トランプ氏は2024年7月13日、野外選挙集会を開いていた米ペンシルベニア州バトラーで演説中に銃撃され、右耳に軽傷を負いました。会場外からトランプ氏を狙撃したとみられる20歳の男が警護隊によって射殺されたほか、集会に参加者していた男性1人が巻き込まれて亡くなり、男性2人が銃弾を受けて一時重体に陥りました(その後、退院したと報道)。
わずかな差で頭部に銃弾が当たっていれば死亡する危険もあったトランプ氏ですが、右耳から出血させながらも、周囲を固めて降壇させようとするシークレットサービスを押しとどめて右拳を繰り返し突き上げ、会場に向けて「Fight!Fight!Fight!」と呼びかけると、支持者は「USA!USA!USA!」と熱狂的に応じました。
その後、トランプ氏は「暗殺未遂の危機をくぐり抜けた強い指導者」を印象付ける選挙キャンペーンを展開。共和党支持者の団結は一段と高まったと報じられました。
トランプ氏は10月5日には、このペンシルベニア州バトラーの野外会場で再び選挙集会を開き、演説で「私は決して屈しない。死に直面してもだ」と訴え、選挙戦終盤の支持固めを行っています。
トランプ氏をめぐっては、9月にも所有するフロリダ州のゴルフ場の近くでライフル銃を持って潜伏していたとして、男が暗殺未遂罪で起訴されています(男は無罪を主張)。
ハリス氏:わずか100日余りの選挙戦
カマラ・ハリス副大統領が出馬表明をしたのは2024年7月21日、投票日までわずか100日余り前のことでした。それまでの民主党候補は現職のジョー・バイデン大統領(81)で、選挙の構図はバイデン氏とトランプ氏の勝負で固まっていると思われていました。
事態が動いたのは、6月27日に行われた全米に生中継されたバイデン氏とトランプ氏によるテレビ討論会でした。今回の選挙戦で初となる直接対決の場で、バイデン氏は度重なる言い間違いや意味の通らない発言、うつむいたまま数秒間動かなくなるなどの失態を重ね、党内や支持者らに高齢不安や動揺が広がったのです。
バイデン氏本人は、その後も選挙戦の継続を望んだと伝えられていましたが、民主党支持者らの動揺は収まらず、7月21日、再選を断念して大統領選から撤退する意向を明らかにし、後継にハリス副大統領を指名しました。ハリス氏はただちに出馬を表明し、党内手続きを経て翌8月の民主党大会で「全ての米国人のための大統領になる」と指名受諾演説を行いました。
通常、アメリカの二大政党である民主党と共和党は、大統領選挙に先立って数カ月間かけて党内で予備選を行い、複数の候補者から1人に絞り込みます。その過程で、重要政策へのスタンスや理解、リーダーシップや人柄が吟味されます。過去には、予備選期間中の不用意な発言で失速した候補者もいました。
ハリス氏は2020年の大統領選に立候補しようとしましたが、思うように支持が広がらず、予備選が始まる前の2019年12月に撤退していました。今回、バイデン氏の後継指名を受けてのハリス氏の立候補には、こうしたアメリカ大統領選の伝統でもある民主的プロセスを欠いているという批判もつきまといます。今回の異例の短い選挙戦は、ハリス氏の候補者としての弱みをカバーするものとみる向きもあります。
大統領候補のプロフィール
次期大統領となる二大政党候補のプロフィールをおさらいしておきましょう。
カマラ・ハリス氏(Kamala Harris)のプロフィール
1964年10月20日、カリフォルニア州オークランド生まれの60歳。インド出身のがん研究者の母と、ジャマイカ出身の父との間に生まれた妹が1人います。幼い頃に両親が離婚し、主に母親のもとで育ちました。
首都ワシントンにある黒人の名門大学ハワード大学で経済学と政治学を学び、カリフォルニア大学のロースクールを修了後、カリフォルニア州の地方検察官になりました。
サンフランシスコ地区検事やカリフォルニア州司法長官を経て2016年に上院議員に当選。2020年大統領選に立候補しようとするも、党内の支持が集まらずに撤退しました。その後、大統領選に出馬したバイデン副大統領(当時)により、副大統領候補に抜擢されました。バイデン氏の当選により2021年からアメリカ初の女性副大統領を務めています。
私生活では、2014年に弁護士だったダグ・エムホフ氏と結婚。エムホフ氏と前妻との子ども2人を育てています。エムホフ氏はハリス氏が副大統領就任後は弁護士活動を停止して、「セカンド・ジェントルマン」に徹しています。実妹の弁護士マヤ・ハリス氏も選挙戦に関与しています。
ドナルド・トランプ氏(Donald Trump)のプロフィール
1946年6月14日、ニューヨーク市生まれの78歳。父親から不動産業を引き継ぎ、カジノやホテル、ゴルフ場などの経営にも参画。マンハッタンの五番街などに多くの豪華ビルを持ち、「不動産王」と呼ばれました。
1990年代から「ミス・アメリカ」コンテストの製作を担い、2004年からは、司会者として番組にも出演。番組の中で、トランプ氏の企業でのポスト獲得を競う挑戦者をふるい落とす際のセリフ「おまえはクビだ」は、全米で流行語になり、自信たっぷりの態度と歯にきぬ着せぬ毒舌で人気を集めました。
2016年の大統領選に立候補するまで政治経験はありませんでしたが、知名度と人気を背景に共和党の予備選を勝ち抜き、民主党候補だったヒラリー・クリントン元国務長官との接戦を制して2017~2021年に第45代大統領を務めました。
選挙戦のスローガンは「Make America Great Again(アメリカを再び偉大な国にしよう)」(通称「MAGA」)。大統領在任中は、減税や規制緩和などの経済政策、強硬な移民抑制策、「米国第一主義」を掲げての保護主義的な通商政策などを実行しました。任期中には娘のイバンカ氏を大統領補佐官に、その夫(娘婿)のジャレッド・クシュナー氏を大統領上級顧問に登用するなど、ファミリーを重用しました。
私生活では、過去に2度の離婚歴があり、現在の妻はスロベニア出身の元モデル、メラニア氏。イバンカ氏ら前妻との子どもを含めて5人の子どもがいます。
激突する政策:経済、外交、社会問題…争点は?
ハリス氏とトランプ氏は、重要施策において異なる立場をとっています。大統領選の争点をいくつか挙げてみましょう。
経済政策
ハリス氏……生活費の引き下げを最優先事項にすると公約しています。中間層と労働者階級に対する減税を実施し、富裕層と企業への税負担を増やすとしています。中小企業の支援も重要な柱です。特に、マイノリティーや女性が経営する企業に対する資金援助や税制優遇措置を提案しています。インフラ整備にも力を入れ、道路や橋、公共交通機関の改修・建設を通じて雇用を創出し、経済を活性化させることを目指しています。再生可能エネルギーへの投資を推進し、クリーンエネルギー産業を育成することも掲げています。
トランプ氏……物価高とインフレ対応に向けた「就任後100日計画」で、人々の生活支援を公約にしています。中間層に対する所得税の減税を推進し、法人税率を引き下げることで企業の投資を促進して雇用を創出することを掲げています。またビジネスに対する規制を大幅に削減し、製造業復活を目指します。また、インフラ投資を拡大します。エネルギーの安定供給を重視し、外国のエネルギーに依存せず、エネルギー自給自足を達成すると強調しています。再生可能エネルギーの開発も進める意向を示していますが、化石燃料に比べると優先順位は低いとされています。
移民政策
ハリス氏……国境管理を強化し、安全かつ効率的な移民制度を確立することを目指しつつ、不法移民に対しても人道的な対応を重視し、収容施設の改善や、移民の権利を尊重するための政策を推進します。幼少期にアメリカに連れてこられた不法移民(ドリーマー)に対する保護を強化する方針です。DACA(Deferred Action for Childhood Arrivals)プログラムを維持・拡大し、ドリーマーに市民権への道を提供することを目指しています。
トランプ氏……全米に約1100万人いると推計される不法移民に対して大規模な「強制送還」を実施することを看板政策に掲げています。2017年に大統領就任後はメキシコとの国境に「壁」を建設する政策を進め、メキシコからの不法移民や麻薬の流入を防ぐための重要な手段と位置付けました。バイデン政権発足以降に不法移民が急増したことで追及を強めています。
対中政策
ハリス氏……バイデン政権の対中政策を引き継ぐ方針を明確にしています。中国による東シナ海や南シナ海での領有権主張に対して強く反対し、小さな隣国への威圧行為を批判しています。特に、南シナ海での中国の行動については、ASEAN首脳との会合で厳しく批判しています。またハリス氏は上院議員時代から、中国に対する人権問題に対して強硬な姿勢を示してきました。香港の民主活動家や新疆ウイグル自治区の少数民族に対する弾圧について、制裁を科す法制化を超党派で進めるなど、具体的な行動を取っています。
トランプ氏……アメリカの国益を最優先に考えた外交政策を掲げています。特に、中国との貿易不均衡を是正するための強硬な姿勢を維持し、国際的な同盟関係を再検討する方針です。また、NATOなどの多国間協定についても懐疑的で、アメリカの負担を軽減するための見直しを行うとしています。これは、環太平洋経済連携協定(TPP)や北米自由貿易協定(NAFTA)からの離脱、そして同盟国に対する負担増など、広範な政策変更を伴う可能性があります。
ウクライナ支援
ハリス氏……バイデン政権の立場を引き継ぎ、ウクライナが失った領土の大部分を取り戻すことを目指す政策を維持しています。ハリス氏は、領土の譲歩を含むいかなる取引も「降伏の提案」として退けています。ウクライナに対する追加の武器や長距離ミサイルの提供など、軍事支援を強化する方針を示していますが、NATOの直接介入には慎重です。
トランプ氏……トランプ氏は、直ちに休戦を求めると約束しており、詳細な条件を明言せずに交渉を開始する方針を示しています。ウクライナ支援についてもアメリカの国益を最優先に考え、経済制裁や軍事支援について再検討する可能性を繰り返し示唆してきましたが、2024年9月にニューヨークでゼレンスキー大統領と直接面会をした際には「ただちに戦争を終わりにすべきだという点では一致している」と両者の関係が円満であることを強調しています。
イスラエル政策
ハリス氏……イスラエルの自衛権を強固に支持しつつも、パレスチナ人の権利や人道危機にも配慮する姿勢を示しています。
トランプ氏……イスラエルに対する全面的な支持を強調し、パレスチナに対する配慮はほとんど行わない一方的な政策を取っています。
銃規制
ハリス氏……銃暴力を減らすために厳格な銃規制を推進しています。殺傷能力の高いアサルトウェポン(突撃銃)や10発以上の弾丸をこめられる弾倉の販売禁止、購入者の厳格な身元確認など規制強化を支持しています。
トランプ氏……全米ライフル協会(NRA)からの支持も受けており、アメリカ合衆国憲法修正第2条に基づく銃所有の権利を強く支持しています。トランプ氏は、銃乱射事件の原因として精神疾患を強調し、精神疾患の治療や対応の強化を主張していますが、銃規制自体の強化には消極的です。
人工妊娠中絶の賛否
ハリス氏……女性の権利、特に人工妊娠中絶の権利を強く支持してきました。2024年3月には副大統領として初めて中絶を行うクリニックを訪れて、中絶が女性の健康と自己決定権において重要な問題であると強調しています。また、中絶サービスへのアクセスを確保するための政策を推進しています。特に低所得者や地方に住む女性が必要なサービスを受けられるようにするための支援を提案しています。
トランプ氏……保守派や宗教的な支持者からの支持を得るため、中絶反対の立場を強調しています。人工妊娠中絶が道徳に反するものであり、生命を尊重するべきだと主張しています。トランプ氏の大統領任期中に指名された保守派の最高裁判事により2022年には中絶の権利を憲法が保障する権利と認めた1973年判決を覆す裁定が出されました。一方で、トランプ氏自身はレイプや近親相姦、母体の安全を理由にした中絶は容認するべきだという考えを表明しています。その上で、再選されれば、一部の保守派が求める中絶を一律に禁じる連邦法には拒否権を行使すると発言し、その理由は「各州で決めるべきことだから」としています。
アメリカ大統領選挙の仕組み
アメリカ大統領選挙は、間接選挙という少し複雑な仕組みを採用しています。有権者は大統領を直接選ぶのではなく、「選挙人」を選びます。そして、大統領選の一般有権者の投票ののち、各州で行われる投票で、選挙人が各州の投票結果・ルールに基づいて投票し、大統領が決まります。
選挙人……大統領選挙で、各州に割り当てられた人数の代表者を選出します。
勝者総取り方式……全米50州のうち48州と首都ワシントン(選挙人3人)で採用されている制度で、州内の一般投票で最も多くの票を獲得した候補者が、その州の選挙人をすべて獲得します。
メイン(選挙人4人)とネブラスカ(同5人)の2州では、「勝者総取り」ではなく、州内全体で最も多かった候補が2人を取り、残りを各下院選挙区で最も票が多かった候補が1人ずつ取る仕組みを採用しています。
各州に割り当てられる選挙人の数は、その州の人口によって決まります。人口の多い州ほど、多くの選挙人を持ちます。そして、大統領に選ばれるには、538人いる選挙人の過半数である270人以上を獲得しなければなりません。
2016年の大統領選で、民主党候補のヒラリー・クリントン氏の全米での得票総数は、共和党候補のドナルド・トランプ氏を280万票以上も上回っていましたが、この「総取り」方式により敗北を喫しました。つまり、全米の得票総数で相手候補より多くの票を獲得したとしても、勝つとは限らないのです。
勝敗を左右する激戦州「スウィング・ステート」
アメリカ大統領選挙は、州ごとに割り当てられた選挙人を獲得した候補が勝利する仕組みです。そのため、僅差で勝敗が決まる「激戦州」と呼ばれる州が、選挙結果を大きく左右します。
アメリカのNGO「USA Facts」によれば、前回2020年の大統領選で、バイデン氏とトランプ氏の2大政党候補の得票差が3ポイント以内だった「激戦州」は次の7州です
バイデン氏が勝利した2020年選挙では、上記「激戦州」7州のうち、ノースカロライナを除く6州でバイデン氏が競り勝ちました。
USA Factsによると、1992~2020年の過去8回の大統領選で、50州のうち実に26州で、少なくとも1回は3ポイント差以内の僅差で勝敗が決まりました。
カリフォルニア、テキサスに次いて30人と全米屈指の選挙人を擁する南部フロリダ州も、選挙のたびに当選候補の政党が変わる「激戦州」として知られています。ネバダ州と並んで8回のうち5回もの大統領選で、3ポイント差以内の僅差で勝敗が決まりました。
一方で、「スウィングしない州」も存在します。USA Factsによると、1988年以降、50州のうち20州と首都ワシントンでは、一貫して同じ政党の候補者が勝利しています。
また、非常に接戦となった場合、「総取り方式」を採用していないネブラスカ州とメイン州が最終的な大統領選の「キャスティングボート」を握る可能性もあります。選挙人1人や2人の違いが、大統領選の結果を変える可能性もあるのです。
前回2020年選挙の混乱と連邦議会議事堂襲撃事件
バイデン氏がトランプ氏に勝利した前回2020年の大統領選で起きた混乱を覚えているでしょうか。
2020年11月3日に一般投票が行われた前回大統領選挙は大接戦となり、バイデン氏は約8100万票、トランプ氏は約7400万票を獲得。538人の選挙人のうちバイデン氏が306人、トランプ氏が232人を獲得しました。再選を目指した現職大統領の敗北は、1992年にビル・クリントン氏に敗れたジョージ・ブッシュ大統領(父)以来、28年ぶりのことでした。
11月7日に激戦州の東部ペンシルベニア州で勝敗が判明し、アメリカ主要メディアが「バイデン氏当選確実」の報を流します。
同日にバイデン氏が勝利演説をした後もトランプ氏は敗北を受け入れず、「この選挙はまだ終わりにはほど遠い」などとする声明を発表。アメリカ大統領選で120年以上の伝統となっている、敗れた候補が行う敗北宣言をしませんでした。
さらに「選挙をめぐる不正が起きている」と具体的証拠を示さずに主張し、法廷闘争に持ち込む構えを変えませんでしたが、各州で起こした異議申し立ての訴訟は続々と棄却されたり、敗れたりします。
11月13日に全50州での勝敗が判明。トランプ氏は、11月15日になってようやく、「彼(バイデン氏)が勝利したのは、選挙が不正だったからだ」とツイートしますが、正式な敗北宣言を拒み続けます。
12月14日に各州と首都ワシントンで選挙人による投票が行われ、一般投票の結果通り、バイデン氏が次期大統領に選出されます。
事件が起きたのは、大統領就任式まで2週間と迫った2021年1月6日のことでした。この日、首都ワシントンにある連邦議会議事堂では、大統領選の投票結果を確定させるための上下両院合同会議が開かれていました。
ところが、敗北を受け入れないトランプ氏支持者がこの日に合わせて計画したホワイトハウス近くの集会で、トランプ氏は支持者に向けて「大差で(大統領選に)勝った」と虚偽を述べ、「死にものぐるいで戦わなければ、この国はこれ以上もたない」「決して敗北を認めない」などと演説。議事堂での抗議を呼びかけました。
すると、集会参加者は約2キロ離れた連邦議会議事堂に向けてデモ行進を開始。支持者の一部が、警察が設置したバリケードを突破して敷地内に侵入。午後2時すぎに、窓やドアを破って議事堂内部になだれ込んだのです。議事堂の一時占拠は、暴徒が排除されるまで約4時間続きました。この襲撃事件で、多数が負傷し、警察官1人を含む5人が死亡しました。
重大な結果を受けて、トランプ氏は6日、議事堂に侵入した支持者に対して「家に帰るときだ」などと述べる動画をツイッターに投稿。ただ、動画の中では「選挙が盗まれた」「不正選挙だ」と、混乱の原因になっている、根拠のない主張を繰り返しました。
しかし、7日夜には態度を変えます。トランプ氏はツイッターに議事堂への乱入事件について、「全ての米国人と同様に、暴力、無法、大混乱に強く憤った」と非難する動画を投稿。乱入事件を起こした支持者たちに対し、「あなたたちは我々の国を代表していない。法律を破った者たちへ、あなたたちは代償を支払うだろう」と強く警告しました。
米ツイッター社(当時)は8日、「暴力をさらに誘発する恐れがある」と指摘して約8870万人のフォロワーがいたトランプ氏のアカウントを永久凍結する措置をとりました。(2022年10月末にツイッター社を買収した実業家イーロン・マスク氏によって同11月にトランプ氏のアカウント凍結は解除されました)
トランプ氏は襲撃事件直後の2021年11月13日に「反乱の扇動」で民主党が多数を占める(当時)下院から弾劾(だんがい)訴追されます。上院での弾劾裁判では共和党議員の一部が有罪判決を支持するも、出席議員の3分の2以上の賛同に届かなかったため、無罪評決に終わりました。
民主的に行われた選挙結果を暴力で覆そうとする連邦議会議事堂襲撃事件は、アメリカにおける分断の深さと、民主主義の後退を歴史に刻む結果となりました。
本選から就任式まで注目の日程とポイント
本選とそれ以降の重要な日程とポイントを押さえておきましょう。
2024年11月5日 大統領選挙投票日 一般有権者による投票が行われます。
2024年12月17日 選挙人投票 各州の一般投票結果に添って投票が行われます。
2025年1月6日 連邦議会の上下両院合同会議で大統領選の投票結果が確定されます。
2025年1月20日 大統領就任式 第47代大統領の就任式が行われます。
アメリカ大統領選をめぐるトリビア
選挙制度や過去の選挙結果から見えてくる興味深い事実をご紹介します。意外なトリビアを知って、さらに選挙について詳しくなりましょう。
アメリカ大統領選の一般投票日はなぜ11月?しかも週末ではなく「火曜日」なのか?
大統領選挙は、11月の最初の月曜に続く火曜日に行われます。これは、19世紀に農民が投票に行くのに便利なように定められた名残なのだそうです。
11月は、春から初夏の種まき、秋口の収穫の農繁期を避け、まだ同時に冬期の厳しい気候を避けて選ばれました。
19世紀、人々は投票所から遠く離れた畑や農場などで働いており、投票所への往復が2日がかりということもありました。また日曜日は教会に通い、水曜は市場が開かれることが多かったため、それらとぶつからない火曜日が投票日として選ばれました。
4期も務めた大統領がいた
アメリカ大統領の任期は1期4年とされ、再選は1回のみ認められています。つまり、通常は最大で2期8年までしか大統領を務めることができません(別の大統領から2年未満の任期を引き継いだ場合は、自身の再選を含めて最大10年になります)。これは、権力の集中を防ぎ、民主主義を維持するために定められたルールです。
きっかけとなったのは、第32代のフランクリン・D・ルーズベルト大統領です。ルーズベルト大統領は世界恐慌や第2次世界大戦といった未曾有の危機に際し、類まれなリーダーシップを発揮し、国民から絶大な支持を得ていました。その結果、1933年から1945年までの12年間、4期連続で大統領を務めました。しかし、彼の死後、権力の長期化による弊害を防ぐため、大統領の任期を制限する修正憲法が制定されました。
最年少と最高齢は?
アメリカ大統領選の候補者は、選挙時点で35歳以上である必要があります。これまでで最年少の就任はセオドア・ルーズベルトの42歳、最高齢はジョー・バイデン氏の78歳です。
候補者になるには、このほかにアメリカ生まれのアメリカ市民で14年間以上アメリカに居住していること、という条件もあります。
莫大な選挙費用
アメリカ大統領選には莫大な費用がかかり、アメリカ公共ラジオNPRは、前回2020年の選挙では、バイデン陣営とトランプ陣営を合わせて約36.5億ドル(1ドル105円換算で約3830億円)を集めたと報じています。また政治資金調査を行うアメリカのNGO「Center for Responsive Politics」は、2020年大統領全体で66億ドル(同6930億円)が費やされたと推計しています。
2024年にバイデン大統領に代わり、7月に急遽出馬を表明したカマラ・ハリス氏は9月末までに10億ドル(1ドル150円換算で1500億円)の選挙資金を集めたと報道されています。