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最大のビジネスチャンス「脱炭素化」にどう挑むか

PR by 三菱商事 公開日:
(左から)三菱商事の矢作彰悟氏、北島シェリー氏、高納規彰氏、原田雅暉氏、奥村龍介氏

社内に新たな風を BEC加入への熱い思い

── 三菱商事がBECへの参画を発表したのは2022年4月です。奥村さんと原田さんは、参画の検討段階から携わっていたそうですね。

原田 20217月に初めてBreakthrough Energy Catalyst(以下、BEC)と出会い、彼らの構想を聞きました。ビル・ゲイツ氏の理念には強く共感したものの、世界初の試みであるがゆえにプロジェクトの全体像の把握が難しく、悶々(もんもん)と悩んでいました。そんな時、ヒューストンにいる奥村から電話がかかってきて、「BECに参画できる可能性は、今は1%未満かもしれないが、こんなチャンスはめったにない。あまり気負いすぎず、社内に新しい風を吹かせることを目標に検討してみよう」と力強く背中を押してもらいました。 

その後、奥村と昼夜を共にしてBECざんまいの日々が始まりました。BECに対してはアジアのアンカーパートナーとして三菱商事が参画する意義を理解してもらうべくプレゼンを重ね、社内に対しても全く新しいBECの取り組みについて粘り強く説明を続けました。その結果、気づけば一人、また一人と賛同する仲間が増え、最終的には経営陣の強い後押しがあって、BEC参画にこぎつけました。「1%未満の可能性でも思いは伝わり、実現できる」と、結果的に三菱商事という会社の懐の深さに触れることとなり、これからもこの会社でチャレンジを続けていきたい、と大きな励みになりました。

(左から)高納氏、原田氏

奥村 私は、米国の経営学者マイケル・ポーターが提唱した、事業会社が社会課題に取り組みながら経済的価値を追うという「CSV(共通価値の創造)」・「フィランソロピー(利益を第一の目的としない社会貢献)競争戦略」の発想を体現しているプログラムだと思いました。実際、フィランソロピーと産業界が融合しているBECの体制は革新的で、吐故納新(とこのうしん)の大切さを実感しています。気候変動の解決は今世紀の人類の責務ですが、その実現には脱炭素を巨大産業化することが必要です。それをビル・ゲイツ氏は「A huge economic opportunity(巨大なビジネスチャンス)」と表現しています。

── 三菱商事内での連携についても伺います。脱炭素事業には、既存の産業グループの枠組みを超えた連携が必要だと思いますが、シナジーを生むために心がけていることは。

北島 BECが対象としている脱炭素事業をはじめ、EX(エネルギートランスフォーメーション)関連の領域は、一つの営業グループには収まらない取り組みが多いです。Vol.2でも話に出ていた、SAF(持続可能な航空燃料)の原料が、大豆油や牛脂といった食品産業グループと関わりがあるという話はその好例ですね。

BECは、新技術と各産業、需要側と供給側の“Catalyst”(触媒)となることを標榜(ひょうぼう)していますが、私自身はコーポレート担当として「社内の触媒」となっていけたらと考えています。北米三菱だけでなく、カナダ三菱やメキシコ三菱とも日々の連携に努めていますし、また、デジタルツールは駆使しつつも、対面でのコミュニケーションや情報交換もとても大事にしています。

北島氏

奥村 私が心がけていることの一つは、コミュニケーションのハードルを極限まで下げることです。矢作はSAF担当、高納はクリーン水素・LDES担当、原田はDAC担当、というように、それぞれ担当がありますが、私は自分で「AMA担当」と名乗っています。“Ask Me Anything”、つまり「僕に何でも聞いてね」と(笑)。実際、北島のおかげでデジタルツールの整備も進んでいるので、気軽な問い合わせがいろいろと寄せられます。情報管理は厳重にする必要がありますが、とにかく何を聞かれても大丈夫なように日々慣れない勉強をしています。

世界的企業と政府と 連携が生む可能性

── BECには、案件選定などに主体的に関わる「アンカーパートナー」がいますが、ここには三菱商事のほか、マイクロソフト、鉄鋼大手アルセロール・ミッタル、石油大手シェルといった世界的大企業が名を連ねていますね。どんな交流がありますか。

原田 マイクロソフトは、2030年時点で「カーボン・ネガティブ」を掲げているので、Vol.2でも話に出たカーボン・クレジットを世界最大級レベルで調達している会社です。

DACのプロジェクトチームにおいても、業界をリードするマイクロソフトの担当者から具体的なペインポイント(悩みの種)や要望を聞けるのは、新規事業や協業を模索する上で非常に参考になります。

高納 アルセロール・ミッタルは、鉄鋼分野の脱炭素に向けて、技術の確立が非常に難しいとされてきた、水素のみを使った直接還元製鉄を本気で実現しようとしています。プロジェクトチームでの打ち合わせでも、常にロードマップに立ち返りながら考え、話し合い、調整していて、その姿に学ぶことは多いです。脱炭素化を目指す仲間として、意見交換の機会はより増えていますね。

(左から)高納氏、原田氏

矢作 シェルは、以前から液化天然ガス(LNG)事業の重要なパートナーでしたが、BECのアンカーパートナー同士となったこともあり、つい先日も新規の脱炭素関連事業について協業の可能性を探る会議を持ったところです。

── そうした民間企業同士のつながりにとどまらず、BECでは官民連携による推進を掲げています。脱炭素社会の実現に向けて、官民がともに取り組むことの意義とは。

原田 BECが投資対象としているのは、研究開発段階が完了した革新的な脱炭素技術、かつ、それを商業化するためのスケールアップへの挑戦を目指しているプロジェクトです。この段階では、大規模な設備が必要となるため、民間だけ、あるいは政府だけで推し進めることは容易ではありません。そこで、官民連携が非常に重要となるのです。 

欧米では政府がすでに動き始めており、スケールアップ段階の支援にどんどん資金が振り分けられ始めています。脱炭素支援に関する国際間連携も進んでいるため、今後、欧米以外の地域でも「スケールアップ段階の支援にもっと取り組んでいこう」という機運が高まるのではと期待しています。

社会課題を解決し、共創価値をつくるために

──5月に発表された三菱商事の中期経営戦略2024では、「MC Shared Value(共創価値)の創出」という理念が掲げられています。これはBECの理念とも深く重なり合うところだと思いますが、BECを通して得たものを今後、三菱商事ではどのように生かしていきますか。

矢作 いまSAFのマーケットは、制度や体制の整っている欧米が中心です。したがって、まずはBECを通じてSAFの大量生産・社会実装を欧米で確実に実現させること。そして、それをモデルとして、日本やアジアへの本格導入を図っていければと思います。そのために、各産業のパートナーや政府と力を合わせて、SAF導入に向けた素地を作っていく必要性も感じています。

矢作氏

原田 脱炭素社会への移行で新たな産業が興るということは、裏を返せば、いまある産業が存続できなくなる可能性があるということです。ですから、BECの活動やパートナーとのネットワークで得た最先端の知見・情報をもとに、社会にアンテナを張って世の中の動きを正確に把握することも大切な役割だと思っています。それによって、過度に未来を怖がりすぎることも、逆に楽観し過ぎることもなく、三菱商事の事業ポートフォリオを適切なタイミングで入れ替えすることに寄与していきたいと考えています。

高納 BECはいわば「全地球的な」最先端の技術を推進していくためのプログラムですが、これを実現させるには「ローカルな」ソリューションプロバイダーも重要です。

その点で、三菱商事は長年、世界の現場で関係を築いてきた実績がありますし、「地域との対話」はビジネスをやる上で我々が一番大事にしてきたことの一つです。脱炭素技術で非常に強いリーダーシップを持っているBECと、現場の知見を持っている三菱商事が良い化学反応を起こすことで、サステイナブルな価値を生み出していけたらと思っています。

北島 ネットゼロと継続的な経済成長を目指すというBECの理念は、まさに三菱商事の中期経営戦略2024にも合致しているものだと感じます。BECの取り組みは、世界に約1700社ある三菱商事の連結対象会社にも共有していきたい誇るべきケーススタディーです。このような取り組みが三菱商事グループに広がっていけば、その影響力は非常に大きなものがあると感じています。

脱炭素化社会の実現へ向けて、ともに

──日本の脱炭素社会に向けた変革を、今後どのようにリードしていきたいと考えているか、意気込みも併せてお聞かせください。

矢作 例えば、石油というものは生活の中にあって当たり前という感覚だと思うのですが、今後は「脱炭素化に貢献できる、生活の中にあって当たり前のもの」を増やしていけたらと思います。そのために、自分たちが色々なステークホルダーを巻き込みながら、まさに石油・化学分野の「触媒」となって、多方面に良い影響を与えられるような存在でありたいと思っています。

高納 これまで日本の様々なステークホルダーと発電に関わる仕事をしてきましたが、オールジャパンなら負けないと実感する経験もありました。脱炭素社会の構築に向けても、我々がBECのプロジェクトチームとして活動することで、「ジャパンがチームを引っ張ってやり切るぞ」という気概を高めるきっかけになれたらと思っています。

原田 世界レベルでネットゼロを目指すためには、供給側と需要側の双方がインセンティブを得られるような革新的な枠組みをアジアでも構築する必要があります。しっかりとBECでノウハウを吸収し、いずれアジアへその学びを波及させていくことに、三菱商事が先導役となって取り組んでいきたいと考えています。 

(左から)矢作氏、北島氏、高納氏、原田氏、奥村氏

北島 BECのパートナーに、世界最大の資産運用会社ブラックロックをはじめ米国の大手金融機関も名を連ねていますが、このような影響力を持つ企業がBECに関与しているということ自体が、非常に大きなメッセージとなっています。三菱商事がBECを通じて得た信頼は、今後の脱炭素事業へのファイナンス分野においても貢献すると思いますし、多くのステークホルダーが注目する事業に、世界のビッグプレーヤーらとともに携わっていることにやりがいと挑戦の気持ちを持ちつつ、これからも日々の業務にあたっていきたいと思います。 

奥村 BECの会合でよくされる話に、「覚えるべき数字は二つだけ。『510』と『0(ゼロ)』」というものがあります。世界で排出される年間510億トンの温室効果ガスを、我々はゼロにするのだ、と。この途方もない目標を実現するには、やはりオープン・イノベーションが必要です。ともにイノベーションを起こそうという方、脱炭素スタートアップを興そうという方、ぜひ社内外問わず、BECの一員である三菱商事に、もしくは“Ask Me Anything”、「AMA担当」の僕にご連絡いただきたいと思います。新しい脱炭素社会を、ともに作っていきましょう。