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台湾防衛に「イエス」と言ったバイデン大統領 アメリカは日本に何を期待しているのか

揺れる世界 日本の針路
日米首脳会談が終了し、バイデン米大統領が乗った車が迎賓館を出発した
日米首脳会談が終了し、バイデン米大統領が乗った車が迎賓館を出発した=2022年5月23日、山本裕之撮影

ガイドラインは、日本が他国に攻撃されたときなどの自衛隊と米軍の具体的な役割分担を決める政策文書だ。15年の改定では、日本が集団的自衛権を使うことを前提にした対処を盛り込んだほか、米軍を後方支援する地理的制限もなくした。中国の海洋進出や米国の軍事費削減など国際情勢の変化を反映し、日米同盟の質がこのガイドラインを境に大きく変わった。オ博士は当時、日米協議に参加し、ガイドライン改定に向けた議論を主導する役割を担っていた。

日本では今、年末までに予定される国家安全保障戦略などの改定に向け、新しい安全保障政策を巡る議論が行われている。自民党安全保障調査会は4月27日、党の提言を岸田文雄首相に提出した。「反撃能力」の保有や、5年以内に防衛力の抜本的強化に必要な予算水準を達成するよう求めている。

夕食会を前に、バイデン米大統領(中央)を出迎える岸田文雄首相と妻の裕子さん
夕食会を前に、バイデン米大統領(中央)を出迎える岸田文雄首相と妻の裕子さん=2022年5月23日、東京都港区の八芳園、代表撮影

オ博士は、日本の専守防衛政策について「日本の防衛政策は、もはや純粋な専守防衛ではない。日本をリアルタイムで適切に防衛するために、より攻撃的な政策をすでに取り始めている」と語る。オ博士によれば、防衛にも「単なる守勢」と「攻勢的な防衛政策」の違いがある。オ博士は「例えば空母は攻撃的な兵器システムだと考えられてきた。日本は、中国や日本に敵対的な国々の海軍に対応するため、すでに保有している」と指摘する。

オ博士が言う「日本が保有している空母」とは、「ヘリコプター搭載護衛艦」とよばれる「いずも」と「かが」を指している。

海上自衛隊は「いずも」と「かが」を、垂直離着陸が可能な米最新鋭ステルス戦闘機F35Bを搭載できるよう改修を進めていく方針だ。自衛隊元幹部らによれば、南西諸島を防衛する際、護衛艦で戦闘機への燃料や弾薬の補給が可能になる。将来的に、日本が東側の海上から攻撃を受ける可能性が高まる場合にも、防衛の拠点になる空母が必要になる。

海上自衛隊の護衛艦「いずも」
佐世保港沖合に停泊する海上自衛隊の護衛艦「いずも」=2021年10月11日、朝日新聞社ヘリから、堀英治撮影

また、石破茂元防衛相は、自民党が保有を提言した「反撃能力」について「現時点で、相手の攻撃基地や移動発射台に反撃することには、それほど異論がないと思う。そこから始めて、相手の意図をくじく範囲、専守防衛の精神を生かす範囲についての議論を、これから進めなければならない」と語る。

戦後、日本の非武装化を進め「専守防衛」を説いたのは米国だった。オ博士は「米国の太平洋戦争後の対日姿勢は、米国の指導と保護の下、平和で経済的、社会的に開かれた民主主義を作り出すことだった。日本もその国づくりに満足してきた」と語る。そのうえで「世界の地政学的な風景が大きく変化した。受け身で平和志向の日本の姿勢では、こうした国益を守り、米国との同盟を維持することは難しいだろう」と指摘する。

そのうえで、オ博士は「日本は、台湾の不測の事態に備えて米国と共に協力する重要な同盟国だ。台湾は日本から遠く離れているわけではない」と語る。日本最西端の与那国島と台湾は110キロしか離れていない。「台湾を防衛し、中国に対抗する努力を支援することは、アジア太平洋地域で自由民主主義の価値を維持するため、すべての開かれた社会にとって重要な義務だ」と指摘。日米協力の例として「後方地域支援、補給支援、情報共有など、日本が米国とできることは山ほどある」と語る。

オ博士は日本の防衛費を国内総生産(GDP)比2%程度に増やすべきだとする考えについて「中国、北朝鮮、ロシアの警戒すべき発展を考えた場合、個人的には適切なレベルだと思う。ドイツも同じレベルの増額を宣言した。ロシアのプーチン大統領が引き金を引いた2月24日のウクライナ侵攻に対する警鐘だった」と話す。

11月11日、与那国島にある日本最西端の碑の前に立つ山崎幸二統合幕僚長(右)と米インド太平洋軍のアキリーノ司令官=米インド太平洋軍司令部のフェイスブックから

日本の空母保有や防衛費増額を支持し、台湾有事を巡る日米協力を唱えるオ博士だが、「核兵器を作らず、持たず、持ち込ませず」とする日本の「非核三原則」の変更には反対する考えを示した。「核兵器は、日本に対するいかなる挑発や敵意に対する正しい回答にはならない。ソ連は多数の核弾頭を保有していたが、社会的な侵食と構造的腐敗が経済と社会を台無しにして崩壊した」と主張する。

米国は過去、日本や韓国、台湾が核を保有する「東アジアの核ドミノ現象」に強い警戒心を示してきた。核兵器を保有する中国やロシア、北朝鮮の脅威が高まるなかでも、「核の傘」を含む拡大抑止力の提供を繰り返し強調する代わりに、非核三原則を支持している。

ただ、東アジアで緊張が高まった場合、米国が日本近海に核を搭載した艦船を派遣する可能性は残されている。岡田克也外相(当時)は2010年に行った答弁で、緊急事態などで起きうる、核を搭載した米艦船の一時寄港については「その時の政権がギリギリの判断を、政権の命運をかけて行う」と説明した。米国の核兵器使用の意思決定プロセスで、日本は「黙認」以外に方法がないのが実情だ。

これに対し、韓国は過去、朝鮮半島で緊張が高まった場合、米国に核兵器を搭載しない戦略爆撃機の派遣などを要請してきた。オ博士は「朝鮮半島には、民主的な韓国を脅かす2つの敵対的な独裁国家である北朝鮮と中国がすぐそばに存在するからだ」と語る。「日本の場合、米国は常に不測の事態に備え、日本の支援に飛び込む準備ができている」とした。

そして、オ博士は2015年に改定した日米ガイドラインを再び改定し、「隣国である韓国を含む汎アジアの協力を含めるべきだ」と主張する。バイデン米大統領も、5月20日から始まった初のアジア歴訪の最初の訪問国に韓国を選んだ。バイデン政権は発足以来、「日米韓防衛協力の重要性」を繰り返し、強調してきた。台湾や北朝鮮を巡る緊張が高まる場合に備えたい思惑がある。

台湾を巡る米中対立の激化やロシアのウクライナ侵攻などが原因で、中国とロシア、北朝鮮の協力関係がより強化されつつある。北朝鮮は4月、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射したが、中ロ領国は、米国などが求める新たな国連制裁決議に反対している。

ただ、5月10日に発足した韓国の尹錫悦政権は日米韓防衛協力に賛成する一方、日米豪印の4カ国安保対話(QUAD)への参加など、中国と正面から衝突する政策には慎重な姿勢を示している。韓国政府関係者は「北朝鮮を念頭に置いた3カ国の共同訓練は可能だろうが、中国を想定した共同訓練は難しい」と語る。

オ博士は「私はランド研究所とIDAでの長いキャリアのなかで、ソウルや東京と緊密に協力する機会を何度も経験し、成功した。二国間および三国間協力に対する合理的、戦略的、専門的なアプローチが可能だと信じる」と語った。