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食べ物をつくるだけがフードテックじゃない 世界は食のすべてを変えようとしている

World Now
フードテック関連企業が出展したブース周辺=全米民生技術協会提供

フードテックの表示が掲げられた技術見本市・CESの会場

フードテックが対象とする範囲は広い。動物の細胞から人工的に肉を作り出す培養肉技術もあれば、原材料の生産性を高めるテクノロジー、輸送や保存コストを下げる技術、AIを使ったレシピ管理、キッチンの効率化、飲食店の経営効率向上などさまざまだ。こうした関連分野も広く含めると、フードテックの世界の市場は2025年までに700兆円規模に成長するとの業界の試算もある。食品メーカーだけでなく、IT企業や研究者らも次々に参入している。

CESの会場で人だかりができていたのが、米シリコンバレーに本社を置くヨーカイ・エクスプレス社のブースだった。冷凍されたラーメンを急速に温めて提供する自動販売機を、空港や病院、企業の食堂などに向け展開している。3月には羽田空港にもお目見えした。ラーメンの種類にもよるが「最短45秒」で出来上がり、おいしさにもこだわる。

CEOのアンディ・リンさん(43)は「自動調理の技術が、いかに飲食業界を変えるのかを示す絶好の機会。自動化で人件費や家賃を抑え、効率的に料理を保存・提供することができる。今後数年の潮流になるはずだ」と話す。

米ヨーカイ・エクスプレス社のアンディ・リンCEOとラーメン自動販売機

会場には、自動調理のように食品そのものを作る企業だけではなく、菌類からたんぱく質を作る技術、自動配膳ロボット、長期保存に特化した容器、従業員の栄養データ管理システムなど、それぞれ特色を持つ企業などが出展していた。

日本からは植物由来たんぱく質を手がけるネクストミーツ社が出展してハンバーガーを提供する予定だったが、新型コロナウイルスの感染状況を考慮して取りやめていた。他にも取りやめる企業があり、フードテックエリアに軒を連ねた企業は約10社。巨大な会場の規模からするとまだまだ新参者だが、フードテック産業についてのシンポジウムが連日開かれるなど、関心の高さがうかがえた。

米企業がCESで披露していた自動配膳ロボット=2022年1月5日、米ネバダ州ラスベガス、目黒隆行撮影

スタートアップが集う会場の別のエリアを訪れると、世界中の様々な業種の起業家が開発した商品をPRしていた。インド発の「世界最短調理器具」を開発したというサナンダン・スディールさん(50)は圧力鍋に似た商品を手に「電子レンジが開発されてから数十年たつが、それからキッチンスペースの使い方は大きく変わっていない。その概念を変えに来た」と話す。煮る・焼く・炊くなどの調理に電源をつないで自動対応できるというこの商品をさらに改善すれば、ガス台などが不要になるという。

インドでも多くの企業がフードテックに参入しているといい、「暗号通貨やIoT(モノのインターネット化)など注目の分野では、市場はすでに成熟している」とみる。一方で「時短調理は人々の暮らしを豊かにできるし、(運動などに時間を使えるため)より健康でいたいという欲求にも応えられる。テクノロジーがこの分野で果たせる役割は多い。フードテックはこれからだ」と話す。

フードテックの活用や今後の展望について、CESの会場では様々なシンポジウムが開かれた

CES主催団体の幹部、スティーブ・コーニグさんによる近年の技術トレンドについての基調講演では、「消費者の選択をみると、環境に配慮しているかなど、持続可能性がますます重視されるようになっている。すでに様々な産業がそこに注目しており、フードテックもその流れの中にある」と位置づけた。様々な分野で発展を遂げたテクノロジーが、地球規模の課題解決のため「食」を軸に再結集しようとしている。