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ビジネス会話で大事なのは「二の矢」。相手の話のポイントをつかむ効果的な練習法は?

世界でビジネスをするための外国語習得術 更新日: 公開日:

■ウクライナ危機、「一喜一憂」「言語道断」を英語で言うと?

こんにちは。このコラムでは、毎回、朝日新聞デジタル版の日本語、英語の記事などを参考に、皆さんの「自己発信ノート」に入れるべき例文を、参考として私から紹介しています。

今回のテーマは、緊迫するウクライナ情勢です。特にビジネスパーソンにとっては、サプライチェーンの観点でエネルギーに注目する必要があるでしょう。

カーボンニュートラルLNGを積んだ運搬船
カーボンニュートラルLNGを積んだ運搬船が北海道ガスの石狩LNG基地に接岸した=2021年3月19日、北海道石狩市、朝日新聞社

2月9日、日本政府は、欧州に液化天然ガス(LNG)の一部を融通すると発表しました。私はこれを自己発信文に入れたいと思ったので、朝日新聞の英語版の英語も参考に、下記のように作ってみました。

あなたは、ウクライナ危機についてどのような意見を外国人に伝えますか?

欧州連合(EU)のパトリシア・フロア駐日大使と会談する萩生田光一経済産業相
欧州連合(EU)のパトリシア・フロア駐日大使と会談する萩生田光一経済産業相(右)=2022年2月9日、東京・霞が関、朝日新聞社

これらを基に、自己発信文を作ります。

このように、選んだ題材の文章を少し加工するだけで、自分の意見を表す立派な文章が完成します。「日本語」を起点に、自分が外国人に言いたいこと探し、それに見合うテキストの英文をまず比較してみましょう。もちろん、言いたい日本語をすぐに英語で言うことができないこともあるでしょう。

私がこのコラムで提唱している、「英文テキストはアウトプットの材料箱」として使うと、英文はほとんどネイティブの使う英語になっているので、まずはテキストの英語をそのまま自己発信文に入れてみてください。

テキストの英文をフル活用して、そこに、⑤や⑩のように、自分の状況、意見を入れてみるのです。とにかく外国語を受け身ではなく、「自分事」にしてみてください。

ガソリンスタンドの価格表示
ガソリンスタンドの価格表示=2022年2月16日、東京都中央区、朝日新聞社

「一喜一憂」は⑤のように、一番言いやすいのは「affected by」かと思いますが、「waverd(揺れる) between hope(希望) and despair(絶望)」とか「alternated(交代する) between joy(喜び) and sorrow(悲しみ)」としても分かりやすいと思います。

「言語道断」は、その意味を捉えて⑩のように、「absurd(愚かな)」とか「outrageous(ひどすぎる)」、あるいは「unspeakable(話にならない)」を使ってもおもしろいかもしれません。

今回のレッスンを踏まえた「オリジナル単語帳」のイメージは下記(別添)のとおりです。参考になれば幸いです。(「オリジナル単語帳」の作成の方法は第5回のレッスン参照)

■通訳の世界でも使われる練習法「サマライジング」

それでは、次に、外国語学習に際しての今回のアドバイスです。

今回のレッスンで11回目ですので、すでに私なりの多くのノウハウをお伝えしてきたつもりです。これからはその培ってきた語学力をいかに本番のビジネスシーンで発揮していくかという段階に移っていきたいと思います。

これまでは「自己発信」に重点を置いてきましたが、実際のビジネスシーンでは、先手を打ったあとの自己発信に対して、相手の発言を聞き、理解する力が重要となります。

すなわち、相手が話したことをいかに短時間で自分の脳で要約してポイントをつかみ、それをベースに次の適切な「自己発信」(二の矢)ができるかです。

キエフ中心部の様子
キエフ中心部の様子。多くの人が行き交い、表向きは日常の暮らしが続いている=2022年1月28日、朝日新聞社

そのためには外国語の例文を音声でパラグラフあるいは文章のまとまりで聞いて、それをあなたの脳で簡潔に日本語で要約して、紙に書きだす練習が効果的です。これを通訳の世界では文字通り「サマライジング」と言います。

要約した内容を紙に書き出すのは、そうしないとあなたの脳で要約した内容を可視化して誤りを正すことができないからで、本番でのメモの練習ではありません。

ビジネス本番では、若手のビジネスパーソンは、上司との会談のメモ取りで経験を積むことになりますが、そのうち1対1で対談するようになるとメモを取ることはマナー違反となりますので、記憶力を向上させていくしかありません。そのためにも、この「サマライジング」の練習は重要です。

■おすすめ教材は未知のニュース。まずは15秒から

そして、その文章の量を増やして要約力を磨き、相手の長い発言に対しても、自分の自己発信の内容を「能動的に(dynamic)」かつ「理論的に」差配していくのです。“二の矢”以降の「自己発信」も能動的にできるようにするこの練習を、DLS(Dynamic Listening and Speaking)と通訳の世界では言います。

最初は15秒程度の未知のニュースの聞き取りから始めましょう。これまでは、リスニングは習ったことしか聞いてはいけないと強調してきましたが、ビジネス本番を迎える段階までくればそうはいかないので、ぜひ未知の内容にチャレンジしてみてください。

本番では外国人の発言は1回しか聞けませんが、練習では2回、3回と聞いて要約力を磨きましょう。その後、ニュースの長さも30秒、1分と伸ばしてみましょう。

特に最初はすごく難しく感じると思います。おそらくこの練習は、グローバルビジネスパーソンにとって「最高レベル」に位置づけられるでしょう。

私も、ゼロからスタートしたアラビア語でしたが、外交官として大使館勤務になる直前には、仕上げとしてこの練習を家庭教師と繰り返し行っていました。ビジネス本番(外交官にとっては外交交渉、情報収集)での経験の積み重ねが、またその能力を向上させると言ってよいでしょう。

さて、最後に、今回の宿題は以下のとおりです。これまでのレッスンでお勧めした「パラフレージング」の練習としても効果的です。次回レッスンまでに書き出して、あなたの「オリジナル単語帳」に入れてみてください。それぞれ最低3つの英単語が考えられますよ。回答例は次回お伝えします。

61 始める
62 助ける、支える
63 終える
64 努力する
65 選ぶ
66 解決する
67 強調する
68 禁止する
69 取り除く
70 命令する、指揮する

また、前回(レッスン10)の宿題の回答例を参考までにお伝えします。レッスン5でお伝えした「日本語からは発声できなかったが、見れば知っていた」のカテゴリーの単語、表現があれば、ぜひ「オリジナル単語帳」に、簡単な例文とセットで入れてみると効果が上がると思います。

また、私が示した回答は網羅的ではないので、それ以外に別の回答を見つけられた方は、その単語、表現ももちろん入れてみてください。この宿題が、あなたの新たなアウトプットの可能性を導くきっかけになれば幸いです。

なお、この日本語から英語の「置き換え」は、正確な訳出ではない、単語によって用法が異なるとして異論がある方もいらっしゃるかもしれませんが、私のポイントは、とにかく言いたいことを柔軟な発想で、バリエーションを持って伝えていくことにあるので、その点はご理解いただければ幸いです。

51 理解する understand, make out,grasp, comprehend, figure out
52 頼る depend on, rely on, count on, resort
53 確信する make sure, convince, affirm
54 提案する suggest, propose, offer
55 与える、供与する give, provide, grant, donate
56 争う fight, battle, dispute, struggle, contend
57 強化する strengthen,reinforce,boost,bolster,intensify
58 反対する oppose,object,disagree,against,
59 説明する、実証する explain, outline, describe, demonstrate, account for
60 驚かせる surprise, shock, amaze, astonish, stun

(この記事は朝日新聞社の経済メディア『bizble』から転載しました)