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だれもが「自分は新型コロナに詳しい」と思っている でも本当に?

ニューヨークタイムズ 世界の話題
Many people are now coming to their own conclusions about Covid and how they should behave. After not contracting the virus after multiple exposures, they may conclude they can take more risks. Or if they have Covid they may choose to stay in isolation longer than the C.D.C. recommends. (Dominic Kesterton/The New York Times)-- FOR EDITORIAL USE ONLY WITH NYT STORY CHINA VIRUS CONTROL BY LI YUAN FOR JAN. 21, 2022. ALL OTHER USE PROHIBITED. --
Dominic Kesterton/©2022 The New York Times

ローレン・テリー(23)は新型コロナウイルスに感染したら、どう対処すればいいのか知っているつもりだった。なにしろ、彼女は米アリゾナ州トゥーソンで新型コロナ検査を行うラボを経営しているのだから。

ところが、クリスマスイブに症状が出たとき、何も詳しい情報を持っていないことにすぐ気がついた。

「まず、受けられる迅速検査なら何でも受けてみようと思った」とテリーは言う。「市販の検査キットを買った。地元の郡立図書館で無料の検査キットをもらった。友人が箱でくれた。それぞれブランドが違う5種類を試してみた」と言うのだ。すべて陰性だったが、PCR検査も受けた。それも陰性だった。

はっきりした症状があったので、彼女は検査結果が信じられなかった。そこで、ツイッターを利用した。「オミクロン変異株に有効な迅速検査を探し、この変異株にはどのブランドの検査が有効で、どのブランドが有効ではないのか、検査結果がわかるまでにどのくらい時間がかかるのか、知りたかったのです」と彼女は言う(米食品医薬品局=FDA=によると、迅速抗原検査はオミクロン株には感度が低い可能性があるが、まったく検出できない検査は特定されていない)。

「症状が出ていたが、検査で陽性が判明したのは何日か後だった人たちがいることをツイッターで知った。この書き込みを読んでからは、私は休日には人に会わないことにした」

テリーは検査を続け、クリスマスの数日後に、前々から予想していた通りの結果を得た。

パンデミック(感染症の大流行)が起きてから約2年経過するが、今回の局面は2020年3月にパンデミックが始まったころより理解しにくいと感じることがある。最も精度が高いPCR検査でさえ、すべての症例――特に感染の初期段階――を常に検出できるわけではなく、迅速抗原検査がオミクロン株にも同様に有効かどうかについて科学者の間から疑問が出ている。隔離期間10日間の必要性には、米疾病対策センター(CDC)が人によっては5日で外出できると発表した後、疑問符がついた。

「(感染症に関する)脅威自体についての理解が混乱しているので、情報はもっと錯綜している」とニューヨーク大学グローバル公衆衛生学大学院の公衆衛生災害科学センターを指揮するデビッド・エイブラムソンは指摘する。彼は、こうも言っている。「かつて、私たちは50マイル先からハリケーンが近づいてくるのを知っていた。今は、その嵐が洪水をもたらすのか、暴風被害を招くのか、はっきりとはわかっていない。不確実なことが非常に多く、確信が持てないのだ」

A man receives a booster shot for the coronavirus disease (COVID-19) at a McDonald's, as the Omicron coronavirus variant spreads through the country, in Chicago, Illinois, U.S., December 21, 2021. REUTERS/Jim Vondruska
米シカゴで新型コロナウイルスワクチンのブースター接種を受ける男性=2021年12月21日、ロイター

多くの人が今では、新型コロナやその対処法について、それぞれ独自の見解を持つようになっている。ウイルスに何度さらされても感染しなかったら、もっとリスクを冒しても大丈夫だと考えるかもしれない。あるいは、新型コロナに感染した人は、CDCが推奨する期間より長い隔離を選択するかもしれない。

彼らは、必ずしも陰謀説を受け入れているわけではない。人は、主流メディアのニュース記事や公衆衛生の研究者のツイートを読んで意見を持つようになる。それぞれのネットワークの中にいる人々の実体験に目を向けているのだ。

しかし、エイブラムソンが言うには、それは科学的な検証を経た専門家の見解に従うのと同じことではない。「周囲から得るに至った見解の多くは裏付けに乏しい。たとえば、『義理のきょうだいが、こうしたら効き目があったので、自分もやろうと思っている』という類いで、確率論的思考を十分に活用できていない」と彼は指摘する。

自分自身で対処法を思案している人たちは、必ずしも近道を見つけようとしているわけではない。カリフォルニア州サンノゼに住むレーガン・ロス(26)はスタンフォード大学大学院のコミュニケーション研究科で博士課程を修了する段階にある。最近、デートに誘われた。彼女はウイルスに感染し、CDCの指針よりも長い13日間の隔離を経て、症状はすでに消えていた。しかし、抗原検査が陰性になるまではデートをしないと決めた。

「家族の中には、私のことをクレージーだと思っている人がいる」と彼女は言う。「でも、私の彼は理解してくれている。コロナに感染したくないから」

エイブラムソンは、慎重過ぎるのは悪いことではないと言っている。「慎重に慎重を重ねるに越したことはない」と言うのだ。

デジタルマーケティングの仕事をしているビンス・ヒューレット(35)はミズーリ州ボールウィンに住んでいる。これまで新型コロナに感染しなかったのはワクチンの(ブランドの)組み合わせによる効果だと思っている。ファイザー社製を2回、追加にモデルナ社製を1回、打った。彼は、同じブランドのワクチンを3回打つより、ブースターのワクチンは別のブランドを打つ方がより効果的だという初期の研究論文を読み、そう決めたのだった。

彼のファミリーのほとんどがクリスマス期間中に新型コロナに感染したが、彼自身は無事だったので、自分の判断にいっそう自信を持った。「クリスマス期間中、私のファミリーに新型コロナのクラスターが発生した。父も母も感染し、私の2人の娘、きょうだいと彼の妻と子ども2人も感染した」とヒューレットは振り返る。ファミリーで感染しなかったのは、ヒューレット夫妻ら少数だった。「私はワクチンの組み合わせに守られたと全面的に信じている」

未来学者のシル・タンは、こんなふうに言う。彼女が知っているほとんどの人が、パンデミックで今何が起きているかについてそれぞれの見解を持って彼女のもとに来る、と。

「誰もが、自分の選択に満足し、いま生きている世界に納得できる方法を見いだしたいと願っているだけなのだ」。そう彼女は言っていた。(抄訳)

(Alyson Krueger)©2022 The New York Times

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