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フェイスブックに「最大の危機」をもたらした内部告発 用意周到に準備されていた

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連邦議事堂であった公聴会で証言するフェイスブックの元従業員フランシス・ホーゲン氏
米首都ワシントンで2021年10月5日、連邦議事堂であった公聴会で証言するフェイスブックの元従業員フランシス・ホーゲン氏=ロイター

フェイスブック文書
The Facebook Files
2021年10月1日付 ウォールストリート・ジャーナル紙


スパイ小説のようなドラマチックなストーリーだが、シリコンバレー流のひねりが効いている。法律違反の可能性を暴こうとする人々の代理人を務める非営利団体「ホイッスルブロワー・エイド」創設者のジョン・タイは今年の春、フェイスブックで働いていたという女性から連絡を受けた。

この女性、フランシス・ホーゲンは、世界最大のソーシャルネットワークの何万ページにも及ぶ内部文書を持っていると言った。彼女は、法的保護と機密情報を公開する道筋を求めた。タイ氏は、この女性がもたらすgravity(重大さ)を「数分で理解した」と言い、彼女の代理人となって、彼女を「ショーン」という偽名で呼ぶことにした。

こうして、フェイスブックの調査報告書やオンライン上での社員の議論、経営幹部へのプレゼンテーションの下書きなど、同社の内部構造を明らかにする内部文書のtrove(山)が、meticulous(周到)にメディアでrollout(展開)されることになった。

フェイスブックの市民誤報対策チームで2年近く働き、5月に退職したプロダクトマネジャーだったホーゲンは、amassed(集めた)内部文書を使って、フェイスブックが自社のプラットフォームが引き起こしている害についてどれだけ知っていたかを暴露してきた。彼女はその証拠を議員や規制当局、報道機関に提供した。そして、このrevelations(暴露)がfirestorm(大炎上)を巻き起こした。

■思っていた以上に問題が深刻だった

アイオワ州アイオワシティー出身のホーゲンは、コンピューターサイエンスとハーバードビジネススクールを卒業した37歳で、シリコンバレーの起業家や会社員として成功したキャリアを持っている。人気のデートアプリを共同設立したり、グーグルやピンタレストなどのテック業界の有名企業でアルゴリズムの開発に携わったりしてきた。

彼女は、英選挙コンサルティング会社「ケンブリッジ・アナリティカ」がフェイスブックから最大8700万人分の個人情報を不正流用して、2016年のトランプ米大統領の当選を後押ししたとされるスキャンダルから数年後の2019年にフェイスブックに就職した。会社を内部から変える手助けができるのではないかと期待していたという。

しかし彼女はすぐに、問題は自分が思っていたよりもずっと深刻であり、内部からフェィスブックを変えることはできないと分かった。そこで彼女は、ただ辞めるのではなく、世論の圧力によってフェイスブックが変わらなければならないと考え、資料を集めて公開することを決意した。

データが物語る力を信じていたホーゲンは、フェイスブックの最大の武器である、「人間の体験を収集し、測定する能力」を逆手に取ることにしたのだ。

■綿密な計画と段階的公開

ホーゲンは、シリコンバレーで発覚したあしき慣習を公表した技術業界のwhistleblowers(内部告発者)の長いリストに加わることになった。しかし、ホーゲンは、その計画性と立証のrigor(厳密さ)において際立っている、と指摘されている。彼女はフェイスブック自身の内部調査ややりとりの記録を利用して、同社がいかに重要な安全対策プログラムからリソースをdirected away(逸脱させていた)かを明らかにした。成長指標を優先する意思決定が行われている会社の姿を描き出した。

ホーゲンは、慎重に組織化された方法で、自分の問題意識にできるだけ多くの人々の関心を集めようとした。まず、彼女はウォールストリート・ジャーナル紙に独占的に文書を渡した。9月13日から、同紙は「The Facebook Files」というタイトルのもと、11本の主要記事を掲載した。

ウォールストリート・ジャーナルの記事で明らかになった主な内容は、ドナルド・J・トランプが訴えた選挙違反の主張など、政治的なうそをフェイスブックの幹部がどう扱ったのかというものだった。同社は、より多くの人々がログインするように、誤った情報を広く拡散させることを許すという選択をたびたびしてきたという。何百万人ものVIPは、同社の通常のenforcement(執行)から特別扱いを受け、多くの人々がその特権を乱用して、嫌がらせや暴力のincitement(扇動)を含む内容を投稿している。同社の社員が、人身売買や臓器売買、ポルノ、政治的反対意見に対する政府の行動など、発展途上国におけるフェイスブックの使用方法に関する問題について警鐘を鳴らしても、同社は多くの場合、不適切な対応しかせず、全く対応しなかったこともあったという。

一連の内部告発では、フェイスブックはインスタグラムが10代の少女などに与える悪影響や、同社のプラットフォームがインドでの宗教間の紛争にいかに寄与しているかを認識していたことも明らかにされた。

そして、10月3日のアメリカの人気ニュース番組「60ミニッツ」への出演で、ホーゲンは自身が内部告発者であることを明らかにし、10月5日には議会での証言が行われた。

その後、ホーゲンは自分が集めた文書を米国や欧州の多くのジャーナリストと共有し、ウォールストリート・ジャーナル紙が残した情報の宝庫を探し回ることを許した。その結果、フェイスブックがそのプラットフォームによってexacerbated by(悪化させた)実害をひそかに、meticulously(綿密に)追跡しながら、設計段階におけるリスクに関する従業員の警告を無視してきたことを示す記事が相次いで発表された。

さらにホーゲンは、インドや中東の一部など、彼女が最も危険と考える地域の学術ライターや出版社とも文書を共有する予定だそうだ。

また、ホーゲンは、フェイスブックが社内での行動と一致しない公表をして、投資家を欺いたとして、証券取引委員会に内部告発を行った。また、10月25日、彼女は英国議会の委員会に出席し、blistering(厳しい)証言を行った。彼女は英国の議員に対し、フェイスブックで視聴者を増やす最も簡単な方法は、「怒りと憎しみ」を利用することだと言った。さらに彼女は、「現在の(フェイスブックの)システムは、bad actors(悪質な行為者)や、人を極端に追い込む人たちに偏っている 」と述べた。

■フェイスブックは反撃を試みたが…

フェィスブックはホーゲンに対して先手を打って反撃に出ようとした。フェイスブックの政策・世界問題担当の副社長であるニック・クレッグは、この告発は「誤解を招く」とするメモを社員に送った。クレッグ氏はまた、CNNに出演し、フェイスブックのプラットフォームは「人類の善、悪、醜」を反映しており、「悪をmitigate(軽減)し、減らし、善をamplify(増幅)する」ように努めていると述べ、同社を擁護した。

議会でのホーゲンの証言の後、別のフェイスブックの広報担当者は、「彼女が証言した多くの問題についての彼女のcharacterization(特徴づけ)には同意できない 」と述べた。

しかし、これらの抗議はほとんど無視されている。なぜなら、ホーゲンのアプローチは、フェイスブックそのもの、つまりその価値観、情報の宝庫、その言葉に対して反旗を翻すことになるからだ。記事は、「今回、同社は、事実を知らない部外者が無知なmischief(いたずら)をしていると主張することができない」と指摘している。なぜなら、その批判は内部で、内部情報に基づいてなされたものだからだ、と。

10月28日、フェイスブックは社名をメタに変更した。表向きはメタバースと呼ばれる仮想空間分野への将来性を強調するためである。しかし、このブランド名の変更は、ホーゲンの書類にまつわるあらゆるネガティブな評判から目をそらすための、あまりにも明白な試みであるように感じられる。

今回の文書の漏洩(ろうえい)は同社の17年の歴史の中で最大の危機を引き起こした。そして、ほとんど規制されていない、非常に強力なテクノロジー業界をいかに抑制するかという世界的な議論に新たな緊急性をもたらした。

出された記事とホーゲンの議会での証言は、立法措置を求める声を生み、米国内外の議員たちは、過去数年にさかのぼりBig Tech(大手テック企業)を調査することを改めて公約している。しかし、実際に何が起こるかはまだわからない。この秋は、ホーゲンの暴露という劇的なストーリーがヘッドラインを一時独占したが、ここ数週間は、新型コロナウイルスのオミクロン株の波、インフレ、自然災害、政治的内輪もめがスポットライトを浴びている。議員たちはいつになったらフェイスブックの問題に目を向け、真の対策を講じるのだろうか。


(原文)
フェイスブック文書
The Facebook Files
2021年10月1日付 ウォールストリート・ジャーナル紙

フェイスブックは「安全性より利益を選択」と内部告発
Whistle-Blower Says Facebook ‘Chooses Profits Over Safety’
2021年10月3日付 ニューヨーク・タイムズ紙

内部告発の後、フェイスブックは社員を落ち着かせようとしている
After Whistle-Blower Goes Public, Facebook Tries Calming Employees
2021年10月10日付 ニューヨーク・タイムズ紙

フランシス・ホーゲンの教育:フェイスブックの内部告発者は、ハイテク企業での経験からデータを武器にする術を学んだ
The education of Frances Haugen: How the Facebook whistleblower learned to use data as a weapon from years in tech
2021年10月11日付 ワシントン・ポスト紙

フェイスブックの大規模な情報流出の内幕
Inside the Big Facebook Leak
2021年10月24日付 ニューヨーク・タイムズ紙

内部告発者の証言とフェイスブック・ペーパーをきっかけに、議員から規制を求める声が上がる
Whistleblower testimony and Facebook Papers trigger lawmaker calls for regulation
2021年10月25日付 ワシントン・ポスト紙

フランシス・ホーゲンは何千ものフェイスブックの書類を持ち出した。これが彼女のやり方だ
Frances Haugen took thousands of Facebook documents: This is how she did it
2021年10月26日付 ワシントン・ポスト紙

今回のフェイスブックのスキャンダルは、なぜ過去のものより大きいのでしょうか?
Why this Facebook scandal is bigger than any other
2021年10月27日付 ワシントン・ポスト紙

フェイスブックのリブランドを否定するのではなく、懸念を持って受け止めるべき
Facebook’s rebrand should be met with concern, not dismissal
2021年11月8日付 デイリー・ネブラスカン紙