1. HOME
  2. World Now
  3. 韓国の漫画「ウェブトゥーン」ドラマ原作に次々 日本版リメイクで『六本木クラス』も

韓国の漫画「ウェブトゥーン」ドラマ原作に次々 日本版リメイクで『六本木クラス』も

現地発 韓国エンタメ事情 更新日: 公開日:
Netflixシリーズ『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』独占配信中

『ナビレラ-それでも蝶は舞う-』『地獄が呼んでいる』などウェブ漫画原作の韓国ドラマが増えている。漫画アプリで手軽に海外でもウェブ漫画が読めるため、漫画とドラマの相乗効果を狙った海外戦略という見方もある。

■漫画原作者が監督に

Netflixシリーズ『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』独占配信中

今年韓国で放送されたtvNドラマ『ナビレラ-それでも蝶は舞う-』は、ウェブ漫画『ナビレラ』が原作だ。バレエを習うのが夢だった70歳のおじいさん(パク・イナン)と、おじいさんにバレエを教える青年バレリーノ、チェロク(ソン・ガン)の歳を超えた友情が描かれた人気漫画で、2019年には舞台化もされた。ドラマの主人公がおじいさんというのはリスクもあったが、歳を重ねた主人公ならではの名台詞も多く、好評を得た。日本語版のウェブ漫画は漫画アプリ「ピッコマ」で連載され、ドラマはNetflixで配信された。

Netflixシリーズ『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』独占配信中

11月に配信が始まったNetflixオリジナルシリーズ『地獄が呼んでいる』は、ウェブ漫画『地獄』が原作で、演出したヨン・サンホ監督は原作者でもある。漫画を描いている段階で映像化を考えていたという。

ある日突然「天使」が現れて地獄行きを予告されると、その日時に怪物のような「地獄の使者」がやって来て、踏んだり投げたりして痛めつけられた挙句、焼き殺される。それを「天罰」と言って神のメッセージに耳を傾けるよう呼びかける宗教団体「新真理会」の創始者チョン・ジンス役をユ・アインが演じた。10月の釜山国際映画祭のトークイベントでユ・アインは出演を決めた理由を「タイトルが良かった。挑発的というか、攻撃的というか」と語った。一方、「新真理会」の熱烈な信者役を演じたキム・ドユンは「先にウェブ漫画を見たが、ものすごい作品で、視覚的な恐怖というよりも心理的に、現実離れしたようで現実のような怖さを感じた」と話した。

ヨン・サンホ監督は映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)やその続編『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020)の監督として世界的に知名度が高いが、それ以前に韓国ではアニメーション映画の監督として知られていた。ユ・アインは「ヨン・サンホ監督の魅力は本当に早く撮ること」と話していたが、それもそのはず。監督の頭の中で明確に絵が描けているだけでなく、それを示すウェブ漫画も先にあるので俳優に監督の意図することが伝わりやすい。

『地獄が呼んでいる』で「新真理会」創始者チョン・ジンス役を演じたユ・アイン=Ji Sung Jin撮影

日本語版のウェブ漫画『地獄』は日本では漫画アプリ「LINEマンガ」で連載され、双葉社から書籍版も出版されている。英語や日本語のみならず、すでにタイ語、スペイン語など10ヶ国語に訳されており、『地獄が呼んでいる』の配信を機に世界中で原作への関心も高まった。映像化による相乗効果の典型的な成功例だ。

ピッコマとLINEマンガはいずれも韓国系企業が運営しているが、日本の漫画アプリ業界を牽引する存在となっている。「ウェブトゥーン」と呼ばれる韓国発のウェブ漫画が日本のみならず海外で浸透したのは、スマートフォンで読むのに適した「縦スクロール」で縦に読み進むことができる形式を採用したことが大きい。

『地獄が呼んでいる』の演出を務めたヨン・サンホ監督=Ji Sung Jin撮影

近年韓国でドラマ化されたウェブ漫画の多くが日本語に訳されてピッコマやLINEマンガで連載されている。代表的なのは、日本でもヒットしたドラマ『梨泰院クラス』だ。韓国では原作のウェブ漫画も同じタイトルだったが、日本語版は『六本木クラス』というタイトルでピッコマで連載された。さらに日本でドラマのリメイクが発表されたが、これもタイトルは『六本木クラス』になるという。

他にもドラマ『キム秘書はいったい、なぜ?』『女神降臨』『私のIDはカンナム美人』など、原作ウェブ漫画とドラマが相乗効果で人気となっているケースは少なくない。

ウェブ漫画原作の韓国ドラマ人気を受け、Netflix、Apple TV+、Disney+など動画配信サービスのオリジナルシリーズの原作としても、韓国のウェブ漫画の需要が高まっている。Apple TV+で11月に配信が始まったオリジナルシリーズ『Dr.ブレイン』は映画『パラサイト 半地下の家族』のパク社長役で知られるイ・ソンギュンが主演し、注目を集めているが、これも原作はウェブ漫画『DR.ブレイン』だ。日本語版はピッコマで連載されている。

今年韓国で映像化されたコンテンツの原作の中で漫画が占める割合は約23%に上り、今後もこの傾向が続くとみられる。韓国内では原作が不足する可能性も指摘されており、改めて元祖・漫画王国の日本の漫画を原作として着目する動きもある。