活動を始めるのは、#KuToo運動を始めた俳優の石川優実さん、市民運動家の菱山南帆子さん、車いすを利用するコラムニスト、伊是名夏子さん、出版社で編集者を務める山田亜紀子さん。
4人は「Online Safety For Sisters(オンライン・セーフティー・フォー・シスターズ)」というグループを創設。SNSの誹謗中傷によって自殺する人がなくなるよう取り組んだり、そうした差別的な投稿がSNS上で飛び交うのを防止する法整備を目指し、署名活動をしたりする。
活動のきっかけは石川さん、菱山さん、伊是名さんの3人が今も頻繁にTwitterなどで誹謗中傷を受けているからだ。
石川さんは2019年、女性が職場でハイヒールやパンプスを履くことを強いられることに疑問を感じ、生きづらさの解消を目指して#KuToo運動を始めた。石川さんによると、インターネット上で署名を集めて厚生労働省に提出した直後からSNSで誹謗中傷を受けるようになった。特に#KuTooが女性差別の問題だと指摘すると、その数は一気に増えたという。
最近でも「レイプされて死ねばいい」「コロナで死ね」などの投稿があったといい、「多くの人から死ねとか自殺しろとか言われ続けていると、自殺しなきゃいけないのかなと思うようになってきてしまう」と悲痛な思いを打ち明けた。
また伊是名さんは今春、JR東日本の無人駅で下車しようとしたところ、事実上の拒否にあったことをブログで明かした。GLOBE+をはじめとするメディアが報じたが、Twitterなどでは「モンスタークレーマー」「伊是名がいたら階段から突き落としたい」「他人に寄生しなければ生きていけない自分を恥じろ」などといった投稿が拡散しているという。
また、居住地の役所や警察に対し、伊是名さんに関する苦情が寄せられたほか、自宅に不審な手紙が届いたり、携帯電話に身に覚えのない着信があったりするなど、被害はネット空間を超えて拡大しているという。
伊是名さんはこう訴えた。
「たくさんの人に『ネットの書き込みなんか気にしなくていい』って言われたんですが、それが苦しかったです。ネットを見なければいい、時間がたてば収まるというのは、例えば学校でいじめを受けたときに、いじめた側に改善や責任を求めるのではなく、いじめられた側が『しばらく学校休んだら』と言われるようなもの。どうして被害に遭った私がSNSという場を奪われたり、利用をやめろと言われなければならないのでしょうか」
菱山さんは2018年、「MeToo」運動に合わせて地元の八王子でも同じような訴えをしようとしたところ、ネット上で「うそをつくな」「お前みたいなばばあは相手にしない」などと言われたという。さらに街頭でMeTooのプラカードを掲げた瞬間、複数の男性たちから大声で怒鳴られたという。
菱山さんは「私たち女性が女性差別の問題や女性の権利を取り戻そうと言うと、こんなにバッシングを受けるんだということがわかった」と話した。
会場で配布された資料には、4人が実際に受けた誹謗中傷のTwitter投稿の一部が載っていた。4人を支援し、この日も会見に同席した尾林芳匡弁護士は「弁護士の目で見ると違法であることははっきりしているものが多い。民法上は不法行為として損害賠償が発生する。刑法上は名誉毀損罪や侮辱罪、脅迫罪などに当たる」と指摘した。
多くが匿名アカウントだが、中にはTwitter社の「認証済みバッジ」が付いた著名人のアカウントも含まれ、伊是名さんについて「モンスター」「新たな反社会勢力」「暴力団より厄介」などと記していた。伊是名さんと弁護士は「こうした誹謗中傷の投稿はたくさんあり、法的措置については検討中」としており、すべてに対応することの難しさをにじませた。