■①比べてはいけない
自分の子供を他の子供と比べてはいけません。
比べすぎると、子供は自信をなくして、自分が持っているいいところも表現しなくなります。それはとっても残念な事です。
しかも比べられると、子供の自己肯定力が低下します。
自己肯定力が低い子供は人をいじめたりします。
人を見下す事で優越感を得たいからです。
自分に自信がある子供は人を差別しないし、自分は価値ある人間と信じているので、安心して自分の人生を歩み、夢に近づくことができます。
私は3人の息子がいます。それぞれ性格も好き嫌いも異なっています。
学校で受けがいいのは長男です。勉強ができ、リーダーシップもあり、先生たちが大好きなタイプでした。
次男はアーティスト肌で自由人です。学校の枠に収まるにはもったいない子供でした。
先生たちは次男にも長男の振る舞いを望みました。
私は次男に「君のままでいいよ。でも、学校のルールを守ってね」と言いました。
次男は自分が認められたと感じ、学校のルールを守りながらも、自分の良さをなくさないで済みました。
私たちの社会はすべての子供たちを同じ箱に入れたがります。
一緒に学び、一緒に成長するというやり方です。
でも、それに息が詰まる子供もいるのです。
その箱の中に収まらない子供は他の子供と比べられてしまうのです。
親はその子供にかけられている圧力を跳ね返せるくらいの強い愛情と信念でわが子を守らないといけないのです。
■②子供にご褒美として物をあげない
子供がいいことをした時、親はご褒美をあげたいと自然に思います。
でも物やお金をあげると、その時は楽しいのですが、
すぐに飽きてしまったり、また新しいものを欲しがったりします。
むしろ、楽しいこと、思いがけないような面白いことを一緒にすると、いい思い出になるし、子供はとっても喜びます。
ある母親が「うちの子はお風呂が嫌いなんです。お風呂に入れるためにはご褒美が必要なんです」というのです。
私は彼女にアドバイスしました。「『一緒にお風呂に入ろう。お風呂から出たら、ママにお化粧してもいいよ』と言ってみたら」。
その通りにやったら、娘は本当に大喜びだったと言います。
自分から「お風呂に入ろう」と言ってくるそうです。
男の子だったら、「パパにお化粧をしましょう」をご褒美としてあげると、きっと面白がると思います。
つまり、物質ではなく、精神的なもの。親子の交流ができて、いい思い出になるご褒美がいいと思います。
■③勉強と遊びを分けない
多くの親は子供の毎日のスケジュールを決めています。
例えば、勉強をやってから遊ぶ。それは違うと思います。
学ぶのも遊び、遊びながらも学ぶ。
私は子供たちに接するとき、「学ぶこと」と「遊ぶこと」の区別をつけないようにしました。
雨が降ったら、外へ出て、水遊びをします。公園の小川で葉っぱを流したり、カタツムリを探したり……。
遊んでいるうちに、「なんで雨は降るのかな?」と問いかけるのです。
家に戻ったら、一緒に答えを探したりしました。
感じた事、触れた事について学ぶときは、子供の覚えは速いし、退屈や苦痛と思わないのです。
子供たちの学校の勉強に親が興味を持って、「面白いね」と子供に言えば、
勉強は面白いと思うのです。
「勉強は大変。つまらないね」と親がそれを口癖で言ってしまうと、
子供たちも勉強は面白くないと思ってしまうのです。
勉強は遊びのうち、遊びも勉強と、小さい時からその雰囲気を作っておけば、親も子供も学業に苦労しないで済みます。
■④子供の代わりに選択してはいけない
人生は選択の積み重ねです。子供たちに選択するチャンスをたくさん与えて、賢い選択ができる人に育てあげないといけません。
親はつい子供の代わりにいろんな事を決定してしまいます。その結果、子供は自分で選択ができなくなってしまうし、選択した時にもはっきりと責任を取る事ができなくなります。
子供たちが何かを決める時に、考える習慣をつけさせ、自分で選ばせます。それにより、結果を自分で受け止める責任感のある人間に育てるのです。
親が選んだ道をそのまま歩かせてはいけないのです。
「良くない選択をして、失敗させたくない」と親は誰もが思います。そのためのポイントは、小さい頃から頻繁に選択させ、経験を積ませることです。
わが家では、小さいときから、着る服も、使う食器も、食べ物も子供たちに決めてもらいました。
遊びに行く時の目的地も、やることもみんなで相談して、決める時には子供たちの意見を取り入れます。
学校選びも、引っ越す時の家も。
小さいこと、大きいこと、すべて相談、すべて子供たちの声を聞きました。
彼らに直接関係していることは、彼らに決めてもらいました。
そのお陰で、自立するのは早かったです。そして、自律もできるようになりました。自立と自律を育てるためにも、子供の代わりに親が選択してはいけないのです。
■⑤高校生の恋愛を止めない
人を愛することはとっても大切です。中学校は心身の状態が思春期の真ん中で不安定なので、ちょっと恋愛は早いと思います。
でも、高校生になったら、責任のある恋愛はいいと思います。そのためには、早めに性教育をする必要もあります。
高校の時に好きな人が出来たのに、「勉強が大切だから、やめなさい」と親が言えば、人生のなかで人を愛するより、点数が大切というメッセージが伝わってしまいます。
もちろん夢中になりすぎるのは困ります。でも、人を好きになるのは自然なことで、思いやり、優しさを覚えるプロセスの一つでもあります。
出会いが来た時、親が止めても、好きになってしまいます。
親の応援があって、健康的で、行きすぎない恋愛は自然なことです。
3人の息子をアメリカの高校に送り出す時に、
「人を好きになるのは自然ですが、相手を大事に大事にしないといけません。特に妊娠させてはいけませんよ」とはっきり言いました。
3人とも高校の時にガールフレンドができました。
私にも紹介してくれました。みんなとっても良い子でした。
残念ながら、大学に行く時、離れ離れになって、結局別れてしまいました。
でも、ガールフレンドができたおかげで、息子たちは彼女たちの面倒を見たり、その子の気持ちを大切にしたりして、新しい一面が出てきました。彼女が出来たことで、たくましくなったように思います。しかも異性に認められたことで、自信もついてきたと思います。
逆に恋愛してはいけないと親に言われて、経験のなかった友達の息子は大学2年生で初恋、そのまま相手は妊娠、入籍、中退、親と喧嘩、貧困な生活になり、結果は離婚……。
もちろんこれは極端な例ですが、性教育をしっかりして、子供たちに人を好きになる自由を与えたいと思います。
高校の恋愛は親がしっかりバウンダリー(境界線)を教えれば、子供たちの成長につながると思います。
⑥体罰と言葉の暴力はいけない
これはこの連載でも触れたことあります。子供が悪い事をした時に、体罰を与えて、子供はすぐに謝る。これで解決したと思いがちですが、本当でしょうか?実際に理解したかどうかはわかりません。痛いので、それを逃れるために「ごめんなさい」と言ったのかもしれない。
親は子供を教育するいいチャンスをなくしてしまいます。むしろ時間を掛けてゆっくり教えるのが大切です。
子供の人格を否定してしまうような暴言も言ってはいけない。子供の自己肯定力を下げてしまいます。
暴力は暴力を生むために、子供も暴力で物事を解決しようとします。
私は息子たちに長い時間をかけて説明するようにしました。
今、彼らは言います。「体罰の方が楽だったかもしれないね。ママの話は長いよね」と笑うのです。
「でも、ママの真剣さは良く伝わったよ。本当に反省した」とも言います。
3人の男の子を育てて、手をあげた事がないのは私の自慢でもあります。
みんな私の事を今でもとっても大事にしてくれます。
「一生懸命、僕たちの事を考えているのを感じるので、悪い事をした時、ママが悲しんでいるのを見るのが嫌でした」と次男。
「だから、ママに心配かけない、ママに涙を流させないのが親孝行と思っていました」と長男。隣で三男は激しく頷いてました。
そんな話を聞いて、嬉しい涙が溢れてしまいました。「本当にママは泣き虫」と3人に笑われました。
■⑦子供に嘘をついてはいけない
子供に絶対に嘘をついてはいけない。子供が人を信頼するかどうかは親との付き合いで覚えていきます。
「明日ママは君たちとサッカーするね」と約束したら、私はどんなに疲れても、必ずやります。夜になって帰ってきても、約束したら、真っ暗の公園でサッカーをするのです。
軽い気持ちで約束を破ることは絶対に避けるべきです。
子供が人を信頼できないと、一生孤独な人生を過ごすことになります。
そのようにならないために、実行できない約束はしない、したら、必ず守ることです。それが子供たちに安心感を与え、自分も約束を守る人になります。
子供は親の鏡と言います。子供に嘘をついて欲しくないなら、親も嘘をついてはいけないと思います。
■⑧習い事にお金をかけすぎてはいけない
みんなが習い事をやっているので、自分の子供にもいろんな事を学ばせ、出費がかさむ家庭が多くあると聞きます。
子供の趣味にあったスポーツや習いごとは良くても、多すぎるのは良くないと思います。
家計に負担をかけると同時に、習い事に行っている間に、親子の時間が減ります。子供たちが休む時間も減ってしまいます。
むしろそのお金を貯めて、たまには家族で小旅行をしたり、子供が大きくなってからの学費にしたり、もっと有効に使うのが望ましいと思います。
本当に楽しいことだけを習う、あとは貯金して、有意義に使う方が子供のためだと思います。
■⑨仕事優先にしてはいけない
どんなに仕事が忙しくても、頭の中では子供を優先する考えを保っていることが大事です。
子供との交流は時間の長さではない、密度です。
私も兼業主婦で、働くママです。
出来るだけ夕飯の時間に帰宅していましたが、どうしてもできないときは子供たちが寝る時間になってしまいます。
その10分、15分をフルに利用して、全身全霊で子供と遊ぶのです。
子供が漁師で、私が魚という釣りゲームは大人気です。
二段ベッドの上に子供たちが居て、釣りをする真似をするのです。
私は下で魚の真似をして泳ぐのです。
「かかった」と子供が言うと、魚のつもりでよじ登って二段ベッドの上にいきます。
「なんの魚?」と聞くと、時には「鯛」、時には「タコ」と言って、そのように私が真似するので、大笑いです。
わずか10分、15分の間に、親子は無我夢中で遊ぶ。
そうすると、子供たちは1日中の寂しさを忘れられて、ぐっすり寝てくれました。
仕事はしなければならないが、子供は伸びていく命、必ずチャイルドファーストを守るのが親の責任です。
子供が親と遊ぶ時間は、たとえ短くても、子供にとっては天国です。最高に幸せな時間です。
親の愛とケアは子供の心を潤します。
■⑩質問されたら、「ちょっと待って」と言ってはいけない
私は子供が質問をしてきたら、「ちょっと待って」と言いませんでした。
「良く聞いてくれました!」とまずほめて、一緒に答えを探すのです。
たとえその時は料理中であろうと、お風呂中であろうとそうします。料理するのをやめて、お風呂から出てきます。子供たちの好奇心をつぶしてはいけないと思うのです。
質問をたくさんする子は学ぶチャンスをたくさん得る事ができます。
好奇心が強い子は毎日が面白く感じられます。
人は何も感じない時でも、わが子たちはいろいろ見えるのです。
例えば、駅で列車を待っている時のことです。
「そこのベンチは、面白いデザインですね。なぜだろう?」と三男が言い出すのです。
私もわからないので、とりあえず、「良く聞いてくれました!」と褒めて、「答えを探そう」と駅長さんに聞いたのです。
駅長によると、地元の大工さんがわざわざ手作りで作ってくれたそうです。
「亡くなった親が育てた木が台風で倒れ、それを使って作ったのですよ。家族の記念として」と言います。
「なるほど、そうだったんだ」と私たちはそのベンチを見る目が変わり、退屈なはずの時間が、とっても心が温まる時間になったのです。
この上海でのインタビューを多くの親御さんが受け入れてくれました。
「アグネスさんの子育ては面白い」「これなら真似できる」と好評でした。
今、その時の映像を改めて見ると、私は子育てがいかに楽しかったのかを、あふれ出すほど、身振り手振りで説明しています。ちょっぴり恥ずかしいです。親バカが丸見えでした。
いつかわが子も私と同じように、子育てに夢中になって欲しいです。
その時こそ、私の子育ては無駄ではなかったと言えます。