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コロナ禍でもできる日韓交流のかたち eスポーツ交流戦、言葉通じなくとも

World Now
韓国で最も人気のあるゲームの一つ「リーグ・オブ・レジェンド」を使い、日韓双方のゲーマーが交流戦で対戦した=2019年9月、大阪市内(駐大阪韓国文化院提供)

■人気は日韓混合戦

昨年12月5日午後5時、「Esports日韓交流戦~PUBG~」のオンライン視聴が始まった。

PUBGとは、韓国企業が開発した世界的にも有名なゲームで、銃などの武器を使い最後の1人(あるいは1チーム)になるまで戦うサバイバルゲーム。この日は日韓からプロプレーヤー32人ずつが自宅などからオンライン参加。4人で1チームを作り、韓国8チーム、日本8チームに分かれ、どちらかの国の最後のチームが倒れるまでを競った。

コロナ禍でのオンライン開催となった2020年の日韓交流戦の混合戦では、日韓2人ずつがチームを組んだ。「アタック、アタック」「でも、アタック、デンジャラス」「ノー、ノーアタック」「ノーアタック?アタック?どっち?」「タタカオー(戦おう)」。必死にコミュニケーションをとる日韓の選手たちの様子は、見ていて面白かった

主催した駐大阪韓国文化院としては、国対抗戦はあくまでも前哨戦。メインイベントは、2試合目だった。今度は日韓それぞれ2人ずつが1チームをつくり、混合戦を実施。相手の言葉や英語でスムーズに会話できる人は少なかったようだが、それでも「GO」「NICE」などの英単語や、「ARIGATO」など片言の日本語などが入り交じり、選手たちがコミュニケーションをとろうとする音声もそのままオンライン中継された。

コロナ禍でのオンライン開催となった2020年の日韓交流戦の日本側の視聴画面。日本人2人が実況と解説をした。左上に映る通訳を介し、韓国で同じく実況・解説をしている韓国人の2人と会話するシーンもあった

「オリンピックではないので、イベントの目的は、戦うことや勝敗ではなく、あくまでも交流です。eスポーツでどう交流できるのか。その宿題の答えを追求した結果、日韓双方のプレーヤーが一緒になって同じ目標を達成する混合戦に行きつきました」。このイベントを担当する同文化院コンテンツ事業部長のシン・ジョンフン(42)は強調した。

日韓入り交じりの様子は、選手以外でも見られた。ゲームの様子は、双方2人ずつの専門家が、自国の中継会場から自国語で視聴者向けに実況と解説をした。途中、通訳を介して、日韓の専門家たちが映像をつないで直接、対戦状況の意見交換をしたり、対戦の合間に「日本の温泉地で一番のお薦めはどこですか」などの一般的な質問をしあったりする場面もしばしば映された。

■約40万人が視聴

日韓交流戦は、YouTubeやゲーム実況サイト「Twitch(ツイッチ)」、韓国のeスポーツ専用チャンネルなど計6サイトで生中継され、この日だけで日韓計8000人がライブ視聴。その後も録画は見ることができ、これまでに40万人近くが視聴している。シンによると、特に評価が高かったのは混合戦だったという。

「視聴者からは混合戦が一番面白かったという意見が多かった。『言葉が分からなくても、こういうコミュニケーションができるんだ』というような反応がすごかった」

PUBGを使ったイベントは、じつは同文化院が主催するeスポーツイベントとしては2回目だった。

最初は前年の2019年9月、世界でゲーマー登録者が一番多く、韓国にはプロリーグがあるオンラインゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」を使い、日韓交流戦を実施。コロナウイルスの世界流行の前だったこともあり、日韓の両選手を大阪に集めて対戦してもらい、イベントに参加した日本人約50人に会場で観戦してもらった。

韓国で最も人気のあるゲームの一つ「リーグ・オブ・レジェンド」を使い、日韓双方のゲーマーが交流戦で対戦した=2019年9月、大阪市内(駐大阪韓国文化院提供)

韓国eスポーツ協会(KeSPA)も全面的に協力し、韓国のアマチュア大会で優勝したチーム(5人)を大阪に送り込んだ。この時に生まれたのが、国対抗戦と混合戦の組み合わせだった。

韓国文化院は、世界27カ国・地域に32カ所あり、日本では東京と大阪にある。韓国文化を伝えることで各国の人との交流を深める役割を担っているが、実はeスポーツを交流事業に採り入れているのは駐大阪韓国文化院だけだ。

その立役者となったのが、同文化院長のチョン・テグ(56)。韓国の国家行政機関である文化体育観光部でeスポーツ振興にあたってきた自身の経験を生かした。

「韓国文化への理解を広めるために、K-POPなどの韓流以外で新しいことは何ができるかと考えた時に、日本での普及はこれからであるeスポーツがいいと思いました。僕自身が経験のある分野でもあり、採り入れることにしました」

■20年後を見据えた交流

チョンによると、世界各国にある韓国文化院では、K-POPやK-DRAMA、K-MOVIEなど世界的にブームとなっている韓流に加え、食や言葉、伝統などを文化交流で活用している。ただ、流行が激しく変化する世の中にあって、新しいものを採り入れていかないと、交流自体も前に進まないのだと主張する。

「国と国、人と人との文化交流は、主役になにを据えるかが重要になる。若い人たちがどんどん育ってくるので、そうした新しい層に向けて、新しいことを発掘しないと、交流が広がっていかない。10年、20年後を見据えた交流事業を考えていかないといけない」

コロナ禍でオンライン開催となった2020年のeスポーツの日韓交流戦の動画を紹介しながらインタビューに応じた駐大阪韓国文化院のチョン・テグ院長

チョンによると、韓国ではeスポーツ振興に関する法律が12年にでき、eスポーツ事業への資金援助、大会の支援、海外広報や国際交流などに国や地方自治体があたることが求められているという。

チョンはこうした国のeスポーツ支援を担当し、ソウル市内でeスポーツ専用の競技場(観客席1050席)建設などに携わってきた。eスポーツのためのスタジアムは、23年度までに韓国全土で13カ所になる予定だという。KeSPAとの人脈も太く、日韓交流戦での協力を得るために自ら尽力してきた。2回のeスポーツ日韓交流戦を通じて、「少しずつ成果が見えてきた」という。

実際に国レベルでもeスポーツを通じた国際交流は注目され始めており、すでに日韓に中国を加えた3カ国で、毎年持ち回りのeスポーツ大会を開催しようとする協議が水面下で始まっているのだという。こうした動きに先駆けてeスポーツを交流事業に採り入れた駐大阪韓国文化院だが、チョンは満足はしていない。

「eスポーツによる交流は今後も続けていくつもりだが、それに加えて、バーチャルリアリティー(VR)などの先端技術を使った新しい交流も考えていきたい」。新たなコンテンツを常に考えるよう、担当部長のシンに指示しているという。

そのシンによると、3回目となる今年のeスポーツ日韓交流戦は秋か冬の開催を目指し、どのゲームを使うのかも含め、現在、企画考案中だそうだ。コロナ禍でのオンライン開催を昨年経験したことから、感染状況がどうであっても、開催できるノウハウは身につけた。むしろ、コロナ禍でもオンライン開催できるeスポーツの魅力を感じているという。

それ以上に実感していることがある。「その国を好きかどうかということは置いておいても、それぞれが好きなジャンル、好きなコンテンツを通して一緒に楽しめる文化交流は重要です。新しいコンテンツであるeスポーツで新しい層に向けて交流ができたことが、一番の成果なのだと思っています」