ゲーム時間を自制できない。ゲーム以外の物事の優先度が低くなる。日常生活に支障がでても、ゲームをやめられない。こんな状態が12カ月以上続くと「ゲーム障害(Gaming Disorder)」が疑われる。世界保健機関(WHO)が2019年の総会でゲーム障害を正式に疾患と認めたときの内容だ。
ゲームをすること自体が悪いとされたわけではない。ただ、依存の度合いが疾患として認められるほどに重症化するかもしれない危険性について、国際社会に発信し、そうならないようにするための対策をとるように求める警告だった。
3月下旬、厚生労働省のゲーム依存症対策関係者連絡会議で神戸大学が提出した報告書によると、国内でネットやゲーム依存(週30時間以上)が疑われる人は男性が総人口の約3%、女性が約1%で、少なくとも100万人以上いると推測された。
国立病院機構久里浜医療センターなどが独自調査に基づき示した報告書では、ネット依存やゲーム障害の治療施設は、16年8月で28施設だったのが、20年9月には89施設に増えた。新規の患者数も16年度と19年度で比べると、ネット依存が513人から1162人、ゲーム障害が302人から856人に増えたが、治療に関する「受け皿」の整備も始まっている。
日本eスポーツ連合などのゲーム関連4団体からも、取り組みが紹介された。19年4月、大学教授や病院関係者など外部有識者でつくる研究会が発足した。今年9月に全国調査を実施し、ゲーム産業の見方にかたよらないかたちで実態の把握に努める。また未成年者への取り組みとして、保護者がゲーム機やスマホで年齢認証やネット接続の制限ができる機能を使うことを促し、未成年者の保護を目的とするガイドラインを定め、各社が順守することを4団体として定期的に支援する。教育機関や行政、消費者関連の機関と連携し、ゲーム依存を防ぐための啓発活動を重視していくという。
以前から指摘されていたゲーム依存の問題だが、WHOが強い警告を出すにいたった背景には、eスポーツがいち早くブームとなった韓国や中国で深刻な社会問題となったことがある。ゲーム依存にどう対応するかは、世界でも手探りの状態が続くが、そうした問題が存在することをまずは認識し、産官学が力を合わせて防止策を話し合う機運が、ようやく高まってきた。