興行収入で歴代1位を記録した大ヒット映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」(以下、「鬼滅の刃」)が1月27日に韓国でも公開され、2カ月で観客数150万人を突破した。
公開前、主人公の竈門(かまど)炭治郎の耳飾りが「旭日旗のデザイン」とする批判が上がり、日本でも注目されたが、作品自体は人気を持続している。
これまでも度々、物議を醸してきた旭日旗問題だが、韓国内での受け止め方は変わってきているようだ。
「鬼滅の刃」の旭日旗問題をめぐっては、韓国での公開前からインターネット上で「炭治郎の耳飾りが日本帝国主義の象徴である旭日旗を連想させるデザイン」という批判が広まり、韓国版では耳飾りのデザインが修正されたという経緯がある。
韓国のメディア批評専門紙「メディア・オヌル」は冷静に分析する。
「旭日旗云々は2010年以降、急に問題視されるようになったが、それはヒステリックな反応として批判的に見る余地がある。日本の伝統文化として伝わるものであり、単純に『軍国主義』と関連付けるのは難しいという指摘もある」
朝鮮日報も耳飾りに対する批判が起きたことを報じる一方、「『最近まで続いてきた反日運動に無理やり当てはめて、日本の作品はすべて右翼のように見るのは行き過ぎた解釈』という指摘もある」などと反対意見も紹介している。
韓国の報道全般について言うと、旭日旗に似たデザインに批判が起きたことよりも、「韓国版で旭日旗のデザインが変わったことについて日本で批判が起きている」という指摘が目立つ。
耳飾りのデザインをめぐって、韓国世論として批判の声が高まっている感じではなさそうだ。
一方、観客動員数への影響もないとみていい。韓国では新型コロナウイルス感染症が広まって以降、映画館を訪れる観客は激減し、100万人を超える作品はかなりのヒットと言える。そんな中、「鬼滅の刃」は150万人を超え、直近の1週間(3月25~4月1日)も、1日あたりの観客数は連日3位以内を維持している。
「鬼滅の刃」は日本では吾峠呼世晴氏の原作漫画や、テレビアニメ版の人気が劇場版を牽引した形となった。
韓国での興行は未知数だったが、テレビ版がネットフリックスで配信されて注目が高まり、劇場版と相乗効果になったとみられる。
韓国の反日感情をめぐっては2019年7月、日本政府が韓国向けの輸出規制を強化すると発表したのを機に急激に悪化した。日本製品の不買運動が広がり、ソウルの街中の日本料理店も閑散としていた。
だが、最近は再び日本料理店に行列ができ、不買運動のターゲットとなった日本のビールもここ数ヶ月は輸入が増加傾向にあるという。
そして耳飾り問題でも動じなかった「鬼滅の刃」の人気ぶりをみると、多くの人々にとって政治と文化を切り離して考える雰囲気が出てきたとも言えるかもしれない。