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アグネス・チャンの3人の息子は兄弟愛の塊 この絆を育んだ家庭での教え

アグネスの子育てレシピ 更新日: 公開日:
アグネスさんと3人の息子
アグネスさんと3人の息子(アグネスさん提供)

私の子育てで、一番成果があったと思えるのは、
息子たち3人の兄弟愛を育んだことです。
親は子供たちの一生を見届けることは出来ません。
ひとり子の家庭なら、友達の大切さを教えないといけません。
兄弟姉妹がいる家庭なら、兄弟愛を教えることがとても大事です。
親がいなくなっても、お互いに尊敬し合い、信頼し合い、助け合える関係。それが子供たちに残せる最高の財産と保険です。
兄弟愛は血がつながっているから自然に生まれるものではなく、時間をかけて、育んで、覚えるものです。

兄弟愛を育む為には、まずは親が兄弟を比べないことです。
子供はみんな違うのです。
「お兄ちゃんができるのに、なんでお前は出来ないの?」
「ちゃんと食べないと、お兄ちゃんみたいに大きくなれないよ」
「弟の面倒を見なさい。お兄ちゃんの言う事を聞きなさい」
「お姉ちゃんはママに似てるけど、あなたはパパに似てるね」
「お前が一番頭が悪い」
「君が一番可愛い」
このような話は兄弟愛を育むところか、不信、嫉妬、奢り、コンプレックスを育ててしまいます。
むしろ、「お互いに助け合うのが兄弟ですよ」
「みんなそれぞれ良いところがあるね」
「お兄ちゃんみたいになる必要ないよ、全く同じ子供が二人もいるのはつまらないよ。君は君のままでいいよ」と
みんなそれぞれの良いところを引き出して、励ますのが大切です。

アグネス・チャンさんの家族写真

でも残念ながら、自分の小さい時も含めて、多くの親は子供たちを比べてしまいます。
「アイリーンは可愛いのに、アグネスは似てないね」「ヘレンは頭がいいのに、アグネスは大丈夫?」と親戚から言われる時に、母はため息をつきながら、「この子を妊娠した時に、家計が一番苦しかったので。食べ物が足りなかったのかな?」と、私はかわいそうな子として見られました。
その劣等感は自分でボランティア活動を始めるまで、続きました。
私は歌手としてデビューするまで、存在が薄かったのです。
今でも、六人兄弟の間では、私は、「弱い」「泣き虫」となっています。
姉のヘレンは今でも、私を兄弟から庇う役割なのです。

この話を友達に言ったら、
「うちもそうですよ。兄弟に愛情を表現しても、疑われたり、壁があったりします」とのことでした。
どうも、兄弟の問題はよくあることのようです。
そうなって欲しくないなら、自分の子供たちを比べないことが肝心です。
子供たちを比べると、兄弟姉妹の間には愛し合うより、競争相手、力関係のライバルとして、お互いに見てしまいます。
結婚する時に、私は自分がもし親になったら絶対に自分の子供たちを比べない、兄弟愛を育む事を大前提として取り組む事を誓いました。

兄弟愛を育てる為には、親が平等に子供を愛することも大事です。
親は平等に愛していると思っていても、愛情の受け止め方は子供にとって違うので、愛情が伝わっているのかどうかを確かめる必要があります。
一番いい方法は直接聞いてみることです。

子供と二人きりになった時に、
「どのくらいママが君を愛しているのか伝わっている?」と照れずに聞いてみましょう。
日本文化では、そんなこと聞かないのが美徳です。
でも時代が変わり、子供の周りには雑音が多く、はっきり言わないと、実感できない時代です。
子供の目を見て、確かめてください。
もし子供の答えに不安があったら、「どうすればママの愛が伝わるのかな?」と子供に聞いて見てください。
たとえ、その時に答えがなくても、あなたの真心は伝わるはずです。
それを何回も繰り返しやっているうちに、子供にあなたの愛情は必ず伝わります。
全ての子供にそれが伝わっていれば、他の兄弟に嫉妬心を持つことの必要がなくなるのです。
みんなの前で、「ママ(パパ)はみんなを同じように愛しています」と宣言することで、子供は安心します。

息子たち3人と、息子たちが通った米国の高校で

兄弟愛を育てる時に、よく間違えるのは、誰か一人の子供に他の兄弟の面倒を見させることです。
例え年が離れても、子供はそれぞれ自立をさせることが望ましいのです。
長男、長女に責任を押し付けると、他の兄弟は依頼する癖が付きます。
そして、長男長女に責任が重くかかります。
場合によっては、早く生まれただけで、自分はえらい、特権があると勘違いさせてしまうこともあるのです。
もちろん年が上である事で、年下の兄弟を庇うことは出来ます。
でも、年が下でも、お兄ちゃんを助ける事ができるのです。
兄弟はチームです。
リーダー役は取り組んでいる事によって、変わるのです。
例えば、長男は料理が大好き。だから、料理を作る時は、長男がリーダーになります。
次男は音楽が大好き。だから、音楽関係の活動は次男が指揮を執ります。
三男はコンピューターが好き。だからコンピューターに関わることは三男が担当するのです。
長男は計画を立てるのは上手なので、家族の旅などのプランニングは彼にまかせます。
次男は繊細で優しい性格、誰かが困った時は、彼は必ず一番先に手を差し伸べるのです。
三男は友達が多い、人が必要な時には、彼が呼び掛ければ、助け人が集まります。
お互いのいいところを認め合って、自分の役割を喜んで果たせるのが理想的です。
「認められている」、「無視されていない」、「私の存在は大切」と子供それぞれにわかっていれば、お互いに敵対の気持ちが消えます。
「兄弟というチームには上下がないです。ノーランク!」と私は息子たちに言っています。みんな大事なひとり一人です。

私の子供たちは喧嘩しませんでした。
それには理由があります。
子供たちにお互いの愛情を実感できるように、私はある方法を使いました。
兄弟が遊んでいる時に、私は観察します。
そこで、兄弟同士がお互いに思いやった瞬間が時々あります。
そうすると、後で、別々に話すのです。
「さっきお兄ちゃんすごく優しかったね。お兄ちゃんって、君のこと大好きだね」と言います。
そして、お兄ちゃんにも、「さっき、昇平はすごくお兄ちゃんに優しかったね。お兄ちゃんの事、きっと大好きなんだね」と話します。
彼らはその瞬間を思い出して、愛情を実感するのです。
二人が一緒にいる時には「兄弟が仲良くって、いいね。素敵ね」と言います。
このような事を繰り返していくと、お互いに対する愛情の表現も覚えるし、優しさを受けた時には気づきます。
そのうちに、それが習慣となり、お互いに大事にすることの気持ち良さを覚えていくのです。

一度、パパが次男に罰則を与えようとしました。
(どんな悪さをしたのか、忘れました。たぶん次男が10歳のとき)
お兄ちゃんと三男は「ごめんなさい、ごめんなさい」と泣きながらひざまづいて、次男のために謝ったのです。
その時の3人の団結した真剣さには、本当に感動しました。
罰は家の外に立たせる事でしたが、パパは「もう二度とやらない」と約束させて、罰を与えませんでした。
その時、3人が抱き合って泣いたのです。
その時、兄弟愛って、素晴らしいと思いました。
このまま、その時の気持ちを忘れずに、一生お互いを守りあって欲しいです。

長男が結婚してから、次男がある晩、「ママ、散歩にいきましょう」と誘ってくれました。
海沿いの道を歩いて、二人でベンチに座ったら、次男が「お兄ちゃんは今、自分の家庭があるので、これからは僕がもっと家族を守りますよ」と話してくれたのです。
その時は胸がいっぱいになって、泣きました。
それは彼が家族に対する愛を感じただけではなく、お兄ちゃんの新たな人生の手助けをしたい気持ちの現れだとわかりました。
その時に感じた母親としての幸せは、言葉では説明しきれません。

2015年、三男(中央)の高校卒業時に校庭で

今3人ともカリフォルニア州にいます。
みんな別々に住んでいます。
コロナの対策で、カリフォルニア州は昨年からロックダウンしています。
だから、3人兄弟は長い間会ってないのです。
この前、グループチャットをしたら、
長男が「今日餅米と鶏の料理を作るけど、欲しいかな?車で君のアパートの下まで運ぶから」と次男に言ったのです。
次男は「大変じゃないか?40分くらいかかるよ」と言うのです。
私は「早く素直に食べたいと言いなさい」と言ったのです。
次男は「はい、欲しいです!」と言いました。
みんなで大笑いして、楽しかったです。
遠慮はいらない。愛情は素直に受け止める。そして照れずに与える。
それが兄弟愛です。
三男は逆の方向に住んでいるので、「僕にはないのか?」と愚痴を言いました。
「今度ジンジャーブレッドを作るから、その時は君のところへ持っていくよ」と長男が言ったら、「取りに行きます」と三男は嬉しそうに言って、みんなを笑わせました。
そして、3人が急に気づいて、「ママが来たら、ママのために作るからね」「ごめんねママ」と遠く離れて日本にいる私のことを申し訳なさそうに言いました。
正直なところ、私はどうでもいいです。
3人が仲良くやってくれれば、私は最高に満足です。

息子の3人は全く違う性格です。
興味も違う、好きな女性のタイプも違う、職業も違う。
でも、集まるといつも笑い声が絶えないのです。
兄弟愛が彼らの一番の強みです。それが最後の砦、最高の保険となるから幸せです。

世の中には一人子の家庭も多い中、兄弟がいるのは幸せなことです。
私も庇ってくれる姉がいて、とっても幸せです。
姉の事を思うだけで、胸が暖かくなります。
姉妹愛の素晴らしさを実感しています。
その安心感、一人ではない感覚を自分の子供にも経験して欲しいのなら、小さい時から兄弟姉妹愛を子育ての課題の一つとして、取り組んでいきましょう。