1. HOME
  2. 特集
  3. ほころびた世界で
  4. 【藤原帰一】SDGsを「きれいごと」で終わらせないために必要なこと

【藤原帰一】SDGsを「きれいごと」で終わらせないために必要なこと

World Now 更新日: 公開日:
東京大学未来ビジョン研究センター長の藤原帰一教授=東京都中央区、大室一也撮影

「ミレニアム開発目標(MDGs)」は、発展途上国に対して世界は何ができるのかという課題だった。あえて言えば関心は決して高くなく、そもそも知っている人さえ少なかった。SDGsは、そうではない。世界全体の課題だ、我々自身の課題だ、となっている。ということは、「私の課題」も入っているわけで、自分の国の課題解決にも取り組める。だから、MDGsよりも関心が高まっているのだろう。

ただ日本では、日本の持続可能性への関心、そして持続可能性と結びつく技術革新に関心が高い。国内問題として扱われやすく、世界の貧困地域などへの関心を日本でのSDGsに関する議論として聞くことはあまりない。関心が高まっているのはよいことだが、これだけでは不十分だ。

世界の共通課題としてSDGsを受けとめるためには、例えば地球環境の変化なら、日本にどう影響するかという視点でなく、世界のどこに深刻な影響が起きているか、という視点から見ることが大切だ。どこで紛争が起き、どこで環境変動の犠牲が生まれているのかを見ると、自然と関心が南アジア、中東、そしてアフリカへと向かうだろう。

東京大学未来ビジョン研究センター長の藤原帰一教授=東京都中央区、大室一也撮影

もう一つ大事なことは、SDGsの目標が実現可能だと考えること。「きれいごとは結構だけど、実際はそんなことできないじゃないか」というと、この一言で終わってしまう。パンデミック(感染拡大)や気候変動など、グローバルリスクへの対応にコストはかかるが、じつは科学技術でかなりの対処ができる。変革できると示すことは、私たち研究者の役割でもある。

コロナの影響はとても大きい。感染拡大防止が最大の課題になると、ほかのリスクへの対応が後回しになりがちだ。しかし、それで地球温暖化などの課題は休んでくれるわけではない。そんな当たり前のことを、いま一度確認する必要もあるだろう。

ふじわら・きいち 1956年生まれ。国際政治学者。東京大学で未来ビジョン研究センター長、大学院法学政治学研究科教授を務める。著書に『新編 平和のリアリズム』『不安定化する世界』など。