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現代版ゴールドラッシュ、金投資に高まる注目 「どこに保管するか」という重要問題

ニューヨークタイムズ 世界の話題
There's a multitude of options for storing gold — from burying it in the backyard to posh steel-lined vaults. (Cam Cottrill/The New York Times) -- NO SALES; FOR EDITORIAL USE ONLY WITH NYT STORY GOLD STORAGE BY DANIELLE BRAFF FOR JULY 28, 2020. ALL OTHER USE PROHIBITED. --
Cam Cottrill/©2020 The New York Times

私たちは今、現代版ゴールドラッシュの真っただ中にいる。

貴金属はこのところ記録的な高値に達している。Magnify Money(訳注=主に個人に金融情報を提供する米企業)が1千人を対象にした調査によると、今年5月以降、6人に1人が金(きん)などの貴金属に投資しており、米国人の約半数が金の購入を真剣に考えている(これは、米国人の長期投資対象としての株式への投資がいくらか冷え込んでいるとギャラップが4月に報告した後のことである)。

金を蓄えているのは、いつ来るかわからない破滅を心配するからなのか、あるいはそれが単に素晴らしい投資だと確信しているからなのか、そのいずれかにかかわらず、彼らは一つの大きな問題を抱えている。保管の問題である。金の延べ棒や金貨は、かさばるからだ。

経済に関する不安が増す――政治や世界の混乱が起こるたびに膨らむ傾向がある――と保管のニーズも高まり、それに対応する選択肢も増える。

「私が2008年の金融危機以前に、この業界で仕事を始めた時は地金の保管庫が全米に10から20カ所あった。いまは米国の内外に何百もある」とジェームス・アンダーソンは言う。オハイオ州トレドの地金会社SD Bullionの調査担当役員だ。

英ウエストロンドンの貸金庫会社Bullion Vaultの調査担当ディレクター、エイドリアン・アッシュの話だと、株式や債券、不動産、その他、伝統的に収益性が高い投資で損失の継続が懸念される時、金が購入される傾向がある。

だから、民間の金庫運営会社もその容量を拡張してきた。ただし、それは特にスイスやシンガポールなど政治的に安定した場所でのことである。そう指摘するのは、カナダのトロントにあるGoldmoney Inc.の共同創業者でディレクター、ジェームズ・タークだ。

スイスの銀行は資産や貴金属の安全な避難所と常にみなされてきたが、近年、多くの人が銀行への信頼を失い始めている。その結果、銀行の運営ではない貸金庫への需要が高まっている。

「2019年の後半には容量が満杯になり、貸金庫を追加する必要さえあった」とマイケル・ハードマイヤーは言う。Sincona Trading AGの最高経営責任者で、同社はスイス・チューリヒの中心部にある元銀行ビルに本部を置いている。

貸金庫の(使用料は)スイスの方が英国より高額の傾向があるが、英国にはぜいたくなライフスタイルに慣れた人向けに設計された場所が新しくオープンした。それはInternational Bank Vault(IBV)が運営する旧邸宅内にある。

お抱え運転手がロールス・ロイスで顧客を迎え、ロンドンの旧邸宅まで連れていき、そこからは白い手袋をした管理人が保管ボックスへと導く(もちろん、すばやく指紋や目の虹彩(こうさい)認証をした後で)。

そうした保管ボックスは、どんな手段であろうと違法にアクセスしようとする者には入り込めないと思われる頑丈な金庫室内に設置されている。

そこに延べ板を保管するには、何枚か金の延べ板を費やす必要があるかもしれない。そこは世界で最も高価な貸金庫とうたわれ、億万長者だけが利用できるとしており、一番小さなボックスは賃料600ポンド(8万3千円余り)からだ(この大きさだと、金の延べ板を数枚入れられるだけだが)。

IBVロンドンの代表取締役ショーン・ホーイによると、銀行とは違い、同社は顧客が購入した金を保管できるし、同社が金を買い戻す。

また、金のオーナーたちは、貸金庫は銀行と違って経済破綻(はたん)に対し何らかの耐性があると信じている。

「(銀行の)貸金庫を利用した場合、経済破綻が起き、銀行が閉鎖され、預けておいた貴金属がその銀行内に留め置かれるのを人びとは心配しているのだ」とゲイリー・キューベータは言う。アリゾナで金のディーラーをしており、Insurance for Final Expenseの社長で創業者でもある。

経済の崩壊が起きないとしても、銀行の貸金庫に対する信頼度は低い。というのは、銀行の貸金庫を管轄する連邦法がないため、もし盗難に遭ったり壊されたりしたら、顧客は泣き寝入りすることになるのがオチだからだ。

このため、昔ながらのやり方を選び、金を自宅で保管する人もいる。数多くのユーチューブ動画やブロガーたちが、それこそ冷蔵庫のひき肉の中から裏庭まで、あらゆる場所に金の延べ板を埋める方法を説明している。

だが、樹木の下に金を埋める前に、自宅保管の選択肢を検討するのが賢明だ。

キューベータは、金のオーナーに対し、金を自宅から15分から20分以内の場所に保管することをアドバイスしている。経済破綻が起きても、すぐにアクセスできるようにしておくためだが、彼は、半分を自宅に、あとの半分を貸金庫に保管しておくのが可能な方法で一番いいやり方だと言っている。

「貴金属用に特別に設計された金庫が必要だ」と彼は言い、銃器用の保管庫はほとんどが火事の際の熱に耐えられないが、貴金属用の金庫なら2時間はもつからだと説明した。

金の現物なしで保管する選択肢もある。

InfiniGoldの取引担当責任者ヨーナス・カルピネンによると、金庫室に保管されている金の現物に裏打ちされたデジタルのトークン(token=代用品)を顧客が購入するのだ。

「トークンは、その金の実際の所有権を顧客に与える。とりわけ、顧客がかけている家財保険がその対象になる家で保管する地金の有価証券をカバーしていない場合は、所有権の供与が不可欠だから」とカルピネンは言っている。

「金の重みを実感したいというわけではないのなら、デジタル・トークンで十分だ。ほんとうに」(抄訳)

(Danielle Braff)©2020 The New York Times

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